第11章
夢小説設定
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ナルサスのそばにはエラムもいた。
本人は自分も同席して良いものか不安そうにしていたのだが、エレンが呼ぶつもりだったという安心したように緊張した顔を緩めた。
「エレンが呼んでるって聞いたんだけど、ここで…ってみんないるじゃん。」
『アルフリード。』
呼ばれたことが珍しかったのか、恐る恐るやってきたアルフリードにエレンはここに座るよう隣の場所を促した。アルフリードもまさか顔のしれた者が揃っていることに驚いていたが、案の定ナルサスを見つけると嬉しそうに手を振った。
本当ならここにアルスラーン殿下とギーヴも交えたかったのだが今日はどうやらタイミングが合わないようなのでまた明日に改めることにしよう。
それ以外の方…つまりエレンの信頼する者達全員に集まってもらったのだ。
席について一呼吸。
話さなければならないことが沢山ある。だがこうも面と向かってとなると緊張してなにから話せばよいのか頭が真っ白になってしまう。
『お疲れのところお時間を頂きありがとうございます。…昨日のことで、話さなければならないと思い皆に集まっていただきました。…願うことなら、今日の話が皆の胸の中だけに留まり、これ以上広まらないことを望みます。』
息を吸う度に声が、呼吸が震えているのがみなに伝わる。それだけ今から話すことがこのパルスの歴史上においてどれほど揺るがすものかを思い知る。
『私の名はエレオノール。その名は私の養父・サーム様が名付けてくださいました。…その前の名は…アルフィーネ。先王オスロエスの子であり先王太子であるヒルメスの…妹です。先日このペシャワール城に侵入したヒルメスは私の、兄です。』
バフマンから聞かされた時はもちろん驚いたが、こうして本人から直接語られるとやはり驚いてしまう。
震える手。次の言葉が出てこなくて俯いてしまう。しかしその手をエレンの左右に座るファランギースとアルフリードが強く握ってくれた。
そのおかげか、震えがすこし弱まった気がした。
『先に申し上げたいのは、私はエレオノールでありアルフィーネ王女殿下は十六年前の火事で亡くなっているということ。そして私自身も王族としての地位を取り戻すことを望んでいない、ということです。』
「つまりお主は我らに…、」
ようやく口が開いたのはナルサスだ。
ことの重大さになかなか口を挟めずにいたのだが、彼女があまりにもいつも通りすぎるので意を決して言葉を発した。
『はい。王女としてではなく以前と同じようにエレンとして呼び、接していただきたいのです。』
それはかまわないが…、とこぼすナルサス。だが疑問も浮かんでくる。王族としての地位を取り戻せば少なくともこのような場所にいなくて済んだのではないか、と。
アルフィーネ王女として地位を取り戻していれば自ら戦地に行くなど、危険な目にあわずに済んだはずだ。
しかしその意見にエレンは静かに首を振った。
『死んだはずの王族が実は生きていたなんて公表してもいたずらに市民や王宮に仕える方々に余計な混乱を招くだけです。』
ならば最初から死んだままで、自身は違う人間として生きていた方がいい。エレンはそう考えたのだ。
『たった三歳の王女の顔を知る人はおりませんから。』
「ではバフマン殿は?お主をアルフィーネ王女殿下と最初に言ったのは老だ。」
キシュワードの疑問にエレンも顔を暗くする。
それは問われた本人も予想外だったのだ。
『バフマン様とは幼い頃よく顔を合わせておりましたが十六年前の火事以降、お会いしたのはここ最近のことでしたので…。気付いてはおられませんでした。どうやらヴァフリーズ様からの手紙がきっかけのようです。』
「やはり伯父からの手紙か…、」
なにかにつけて耳に入る伯父・ヴァフリーズの手紙。いったい伯父はバフマン殿に何を伝えたのか。
『おそらくですが、私のことについての内容はヴァフリーズ様が書き記した内のほんの一部に過ぎないと思います。』
「ほかになにか書き残した、と?」
ナルサスの言葉にエレンは頷き返す。
『そうでなければあれほどの方があんなにも動揺し思い悩むような素振りは見せません。――たとえば…アルスラーン殿下のこと。』
「――!」
ダリューン、ナルサス、キシュワードが目を開かせる。
それもそのはず。あのバフマンがエレンのことだけでああも心が乱されるようなことになるはずもない。もっと重要ななにかをヴァフリーズから伝えられたに違いない。
「バフマン殿からなにか聞いたのか?」とキシュワード。
『いいえ残念ながら…。私もバフマン様からアルフィーネと呼ばれた時点で気が動転してしまい…、慌てて逃げ出したものですから…。』
「そうか…。」
『もっとちゃんと話を聞けばよかったと今では後悔しています。』
その逃げ出した瞬間をたまたまギーヴが通りかかったのだ。明らかに様子のおかしい彼女に勘の鋭い彼のことだ。きっとバフマン殿が私になにかいったのだろうとすぐに悟った。
さすがにその内容までは予想出来なかったようだが。
『ですがヴァフリーズ様がバフマン様に伝えた手紙の内容は、おそらくですが皆が思うことと何ら相違ないかと思われます…。』
「「――!」」
バフマンが死ぬ間際、彼の放った言葉はその場を凍りつかせるほどのものだった。
ヒルメス王子を殺せばパルス王家の正統な血が絶えてしまう、と…。
「お主は…知っておったのか…?」
ナルサスの問いにエレンは静かに首を振った。
『確固たる証拠があるわけではありません。…ですが、わかるのです。』
初めてアルスラーン殿下にお目にかかった時、すぐにわかった。
あぁ、この方は王家の血を引いておられない、と。
『だからこそ私はアルスラーン殿下に尽くそう、と誓ったのです。』
そこでエレンはダリューンを見た。
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