第8章
夢小説設定
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ナルサスの指示通り、エレンは一人ペシャワールに向けて一気に馬を走らせた。
離れる間際、ナルサスはものすごく疲れたような顔をしているその横でアルフリードがハートを撒き散らすように彼にすり寄っていたのが見えた。
え、私邪魔者だった?
ナルサスは心中で、無事ペシャワールにたどり着くためとは言え、
とんでもない選択してしまったと後悔していたのだった。
『ペシャワールまでお願いねヴァナディール!』
フンッ、気前の良い鼻息が聞こえる。
本当に自分には過ぎた馬だ。
何度かルシタニア兵やら私兵の盗賊やらに見つかったがそこはナルサスの指示通り、単騎で一息に駆け抜け、突破する。
そうして一刻ほど駆け抜けた時、川を渡った先で眼前にペシャワール城塞を収めることができた。
さきほど見た時はあんなに小さかったがこうして間近で見ると貫禄のある城構えだ。
城の見張りのパルス兵が突然単騎で現れた人物に緊張が走る。
エレンはそのまま馬で城門まで駆け寄った。
『私は万騎長サームの子、エレオノールと申します!至急万騎長キシュワード様、万騎長バフマン様にお目通りを願いたい!開門を!』
大声で声を張り上げた。
その内容に城門の見張りをしていた兵士も動揺した雰囲気が感じられた。
「エレオノール様!しばし待たれよ!急ぎキシュワード様、バフマン様にご報告して参ります故!」
『感謝します!』
その報告はすぐにキシュワードの元へ届けられた。
ちょうどバフマンと二人、中庭で兵士の訓練をしていた所を休憩がてら話をしていたのだ。そこへ城門を警備していた兵士が慌ててキシュワード、バフマンの元へ駆けつける。
「キシュワード様!バフマン様!ご報告が!」
「ん?どうした。シンドゥラ国に動きでもあったのか?」
「いえそうではございません!たったいま、城門の外に単騎でやってきた者がおりまして、自分は万騎長サーム様の子・エレオノールと申しております。至急キシュワード様とバフマン様にお目通りを、とのことです。」
「なに!?」
「――っ!?」
兵士の報告に二人はそれぞれ違った驚きを見せる。
キシュワードはもしそのエレオノールと名乗る者が自分の知るものであれば、生きていたか!と嬉しさの驚きだ。だがその反対、バフマンはまるで青ざめるかのように驚いていた。しかし老のそんな様子を今は気に留める者はおらず。
キシュワードもしかり、いそぎ確認するため城門へと上がった。怪しまれぬようバフマンも慌ててその後を追う。
「エレンー!お主か!?」
『―!キシュワード様!』
城壁から見慣れた顔が下をのぞかせる。
名を呼ばれたエレンが答えるように手を大きく振った。
相変わらず立派な髭だ。
「すまん!すぐに門を開けさせる!開門せよ!」
「は―っ!」
大きな城門を人一人分通れくらいに開くとエレンはその隙間をぬうようにしてペシャワールへの入城を果たした。
馬から降りて手綱を兵士に託し、城壁にいたキシュワードをキョロキョロと探した。
「エレン!無事か!」
『キシュワード様!…わっ!』
出会い頭、キシュワードに駆け寄ったとたん彼が両手をエレンの両脇にそえ、高々と持ち上げたのだ。…そういわゆる“高い高い”というやつだ。
そんな軽々と持ち上げられるほど装備も軽量なんかじゃないのだが。
…そしてなにより恥ずかしい。
『お、下ろして、ください!キシュワード様!』
「おぉすまんすまん!お主少し会わぬ間に重くなったか?」
あんなに軽々しく持ち上げたくせに言うことがそれか。
『キシュワード様!それはあんまりです!私ももう19ですよ!子供ではありません!』
「ん?もうそんな歳になったのか。」
顔を赤くして怒るエレンに対し、キシュワードは、はっはっと豪快に笑うだけ。
そんな二人の様子に駆けつけた兵士も釣られたように笑ったのだった。
「エレオノール!」
『バフマン様!お久しゅうございます。』
「お主一人か?サームは…、エクバターナは、いやアンドラゴラス陛下と王太子殿下はどうなされたのじゃ!?」
『お、落ち着いてください!一から順にすべてお話いたします。ですがその前にキシュワード様。バフマン様、ペシャワールの兵を動かしていただけませんか!?』
「「――?」」
エレンの雰囲気が緊迫したものに変わった。
思わず首を傾げる二人の万騎長。
「兵を動かす、とは?なにかあったのか?」
『アルスラーン殿下がお二人の庇護を求めてここペシャワールへ向かっております。おそらくもうすぐそこまで来ているはずです!』
「なんと!殿下はご無事なのか!」
『はい。ですがその道中はルシタニアに追われ今も危機が迫っております。どうかお力を!』
「聞くまでもない!王太子殿下をお迎えに上がるぞ。出陣の用意だ!バフマン殿、私も出るがよろしいか?」
「あ、あぁ…、そう、だな…。」
なんとも歯切れの悪いバフマンの返答ぶりにエレンはつい声を上げた。
『しっかりなさいませ!バフマン様!アルスラーン殿下がすぐそこまでいらしてるのですよ!』
「――っ!」
ビク!とバフマンの身体が震え、何を思ったのかとっさにその場で膝を着いたのだ。
これにはエレンだけでなくそばにいたキシュワードもバフマンのその行動に目を見張った。
無意識だったのだろう、すぐさま立ち上がったがバフマンはなにも弁解することなくただじっとエレンを見つめていたのだった。
「(今の気迫…、アルスラーン殿下にはない…。アンドラゴラス陛下と同じ威圧感そのもの…。)」
思わず老将・バフマンでさえ拝跪させてしまうエレンの気迫。
あの手紙の内容はやはり本当だというのか…。
我が友・ヴァフリーズよ…――。
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