第12章
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“エレンを次期万騎長候補に”
そんな話し合いがされているとはエレン本人、知る由もなく。自室へファランギース、アルフリードと戻って間もなく散歩してくると出て行ったきりである。
心配したファランギース(アルフリードはすでに爆睡中)が傷薬片手に城内を散策している頃、ナルサスの自室からダリューン、キシュワードが出てくる。
「しかし本当にこれでよいものか…、」
癖で顎髭をなでるキシュワードがナルサスに向けて言った。その話題の内容はエレンだ。
「本来なら我らはエレンを王女殿下として奉りお守りせねばならぬ立場だ。」
「キシュワード殿の言うことも最もだ。」
キシュワードはパルスの由緒正しい武家の家柄の出だ。代々その血はパルス王家に忠誠を尽くしてきた。そんな彼が王家の血を引くエレンを一人の騎士として接するというのは多少の抵抗があるというもの。
今からでも遅くはない。エレンをアルフィーネ王女殿下としてペシャワール城にて匿い、戦場に出さず守り尽くすべきでは、と。
しかしこれにはナルサスにも思うところはある。
キシュワードの考えも一理あるのだが彼はいや、と首を振った。
「我らがそうしたくとも彼女がそれを拒んでいるのだ。むしろその方が彼女を世間から守れるというもの。…万が一周囲にバレた時はいくらでも言い訳は出来よう。すべてはアルフィーネ王女殿下をお守りするため致し方なかった、とな。」
納得がいかないのかキシュワードは渋い顔をする。
「それにさきほどお主らに提案したことは今のエレン自身の身を守るためでもある。いくらサーム殿の娘とはいえ今の彼女にはなんの権利も力もないのだ。そんなエレンが自分の身を守るにはすこしでも力のある地位に就かねばならない、ということ。」
戦場では“そういうこと”も起きなくはない。
エレン自身、現にこれまでの戦において女として危ない目に合ってきたことがないとは言い切れない。
しかしどれも未遂で終わっているがそれはひとえに父親であるサーム殿のおかげとも言える。だが今はそのサーム殿もエレンの側にいない。
なによりエレンのあの容姿と若さはうさぎが狼の群れで生活してるようなもの。
自分たちも出来得る限り目を光らせるが、エレン自身が高い地位に着くことでその危険性をさらに減らすことが出来よう。
…ナルサスはそう考えたのだ。
「簡単な話だ。まずは百騎長あたりにでもなってくれれば多少の問題も回避出来よう。…もっと手っ取り早く済ませようとするなら誰かに“手を付けて”もらえばいいがな。」
ナルサスが楽しそうに言った。
だが彼の言った“手を付ける”ということが一体どういう意味を持つのか。その言葉の意味を理解した大人二人はどうやらその手の話題は苦手らしくう…、と気まずそうに言葉を詰まらせるのだった。
「お三方、まだ起きておったのか。」
「ファランギース殿。」
ナルサスが名を呼ぶ。
扉の前で話していた三人の元へファランギースが現れたのだ。てっきりあのあと解散したかと思っていたのだがナルサスの自室で続きをしていたことに彼女は驚いた様子だ。
「どうした?」
「うむ。エレンが散策に出たきり部屋に戻って来ぬのでな。心配して探しておったのじゃ。傷の手当もしてやらねばと思い探しているのじゃが…」
「散策?どのくらい経つ?」
ダリューンの問いにファランギースは「半刻以上はもう経つかの…。」と。ナルサスらだけで話し始めた頃からのようだ。となれば軽く一時間近くは経つのではないだろうか。
「傷の手当とは、また怪我をしているのか?」
とナルサス。
「手のひらをな。ずっと隠しておったようじゃ。」
ファランギースは自分の左の手のひらを右手の指で差した。
先程の軍議室で不安そうにしていたエレンの手をファランギースが取ったときに気づいたそうだ。
彼女のことだ。へたに包帯でも巻けば目につき、周りに心配させると思いあえて治療せずに放っておいたのだろう。
しかしこのまま女性を一人真夜中の城内をうろつかせるわけにもいかない。そう思ったダリューンが俺が行こう、と名乗り出た。
ファランギースもエレンのダリューンへの気持ちを知っている一人だ。自分が行くより彼に頼んだ方が良い、と考え迷うことなく傷薬ごとダリューンに任せることに。
お役目をダリューンに託したファランギースはキシュワードに送られ自室へと戻っていった。
ナルサスも自室へと入り、ダリューンは目的の人物を探して城内を歩く。以前エレンにはあまり一人でうろつくな、と釘を差したつもりなのだがやはりあまり真剣に受け止めていなかったらしい。
気安く散策など行くのだからダリューンからの忠告などとっくに頭から抜けているに違いない。
キシュワード殿が去り際、もしかしたら中庭にいるかも知れない、とだけ言い残していったのでとりあえず回り道をしながら中庭を目指して歩いた。厩舎や城壁のなど見える範囲でエレンを探す。
結局どこにも見当たらず中庭へと足を進めるがダリューンの脳裏にはまさか、とあることがちらつく。
軍議室で話した妙な連中のことだ。
ナルサスが、奴らがエレンを見て“聖女”と言ったという。それがどういう意味かわからないが奴らにとってエレンは重要な人物と考えるべきかもしれない。
最悪の場合…、
「…。」
『……。』
いた。
中庭に。
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