第8章
夢小説設定
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「エレンーー!」
それに答えるようにアルスラーンが手を振り上げた。
ここにいる、と。
するとエレンの背後から一羽の鷹が飛んでくる。
それに続くようにエレンの隣にはペシャワールの主・万騎長キシュワードと、そしてパルスの騎馬隊がずらりと並んだ。
その迫力にルシタニア兵も思わず息を止める。
「双刀将軍キシュワードだ!!」
「あ、馬鹿者逃げるな!とどまれ!」
「冗談じゃない!この数で太刀打ちできるか!」
ルシタニア兵はまるで蜘蛛の子を散らすよう逃げ出していく。
それをさらに追い打ちをかるようにパルス兵が押し寄せた。
「王太子殿下を守り参らせよ!突撃ー!!」
その合図にエレンもパルス兵と共に一気に丘を駆け下りた。剣を片手にルシタニア兵を次々に斬り伏せていく。
パルス兵のその勢いのすごさは味方をも圧倒させるほど。
決着は一瞬だった。
逃げたものがほとんどだったが、その残りの兵を残らずパルス兵が倒してしまったのだ。
『殿下!アルスラーン殿下!』
「エレン!」
決着がついた瞬間、エレンは真っ先にアルスラーンを探した。
見つけた時、彼はずいぶんとボロボロな姿をしていてエレンは申し訳なくなる。
駆け寄って馬から降り、同じく馬から降りた殿下の手を取った。
『殿下、ご無事で何よりです。おそばを離れてしまい申し訳ございません。』
「よい、気にするな。皆が私を守ってくれたのだ。それにお主もキシュワードと兵を連れて助けに来てくれたではないか。」
『アルスラーン殿下…、』
相変わらずこの方の心の広さには頭も下がる。
思わず涙が出そうになった。
「おぉ!アルスラーン殿下!よくぞご無事で!このような辺境の地へおいでくださいました!」
「キシュワード!久しぶりだ。アズライールが来てくれたからお主も近くにいるとわかった。」
先程の一羽の鷹。あれは殿下もよく知る友人の鷹、アズライールだ。
「本当によく来てくれた!」
「もったいないお言葉…!」
殿下は拝跪するキシュワードの手を取った。
『ダリューン様!ナルサス様!』
「エレン、無事で何よりだ。よく兵を連れてきてくれた。」
『はい、ダリューン様もご無事で良うございました。』
「ダリューンと…ナルサスか!久しいな!」
キシュワードはダリューンとナルサスとも顔を合わせる。
「お久しぶりです、キシュワード殿。」
「はっは!そうかお主らが、か!それは殿下にとって十万の大軍より頼もしいだろうよ!」
『ふふっ本当に!』
こうしてアルスラーン殿下一行はキシュワードに案内されペシャワール城へ入城を果たす。
長い長い旅路であった。
アルスラーン殿下がおいでになるとペシャワール城にもすでにことは伝わっており、城門をくぐると多くのパルス兵が待ち構えていた。
「殿下!」
「アルスラーン殿下!」
歓迎を受ける一行。
殿下の御身を心配する声や、ゆっくり休んでくださいと労る声が次々に聞こえてくる。
アンドラゴラス陛下も別の意味で大層人気ではあるが、王太子も王太子で別の意味で大層人気があった。
みな心優しい殿下を知っているからだ。
歓迎を受けたのは何も殿下だけではない。
かの有名な“戦士の中の戦士”と謳われるダリューンもパルス兵から絶大な人気がある。
本人、もう万騎長ではないと言い張るがそんなことは兵たちには気にもならないところだ。
「さっきの方だ…、」
「万騎長サーム様のご令嬢だと言っていたぞ。」
『―?』
視線を感じたエレン。
それは物珍しそうに見るペシャワール城の兵士達。
彼らには女が騎士や兵士などを努めているのが珍しいらしく、ついその目で追ってしまう。
エクバターナでは女兵士がまったくいないわけではないが、あからさまに女性の格好をして戦っているわけでもない。
それに騎士ともなれば、さらにその人口は減る。
いや、もしかしたらエレン以外に女性騎士というのはいないのかもしれない。
物珍しく見つめてくる兵士達に、エレンは当たり障りなく手を振って笑顔を見せた。その笑顔に何人かは顔を赤くしていたのを彼女は知る由もない。
城門を抜けた先には待機していたバフマンの他、数名の騎士達が殿下を待っていた。
その顔はやはりどこか優れぬようで。
キシュワードは両手を上げるくらい喜びを見せたのに対しバフマンはどこか恐れるような、そんな風に見えた。
「…王太子殿下…、」
「バフマン!久しぶりだ!変わりないか?」
「…は、はい…。よくぞご無事で…、」
お疲れでしょう、どうぞ中へ、と言ってそれ以上会話をすることなくその場から離れようとする彼にアルスラーンも疑問が浮かんだ。
「元気がないようだ。私のことで老体に心配をかけすぎてしまったかな…、」
『……。』
エレンも遠のくバフマンの背中をじっと見つめていた。
思い出すのは先程の事。
覇気のない彼に思わず、しっかりしろと言ってしまった時、彼はなにかに怯えて私の前で跪いたのだ。
…あれはいったいなにを意味するのか…。
エレン以外のみなも不審そうにバフマンの背をじっと見つめていたのだった。
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