第8章
夢小説設定
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結局、バフマンはどこか心ここにあらずな様子で出陣の用意をする兵士らをただぼーっと見ているだけだった。
おかしい。
以前会った時はもっと生き生きとしてらしたのに…。まだ老け込む歳ではないし、そんな扱いを彼は一番嫌うことをエレンは知っている。
「兵はいかほど出せばよいか?」
『え?…あ、えっと五百騎ほどあれば十分かと。』
「たった五百騎で良いのか?」
『はい。敵も遠路はるばる来ていますからそんなに兵力も十分には残っておりませんでしょうし、何より体力も残っていないでしょう。それに加え、ペシャワールがすぐ近くにありますから。』
敵も無茶はしないでしょう、と話すエレンにキシュワードは一人ほう…、彼女の成長ぶりを頼もしくまた嬉しく思った。
『あとは、双刀将軍キシュワード様のお名前をお借り出来れば十分ルシタニア兵を蹴散らせます。』
「ほう?この俺の名を利用しようというのだな?まったくお主くらいではないか、俺をそんな風に扱うおなごは。」
キシュワードの言葉にエレンはあわあわと慌てた素振りをみせた。
『利用だなんて人聞きの悪い言い方しないでください!もう…、ところでキシュワード様、バフマン様になにかあったのですか?どうも様子がおかしい気が…。』
「…お主から見てもそう思うか?」
エレンはコクンと頷く。
キシュワードは自慢の髭を何度も撫でた。
『どこか覇気がないというか、なにか悩んでおられるのですか?』
「この俺にも何も話してはくれなくてな。とにかく後のことはアルスラーン殿下をお迎えしてから話そう。」
『はい!』
「お主も行くのか?疲れておるならここで待ってても良いが。」
『そうは行きません!殿下のご無事を一刻も早くお目にかかりたいですから。』
「わかった。よし、では行くぞ!出陣せよ!」
「「は――っ!」」
万騎長キシュワードを先頭にペシャワールの兵士五百騎がアルスラーン殿下を救うべく出陣する。
一方で、ナルサスとアルフリードはダリューンとエラムと合流を果たす。二人はその前にアルスラーン殿下とファランギース、ギーヴと合流していて先にペシャワールへ向かわせていたのだ。
「ナルサス様!ご無事で!」
「おぉ、エラムも無事か。殿下はご一緒か?」
「ギーヴとファランギースがついて先にペシャワールへ向かっている。」
「そうか。安心した。」
「ナルサス、お主こそエレンとは一緒ではないのか?」
「心配ない。エレンも一足先にペシャワールへ向かわせておる。城の兵を動かしてもらうよう頼んでおいた。」
お互いの安否の確認が取れたことで一抹の不安は取り除かれた。
この場に全員は揃ってはいないが皆無事だ。
数日前に散り散りに分かれて以来、お互いの無事を気にかけていた。
「そうか…。…ところで、そちらの方は?」
さっきから一言も発さない赤髪の少女にダリューンは気になって仕方なかった。
その少女の存在を問われた時、ナルサスはすこし気まずい顔をしてみせたのだ。
「いや、これは…、」
「あたしはアルフリード。ナルサスの“妻”だよ!」
「「……。」」
「違う!!話せば長いことながら…!」
「うん。正式には結婚してないんだ…。本当はただの情婦だけど。」
「わーー!!」
やはりエレンを行かせるのではなかったと心の底から後悔したナルサスだった。
アルフリードは己の妻などと言うし、ダリューンにはからかわれるし、最後の砦とも言えるエラムでさえ吐き捨てるような軽蔑の目で見られる始末。
もはや自分に味方はおらぬのか、と意気消沈するナルサスだった。
「(せめてエレンがいればまともな弁解も出来ただろうか…。)」
“アルフリードとゆっくりおいでになってくださいね?”
・ ・ ・。
いや、たぶん無理だな。
すこし期待した自分を殴りたくなった。
エレンが自分を無実だと証明してくれるなど。
結局アルフリードも共にペシャワールへ連れて行くことになり、馬を進めた。
途中で無事アルスラーンとファランギース、ギーヴとも再会を果たし、残るは一人ペシャワールへ入城を果たしたエレンのみ。
しかしペシャワールまであと少しの所でルシタニアの猛追に合い、戦闘を避けられず苦戦を強いられていた。
敵の中に何度もダリューンを追い回す強者がおり、その体格はダリューンと同等かあるいはそれ以上か。
大将軍・カーラーンの息子だ。
どこか幼さも感じられるその顔はやはり父親の血を濃く受け継いだのだろう。
「アルスラーンは生かして捕えろ!他の者は殺せ!」
「まだ懲りぬか。カーラーンの不肖の子が!」
「おうさ!貴様の首を取るまで諦めるものか!」
「よしそこを動くな!永久に諦めさせてやる!」
ダリューンとカーラーンの息子・ザンデの何度目かの一騎打ちが始まる。
ザンデはその大きい大剣を高々と振り上げた。
するとその腕に一本の矢が命中する。
「ぬ…っ!?」
「―!?、なんだ!?」
誰一体だ。と矢を放ったものを探した。
だがこの混戦の中、ただ流れてきたにしては的確すぎる命中率。誰かがザンデを狙って放ったに違いない。
ダリューンは矢が飛んできた方向に目を凝らした。
するとはるか遠くのその丘から一人の騎馬が弓を持っていた。まさかこの距離でやつを狙ったのか…。
いやそれ以前にあそこにいるのは――。
『殿下ーーーっ!!』
「――っ!?」
その者が叫んだ。
聞き覚えのある声だ。
その声は呼ばれたアルスラーンの耳にも届く。
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