第10章
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シンドゥラ軍を迎え撃つ為、出撃の準備に取り掛かってたキシュワードの様子を城内の部屋の窓からアルスラーンは見ていた。
出撃前にナルサスとダリューンが殿下の元を訪ねた。
此度の戦、ナルサスからは待機をお願いされていたのだ。自分も出撃したほうがよいのでは?と彼に問うたが今やアルスラーン殿下はこのペシャワールの軍を統べる主だ。
毎回自らが戦に出ずとも良いのです、とナルサスに言われたので渋々頷く。
「わかった。だが今夜は城門を出たらお主とダリューンのやりやすいようにやってくれ。」
「ありがとうございます。…時に殿下、エレンをお見かけしませんでしたか?」
エレンを?とナルサスの言葉にアルスラーンは首を傾げる。その様子では殿下もあれからエレンを見かけてなさそうだ、と思った。
「エレンなら先程私のところへ来たぞ。」
「「―ん?」」
大の男二人して目が点になる。
今殿下はなんと申したか。…エレンが来たと?
ここへ?
「出撃前に、と会いに来てくれたのだ。」
そう話すアルスラーン。その表情はどこか落ち着いていて。
「帰ってきたら話をする約束をしたのだ。色々と聞いてもらいたいことがあると…。」
あ、あと説教もちゃんとしておいたぞ。とすっきりとした顔で言うものだから一体何を言ったのかダリューンが尋ねると、自分を守ろうとして大怪我をしたことを言ったそうだ。
「医官に聞けば、あと少し傷が深ければ腕を落とすところだったらしい。それを聞いた時、私は心臓が止まるかと思った。」
「それはそれは。殿下自らお説教をたまわったのでしたらエレンのやつも骨の髄まで染みておりますでしょうな。」
「はは。だとよいのだが…エレンには本当に申し訳ないことをした…。」
「殿下…、」
その時のことを思い出したのか、申し訳無さそうに暗い表情を見せるアルスラーンだった。
「まったく…。昨日のことを気にされているのかと思えば…」
「ま、それを考えたくもないというのもあろうがな…。」
出撃に向けて殿下の部屋を出たダリューンとナルサス。
コツコツと廊下を歩く音が響く。
「“ただ座っているだけでは皆に申し訳が立たない”、か…。…一軍の将の言葉とは思えんな…。」
「本当に心優しい御方だ。…ただ、優しいだけでは王にはなれぬ。」
ダリューンの瞳が心配の色を見せた。
しかしナルサスは違うようだ。
「ああいう御方だからこそ、我々も兵達も信じてついていける。…一人くらいはそんな王がいてもいいのではないか?」
「――っ、」
ナルサスの言葉にダリューンは、はっとさせられた。
国の数だけ王がいる。王はみなすべて同じとは限らない、ということだ。
アンドラゴラス陛下のような武勇に優れた王がいれば、アルスラーン殿下のような方の王がいてもおかしくはない。…否、そうであって欲しいと自分たちが願っているのかもしれない。
ナルサスの考えにダリューンは「そうだな」とふっ、と笑みを溢した。その瞳にはもう心配の色はなく、もう間もなく出撃する戦に向けてやる気が満ちた色を見せていた。
「さあ、行くぞ。殿下に吉報をお届けすると約束したからな。」
「あぁ。」
改めて気合を入れ直したナルサス、ダリューン。
考えねばならぬ人のことをすっかり忘れてしまい城門に集まる兵達のところへ行った時、剣を持ち甲冑姿で愛馬の手綱を手に待っていたその人物を見て目を開かせ、二人揃ってその名呼んだ。
呼ばれた人物は何事?とでもいうかのようにしれっと振り返る。
『ナルサス様、ダリューン様。』
「お主ここでなにをしておるっ」
何、と言われても甲冑姿でいればやることはただ一つ。出撃する気まんまんな彼女にナルサスは脱力した。
「そもそも朝から一体どこにおったのだ…、あ、いや…、」
ついいつものノリで話したナルサスは途中から口ごもってしまう。エレンの正体を聞いた今、どのように接すればよいのか迷っているのだ。
それはダリューンとて同じ。だから下手に口を開けないでいる。
気まずそうな二人にエレンは小さく微笑んだ。
『お二人の気持ちは重々承知しております。ですが今はシンドゥラ軍の侵攻を食い止めるのが先決。どうか今だけは昨日のことは忘れて目の前のことに集中なさってくださいませ。』
「「…、」」
それはつまりエレオノールのままで接して欲しい、ということ。年下の娘にこうも気を使われては少し情けなくもあるが、たしかにエレンの言う通りである。考えなくてはならないことが沢山あるのだがそれは後回しだ。
承知したダリューンとナルサスはそろって頷いた。
『ありがとうございます。』
「だが、お主怪我は大丈夫なのか?殿下から聞いたぞ。あまりに酷いから説教されたそうではないか。」
『う…っ、』
ダリューンの言葉にぎくり、と肩が小さく揺れたのをナルサスは見逃さない。
ダリューンもそうだがどうやらこの娘も殿下には頭が上がらないらしい。覚えておくとしよう、などと思われてることなど露知らず、エレンの顔は先程の殿下のお叱りが堪えたのか、落ち込んでいる様子だ。
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