第11章
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パルスの王太子・アルスラーンはここにシンドゥラ国のラジェンドラ王子と友好と攻守の盟約を結ぶことになった。
盟約を結ぶとなれば、このあとすることは決まっている。その準備に大忙しと城内の侍女達が走り回っていた。
シンドゥラのラジェンドラ王子を盟約相手に食事会が開かれたのだ。ちゃっかり兵士たちにもその恩恵を受けられるよう手配をお願いするアルスラーンにエレンは殿下らしいとくすりと笑った。
「いやぁ、アルスラーン殿下よ!俺はお主が気に入ったぞ!年齢のわりにしっかりしているし、何より優れた部下もお持ちだ!」
盟友として頼るに足りる!と機嫌よく酒を傾ける彼にアルスラーンも苦笑い。この人さっきまで自分のことを殺そうとしてたのに…と切り替えの速さに若干引き気味なことに異国の王子は気づかない。
あまりの馴れ馴れしいラジェンドラにアルスラーンのそばに控えていたダリューンの眉間にシワがひとつ、またひとつと刻まれる。
エレンもこの王子にはどうも苦手なようでアルスラーン殿下のそばで控えていたダリューンが彼女の一番の安全地帯なのだが今回は残念ながら得られなかったので今はその次に安全そうなキシュワードの隣に座し、身の安全を確保しつつラジェンドラ王子に対し警戒心を顕にして食事に手をつけていた。
そのことにキシュワードも気付いていたが、彼に対する信頼のなさがわからなくもないので小さく笑ってそのまま放置しておいたのだ。
アルスラーン以外の者から歓迎されていない雰囲気を欠片も感じておられないラジェンドラは男に生まれたからには酒を浴び、女を抱き、象を狩り…なんとかかんとか、と幼い盟友に説く。王族の品など欠片もない食べ方にエラムは引き、突然披露してみせたその音痴にギーヴはともかくアルフリードまでもが信じられないと顔を真っ青にさせていた。まるで水牛のいびきのようだ、と。
「すごい…。うちの親父より歌が下手な奴を初めて見た!」
「よくあれだけ喋り続けられるものじゃ。」
一人静かに杯を傾けるファランギース。
すると、そんな彼女の隣に腰掛けるエラムを押しやるようにしてその席を確保してきたラジェンドラ王子。ついさっきまでアルスラーンの隣にいたはずの彼がいつの間にか席を移動してきたのやら。
戦場では直接会わなかった麗しの女神官様を目敏く宴席にて見つけたラジェンドラ王子はずっと彼女に声を掛けるタイミングを見計らっていたのだ。
ファランギースの隣に居座るラジェンドラ王子を見たエレンは申し訳なく思うもキシュワード様の隣に避難しておいてよかったと心底思うのであった。
『(あぁいうのは苦手…。)』
「大丈夫か?」
隣で座るエレンがふぅ、と息をつくのを見たキシュワードが気遣ってくれる。
心配ないと手を小さく振った。
『あ、はい。どうもあの“王子様”は苦手だな、と思いまして。』
「そのことについては同感だな。」
盟約を結んだからといって最初から信頼などしていないし、そもそも信頼出来ない男なのだラジェンドラという人物は。
だが軍師ナルサスはそれでいいのだという。
その方が欲深い彼の行動も読みやすい、対処も出来るのだと。
「お主まで長居して付き合うことは無い。先に部屋に戻って休むといい。」
『ありがとうございます。では殿下が退席なさいましたらそのようにさせていただきます。キシュワード様も早めにお休みになってくださいね。』
「あぁ。」
キシュワードはくい、と杯を飲み干した。
それにエレンは気を使って酒をついであげた。
その様子をダリューンが視界の片隅で見ていたことを彼女は知らない。
なんとなく気になる…、などどダリューン自分でも気づかない感情を抱いていることを。
ダリューンのそばを安全地帯と認識している彼女をナルサスは知っている。だが今回はそれが出来ない為他の安全地帯を見つけたエレンに彼は「罪なやつだ」と独り言を溢しながら小さく笑うのだった。
向かいの席で愛しのファランギースを奪われまいとギーヴも自分のついだ酒の方が美味いですぞ、とラジェンドラ王子に対抗意識を燃やして女神官様の杯の酒のつぎあいが始まっていた。
しかし結局二人してファランギースの酒豪に敵うことなく酔い潰されることなどこの蜂二匹は知らない。
「殿下はお疲れでしょう。お休みになられますか。」
ふぁ…とひとつあくびをこぼしたアルスラーンにダリューンが気遣う。
ナルサスも退席を促した。
「ここしばらく殿下にとって大変なことばかりでした。まずはゆっくりお休みになられては。」
「…うん。…そうだな…。」
盟友相手にずいぶん気を張っておられたのだろう。その目の下にはくっきりを疲労が現れていた。
ナルサス、ダリューンにはお見通しだ。
ラジェンドラ王子に退席の際に一声掛けたが彼は彼でファランギースを酔わせようと躍起になっていて適当に返事を返すものだからますますダリューンの眉間にシワを刻んだ。
退席するアルスラーン殿下とそのお供をするダリューン。二人の姿をエレンを視線で追う。
『(殿下…もうお休みされるのかしら…。)』
話をしたかったのだが、今日のところは無理そうだな…、と扉の向こうへ消えていったアルスラーンを気遣い目線を自分の杯に落とした。
また明日にでも時間をいただこう。
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