第10章
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こっそりと山道を進むランジェンドラの軍勢。
そこへ慌ただしく斥候が「一大事でございます!!」と急ぐように駆けつけた。
まるでおとぎ話に出てきそうな白馬に跨る陽に焼けた肌の色男がゆっくりと振り返る。
「どうした。」
「ガーデーヴィ王子が大軍を率いて我が軍の後尾に襲いかかった由にございます!」
その報告に色男ことラジェンドラ王子は顔を真っ青にする。
「な、なんだと!?そんな訳があるか!なぜ奴が俺がここにいることを知っているのだ!」
「まさか我々の行動をずっと監視して…!?」
「殿下に急ぎ申し上げたきことあり!殿下はおわすや!?」
「今度はなんだ!?」
『シンドゥラ国のラジェンドラ王子がパルス軍の捕虜となられた由!』
・・・。
「え…?」
次に目を開けた時、ラジェンドラが見る景色が一変する。
…なぜ俺はここ(ペシャワール)にいるのだ?
「え…?」
そしてなぜ俺は縛られているのだ?
縛る縄を持つのはエレン。
横たわるラジェンドラの視線の先には王太子アルスラーン。
「…な、なんで、こうなった…?」
* * *
「つまり後方の憂いを無くす為に恩を売っておくのがラジェンドラ王子ということか?」
「そのとおりでございます。」
作戦を決行すべく、アルスラーン一同は出撃の準備に取り掛かった。
ナルサスが考えた策はこうだ。
今のシンドゥラの情勢を逆手にこのパルスの東方国境を数年安泰させるべく、劣勢であるラジェンドラ王子を国王に就かせて同盟を結ぼうというもの。
そのためにはまず、ここペシャワールへ進軍してきた彼を捕まえることが課題でありその役目を任されたのがダリューンである。
アルスラーンはなぜ劣勢であるラジェンドラ王子を助けるのかという疑問をナルサスに投げかけた。
「強い者を助けても無意味です。弱い者を助け、強い者を倒させてこそ恩を売ることが出来ましょう。」
しかしナルサスの考えにキシュワードは眉間にしわを作る。
「ラジェンドラが恩を恩として感じるような人物であればよいがな。野心もある、欲もある…。信頼出来るような人柄でもない…。我が軍が背を向けた途端襲いかかってくるだろうな。」
「―!…ナルサスっ!」
キシュワードの言葉にアルスラーンは不安そうな顔をナルサスに向ける。しかし向けられた本人どこ吹く風。そんなことなど予想済みなのだ。
しれっと「だからこそ、扱いやすのですよ。」と軍師の顔を見せるだけだった。
それから戦が始まったのだが決着はすぐについた。
ナルサスが仕込みを頼んだエラムとアルフリードが後方の糧食の部隊に奇襲を掛け、シンドゥラ語で「ガーデーヴィ王子の軍が後方から攻めてきた!」と叫び、連れていたパルス兵達が矢を放つことで奇襲と思い込ませる。
次にナルサスが出した合図でキシュワードの部隊が進軍し、退却を選んだラジェンドラ軍を追撃する。攻撃を仕掛けられては迎え撃つしかない。前方・後方と板挟み状態のラジェンドラ軍はもはや軍として機能しておらず。
「な―何がどうなっている!?」
「まさかガーデーヴィ軍はパルスと連携しているのでは!?」
混乱した戦場でもはや側近は彼の身を守ることで精一杯だ。しかしさらに追い打ちかのごとく、ラジェンドラの姿を見つけたナルサスが直接彼に斬りかかる。
「予定通り捕虜になっていただく!」
己に向けられる剣を意外にも良い腕でそれを防いだラジェンドラ。彼の目にはパルスの若き天才軍師が目に映る。
「―!?…何がどうなっているのかわからぬが―断る!!」
キン!キンキン!と打ち合うこと数回。
ナルサスの腕についてこられるラジェンドラだったが遠く離れた場所で味方がなにかに攻撃され、吹き飛ぶ姿を目にしたとき、同時にものすごいモノを見た。…はたしてそれは人だったのだろうか。
「いつまで手間取っているナルサス!!」
「うるさいやつだ。」
馬に乗っていたそれはギラギラと目を獣のように光らせる者―我らが黒衣の騎士・ダリューンだ。
あまりの気迫にラジェンドラも同じ人間とは思えずつい「化け物…?」と目を疑うほど。
これは相手にしてられないと彼の本能が言う。
逃げろ、と。相手にしてはならない。
「今日のところは許してやる!次に会ったら生かしてはおかんぞ!」
見事なまでの三流セリフを置き土産にラジェンドラは戦場を退却しようとする。
しかし駆け出した彼の馬に一本の矢が命中する。
矢が当たったことで驚いた馬はラジェンドラを前に放り投げるようにして崩れ落ちる。
突然の落馬に彼も受け身を取る余裕もなく地面に叩きつけれた。
落馬して地面を一回転。落ちた衝撃もなかなかだったのだが急いで起き上がろうとするとその身を誰かに踏みつけられたことによって地面に這い戻される。
顔だけを上げると向けられるキラリと鋭い剣先は明らかに自分の喉元を狙っていた。
『動かないで。首を胴体から切り離されたくなければ、ね。』
「…っ、」
殺気をまとう剣先の持ち主は意外にもうら若い娘であったことにラジェンドラは言葉を失うのであった。
男と同じく甲冑を身に着け、剣を片手にこちらを見下ろすはエレンその人。その憂いた表情とは裏腹に迷いのない剣気を向けるその人はラジェンドラを釘付けにした。
…そして気づけばこうなっていた(縄で縛られて)いたのだ。
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