第9章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
キシュワード様はダリューン様や父上とは違い双刀の使いの長所である攻撃の手数が多いタイプの人だ。
一撃一撃は決して重くはない。
だがたとえ剣が一本でもその攻撃の回数の多さは交わないらしく、一撃受けてもかわしても次々に繰り出される剣撃に追いつくのがやっとだ。
『(さすが万騎長…!)』
「(さすがサーム殿の娘…。騎士と認めたからにはただ気休めに鍛えてはいないようだ。この俺についてこれるとはな。)」
手数が多いキシュワードのさらにその上を行くには今の戦い方では駄目だ。そして直線的な剣筋では読まれてしまう。
もっと柔軟に、予測不能な太刀筋にしなくては。
そしてこの人よりも更に攻撃回数を増やさなくては。
そう感じたエレンは数歩下がって距離を取ると、剣を肩の高さに上げてその腕を引き、剣先に左手を添える構えを見せた。
構えを変えた事と、エレンのまとう雰囲気がガラリと変わったことをキシュワードは悟った。
戦い方をかえるつもりだと。
そしてなによりその視線。まるで獲物に狙い定めるかのようなその目は、アズライールが狩りをするときに見る目と同じだ。
背中がゾクリとなにかが伝う。
そんな彼女を見て彼は思った。――悪くない、と。
『――っ!』
エレンが一歩足を踏み込む。
その踏み込みの強さで、キシュワードとの距離を一気に詰め、目を見張る速さで目前に迫った。
矢のごとく繰り出す突きをぎりぎり剣で防ぐ。
『流石ですね。この初手でだいたいは勝負がついてしまうのですが…。』
「それは光栄だな、っ!」
防いだ剣を押し返すように再び距離を取る。
そのあともエレンが強く踏み込む度に速さを増し、ついには…。
「く…っ!」
『はぁあ!!』
――ガキィン!!
『はぁ、はぁ…。』
「…、…っ」
エレンの繰り出した一撃をキシュワードはもう片方の双刀を抜いて防いだのだ。
『あ…、』
「…。…俺の負けだな。」
防がれた剣を後ろに下がって引いた。
キシュワードも双刀を鞘に収める。
徐々に嬉しさが込み上げてきたのか、弾けるように笑顔を見せるエレン。
キシュワードもやれやれ、と髭を撫でた。
『約束ですよキシュワード様!私新しい甲冑が欲しいです!』
「わかっておる。騎士に二言は無いからな。後日寸法を図らせて特注で頼んでおいてやろう。しかし本当にやるとはな…。」
『…!ありがとうございます!』
「いつの間にそんなに腕を上げたのだ。父親より腕が立つのではないか?」
『まさか。父上に勝てたことは一度もありませんよ。…引き分けたことは何度かあったかな?』
「…。まったく恐ろしい娘だ。男だったらとうに万騎長候補だったであろうな。」
『ほんとですか?ではアルスラーン殿下が御即位なされた時にお願いしてみようかしら。』
「これ、何てこと言うのだお主は。」
不敬だぞ、と軽く小言を言われるもそのあとキシュワードは笑ってくれた。
彼は真面目な人だから。私はアンドラゴラス陛下よりアルスラーン殿下個人に忠誠を誓っているがキシュワードは生粋のパルス騎士。
アルスラーン殿下が、とかアンドラゴラス陛下がというよりもパルス王家に忠誠を尽くす根っからの武人。
それがわかっているからこそ私はこの人を嫌いにはなれないし、信頼出来る数少ない人なのだ。
朝日もすっかり昇り、城内の兵士や侍女たちも活発に仕事をし始める。
キシュワードとエレンも稽古も切り上げて、朝食を食べようと城内へと入っていった。
午前中に軍議を行う予定だとキシュワード様から聞いている。
彼自身は今すぐにでも出兵することは賛成らしいのだが、バフマン率いる年長者はどう思っているのか。そこに関してはキシュワードも把握していないようだ。
軍議自体、エレンは参加出来ない。
アルスラーン殿下とここまで行動を共にしてきたがエレン自身なんの地位も権限もないのだ。よってファランギースやギーヴ、アルフリードと大差ない扱いになる。
そのことにダリューンやナルサス、ファランギースといった面々が異議を唱えたがバフマンやその他の年長者らが反対したため、エレンはその意思に従った。
参加は許されなかったがエレンは軍議が行われている会議室のそばで終わるのを待った。
すると始まって一時もしないうちに中から誰かが大声で叫んだような声が聞こえてきて、そのあとすぐ軍議室の扉が荒々しく開いたのだ。
そこから出てきたのはバフマンだった。
顔に血が登っている様子で息も荒々しい。
バフマンは床を踏み鳴らすようにこちらにむかって歩いてくるのでエレンは気になって声を掛けた。
『バフマン様?どうされたのです?軍議は終わったのですか?』
「お主…、ずっとそこにいたのか…、」
『はい。』
エレンの顔を見た途端、バフマンは気まずそうに顔を反らした。まるで目を合わせないようにしているみたいだ。
「軍議は、まだ続いておる…、」
『ではどこか具合でも?お部屋に戻られるのでしたらお供いたします。』
「あ、いや…、そうだな…。」
相変わらずどこか覇気のない答え。
頼むとしよう、弱々しくバフマンが言ったのでエレンもそばについて彼の部屋までついていった。
その頃、軍議室では退出したバフマンについて話し合われていた。
「怒っただけか。」
ため息とともに退席したバフマンの席を見つめるダリューン。
いや。とナルサスが否定した。
「あの老人もっと喰えぬ。怒ったふりをして座を外し、追求されるのを避けたのだ。」
「今、兵を動かすことになんの躊躇いがあるのか!」
バフマンは今年中に兵を動かしエクバターナを取り戻すことに反対した。それを臆病とナルサスらが言うものだからバフマンは怒ってその場を出ていってしまったのだ。
「それなのだがな、ダリューン。」
キシュワードがナルサスとダリューンへ身体を向ける。
.