第9章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「貴様…、アンドラゴラスのこせがれか…、」
「――っ!」
夕暮れの時。
アルスラーンは一人、城壁を散策していた。
そこへ突如現れたのは一人の男。
暗闇から地を這うような低い声。銀の仮面だけが怪しく光る。
その空気に触れた瞬間、アルスラーンは危機感を肌で感じた。
「答えろ。貴様がアンドラゴラスの小せがれか!?」
「…っ、」
先程よりさらに低く、怒気の含んだ声色で再度問う男。
ぞわっ、鳥肌が立つ。
まるで突然戦地に放り込まれたかのよう。
震える声でアルスラーンは肯定するように頷く。
「…いかにも。アンドラゴラスの子、パルスの王太子アルスラーンだ。そちらも名乗れ。」
「王太子だと?どの口がほざく!」
銀の仮面を身に着けた男。エレン達は彼を銀仮面卿と呼ぶ。なぜ彼がここに、ペシャワールの城内に入り込んでいるのか。
しかしアルスラーン自身は彼とは面識もなく、またエレンやダリューン、ナルサスも彼のことについては詳しく話していなかった。
「貴様は薄汚い簒奪者の産み落とした惨めな犬ころに過ぎぬではないか!!」
「…っ、」
「…すぐには殺さぬ。俺の味わった十六年の苦痛。一撃で片付けるわけにはいかぬ!…恨むなら父を恨め。」
銀仮面卿が剣を抜いたことで、アルスラーンも慌てて剣を抜いた。しかし相手が一歩踏み出した瞬間、目にも留まらぬ速さでアルスラーンの眼前にまで迫り、狂気に満ちた剣を振りかざす。
辛うじてその一撃をアルスラーンは剣で防いだが、あまりの強烈な威力に剣は折れ、その身も城壁へと叩きつけられる。
「誰か…、」
「助けを呼ばせはせん。…跪け。そうすれば一瞬で綺麗にその右手を切り落としてやる。」
崩れ落ちるアルスラーンを見下すようにして立ち塞がる銀仮面卿に対し、折れた剣の代わりはないかと見渡したその目に止まったのは灯された篝火だった。アルスラーンは咄嗟にその篝火を手に取り、苦し紛れでそれを彼に向けて放り投げたのだ。
この程度のこと、時間稼ぎにもならないかもしれぬが、とそんなことが頭をよぎる。…しかし、意外にも彼は投げられた篝火の炎を見て後退りをしたのだ。
その銀の仮面を外套で覆い隠すようにして数歩下がるのを見たアルスラーンはあることが過ぎった。
燃える焚き木を手に剣のようにしてもう一度立ち上がった。やはり銀仮面の男は攻撃をしてこない。
「(…この男…、火を恐れている!…まるでエレンと同じ…、)」
お互い少しも動く気配のないまま、時間が流れる。
するとたったった、と軽快な駆け足がこちらにむかってくるのが聞こえた。
アルスラーンは銀仮面の向こうからキラリと剣を光らせてものすごい速さで誰かが来るのが見えた。
その者はその先にいるのが誰か、今がどんな状況下理解したと同時に見知った姿の侵入者に対し、とてつもない殺気をまとい、地を蹴って一撃を繰り出す。
『貴様ーーっ!!』
「――っ!?」
ガキンッ!!
突き出した一撃を一瞬反応が遅れたが銀仮面の男は辛うじて防ぎ、さらにすれ違いざまにさらに剣を振るったがその者は器用に左手を地に突き、身体を宙返りさせてかわしてもう一回転して、焚き木を持つアルスラーンの前に躍り出た。
パルスの兵士の服装でもなく、ダリューンように大きい体格でもないその人物が一体誰なのかわかったアルスラーンはその名を呼んだ。
「エレンっ!!」
『殿下!ご無事ですか!?お怪我を!?』
「いや…、大丈夫だ。」
その声を聞いた瞬間アルスラーンは肩の力が抜けた。まるで今まで息を止めていたかのように大きく息を吐き出す。
疲弊した様子のアルスラーンを見て、エレンはその原因でもある銀仮面卿を睨みつけて、剣の切っ先を彼の心臓へと向けた。
『よくも殿下にこのような真似を…、生きて帰れると思うな!』
いつかのように覇気を含んだ瞳は以前よりさらに、その鋭さを増す。
その目を見ると銀仮面は口角を上げた。
面白い、と。
「ふん…、どこの猿かと思えばサームの娘か…。エレオノール、といったな…。」
『のこのことペシャワールまでよく来たものだ。』
「どうした。此度は逃げおおせぬのか?アンドラゴラスの小せがれをおいて逃げるのであれば命だけは見逃してやるぞ。」
『――っ!馬鹿にするな!!』
血が登ったエレンはがむしゃらに剣を振るう。
その一撃を銀仮面の男は難なく受け止めた。
ギギ…、と交わった剣が火花を散らす。
かと思えば、銀仮面の男は腹部に鋭い衝撃を受けた。エレンが左手でその一撃を与えたのだ。まさかの攻撃に瞠目する銀仮面。一瞬の隙をエレンは見逃さない。一歩後ろに下がった彼の身体を貫こうと剣を突き出した。
「――っ!小賢しい!!」
『く…っ!!』
「エレンー!!」
エレンの攻撃を振り払うようにして剣を弾き返す。そしてその腕を切り落とそうとさらに剣を振った。
ザシュ…、と肉を切り裂くような音がアルスラーンの耳にも聞こえてくる。咄嗟に瞑った目を開いた。
「――!!エレン!!」
『…っ、』
ぼたぼた…っ、と大量の血液が城壁の床に流れ落ちた。
「切り損ねたか…、」
『…っ、』
ぼたぼた、と左腕から血が流れる。
あと一瞬下がるのが遅れてれば本当に左腕を切り落とされるところだった。
だがその痛みに、血が登っていた頭が徐々に冴えていく。
それに反してアルスラーンは顔から血の気が引いていき、真っ青にしていた。
.