第11章
夢小説設定
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「エレン、」
『は、はい。』
ぼーとしていたのでキシュワードが声をかけてくれたことに一瞬間が空いた。
慌てて彼の方を見る。
その視線は部屋に戻るよう促しているようで。
言葉にはしていないがそれを悟ったエレンはコクンと小さく頷いた。そのあとでキシュワードに向かって
『あの…、』と口を開いた。
「どうした。」
『…、…あとでお時間をいただけませんか?キシュワード様にもお話しておきたいことがあるのです…。』
「――!」
昨日のことで…とすこし言いにくそうにする彼女に何かに気付いたキシュワード。その脳裏には昨日のバフマン殿が口にしたことが思い出された。
「この御方は…あなた様が唯一大切になさっていた、たった一人の妹姫…アルフィーネ王女殿下にございます…っ、」
その言葉が本当なら俺はこの娘に対し、拝跪せねばならんということか…。
そういえばエレンがこの城に来た時バフマン殿は彼女の放つ気迫に咄嗟に膝をついていた。あれはすでに彼女のことを知っていて無意識にそうした、ということになる。
自慢の髭をひと撫でし、わかった。とキシュワードは頷いた。
「先に退席するといい。あとから俺も追おう。」
『ありがとうございます。』
小さく頭を下げたエレン。
侍女に部屋に戻ると伝えると彼女もまたその場から退席した。
宴会場から出た所でアルスラーン殿下を部屋までお見送りしてきたダリューンと鉢合わせた。あ、とエレンの声で向こうも彼女の存在に気づく。
「部屋に戻るのか?」
『はい。殿下はもうお休みに?』
「あぁ。いろいろとあったからな。かなりお疲れのご様子だ。」
『そう、ですね…。』
言葉では言い表せないほどいろいろあった数日だった。それは頭も追いつかないほどに。かなり精神的にも追い込まれていることだろう。
「エレンか。ダリューン卿も…、」
『ファランギース。』
開いた扉から姿を見せたのはファランギースだ。
「ラジェンドラ王子は?」
「先刻まで酒杯を傾けておられたが、いつの間にやら眠っておしまいになった。」
シンドゥラ人はあまり酒が強くなさそうじゃ。とこぼすファランギース。その扉の向こうの宴席がさながら地獄絵図のようになっていることなどダリューンとエレンは知らない。
エレンはちょうどいいタイミングで揃ったファランギースとダリューンに『話をしたい。』と先程のキシュワードのように声をかけた。
『あまり時間を取らせないようにします。すこしだけお付き合いいただけませんか?』
「「――、」」
二人は顔を見合わせた。
不安そうな顔をするエレンにダリューンとファランギースは優しく微笑んだ。
「では私は寝酒でもいただいてこよう。」
『え。まだ飲まれるのですか?』
「…。」
顔色ひとつ変えない女神官様にダリューンもエレンもつい固まった。退席する時点でもかなり酒を飲んでおられたような気がするのだが。
その酒豪っぷりに思わず引き気味になる。
放っておいたらペシャワールのすべての酒が一月もしない間に消えてしまいそうだ。
そこへキシュワードも退席したのか扉を開けて出てきた。出た先でエレン、ダリューン、ファランギースと揃っていたことにすこし驚いた様子だった。
『キシュワード様。』
「すまん。待たせたな。」
『いいえ。ギーヴはまだ中に?』
「あやつなら…、」
「ギーヴならラジェンドラ殿と同じく寝てしまった。」
キシュワードの記憶の片隅ではたしかギーヴは真っ青な顔をツボに押し込めているところだったと思う。
ファランギースはそれを“寝てしまわれた”と言うが正確には“酔い潰して”しまったの間違いである。
どのみちその様子では明日に改めた方が良さそうだ、と判断したエレン。改まって話をしたいと言い出したのはいいのだが、さてどこで話そうか。そう悩んでいるとキシュワードが軍議が行われる部屋を使うよう提案してくれた。
あそこは軍議の時の会話が外に漏れぬよう築城の際に防音の設備を施してあるのだという。
『へぇ〜、気にしたことなかったですね。』
「味方の城とは言え、敵が潜り込んでいないとは限らんからな。」
『ありがとございます。ではそこへ。ナルサス様にもお声掛けを…』
「その必要はないだろう。ナルサスのことだ。軍議室と予想してとっくに行っているはずだ。」
得意げにダリューンが言った。
そうなのか?とエレンは彼を見上げる。
さすが悪友という間柄なだけはある。お互いの思考や行動などお見通しとも言える。
出来ればエラムやアルフリードにも聞いて欲しいとエレンは近く通った侍女に声をかけ、二人に軍議室へ来てもらえるよう伝言を頼んだ。
ここへ来た時、私は軍議室への入室を許可されなかった。なのに今は私用で入ることが許された。
なんだか複雑な気分である。
まるで自分の力で騎士になったのではなく、他人の力を借りて騎士になったとでも言おうか。
そんなことを考えながら軍議室の扉を開ける。
「遅かったではないか。」
『ナルサス様!』
その手に酒杯を持つナルサスが先に席についていたのだ。
ダリューンはほらな、と言わんばかりに肩をすくめたのだった。
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