第7章
夢小説設定
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「金槌で叩いて一枚板にしたら銀貨百枚分くらいにはなるよ。半年は遊んで暮らせるんじゃない?」
『あれが…っ、』
エレンの脳裏には先程の趣味の悪そうな銀仮面が急に光り輝いて見えてきたのだった。
「悪くない話だ。」
そんな他愛もない話をしながら二人はゾット族族長の娘・アルフリードを連れ山道を進んだ。ある程度馬を歩かせたところでアルフリードが急にナルサスの馬に乗ると言い出してエレンの馬をおりてしまい、なんか嬉しそうにナルサス様の馬の後ろに乗せてもらっていた。
なんか必要以上にくっついてるように見えるのは気の所為にしておこう。
だが彼女はナルサスが登場してからずっと視線が彼に釘付けである。
「あんた達、あの男と顔見知り?」
『えぇ、まぁ。』
「少々因縁がな。」
『…。』
それはナルサス様が彼に“ヘボ画家”呼ばわりされたことに対してなのか、アルスラーンに対してなのかは不明である。
「だが正体を知らんのだ。お主、あの男が何者か対峙して気付いたことはないか?」
「正体?」
うーんとアルフリードは頭をひねらせた。
とにかく第一印象は、偉そう、だ。
「あたしの親父を殺した時、“王侯の手にかかって死ねるのだから名誉に思え”――とか。」
「『――っ!』」
エレンとナルサスははっと息を飲むように目を開いた。
ルシタニアの人間ではないだろうな、とは予想はしていた。だがまさか自らを“王侯”と名乗るとは…。
それはつまりルシタニアの王家、ではなくパルスの王家ということを意味すると考えるべきか…。
『彼が…王族…?』
「…王侯と?」
「変なんだよあいつ!どこの世界に仮面を被った王様がいるってのさ!」
『あの仮面はおそらく、顔の傷を隠すためだと思うのだけど…、でも…、』
「顔の傷?そうなの?」
「――。」
ふとナルサスの頭の中をいろんな仮説が走り去る。
…しかし、…まさか、
しゃべるアルフリードに言葉を返すのも忘れてナルサスは一人深く考えこんでしまい、彼女が何度も名を呼んでいることに気づかなかった。
『ナルサス様?』
「ちょっとあんた!」
「―、ん?あぁ、なんだ?」
二人して声をかけてようやく彼の思考が現実に戻ってくる。
「どこまで行くのさ?」
「東で仲間と落ち合う予定だ。お主、どこかいくあてがあるのなら適当なところで下ろしてやるぞ、言ってみなさい。」
「それはないだろ!いったん助けたら最後まで責任とってくれなきゃ!」
『(責任、ってなんの責任だろうか…。)』
「ここであたしを置き去りにしてあの銀仮面に殺されたりしたらあんたきっと後悔するよ!」
「面倒なことになった…。」
「何か言った!?」
「いや、お主の言うことはもっともだ…。」
気の強い彼女にナルサスは珍しく始終押されっぱなしだった。
普段一緒にいる物静かでおとなしいエラムとは大違い、とでも思っているのだろう。
「あんた、名前ナルサスって言ったね!」
「あぁ。」
「そうナルサス、あたしはアルフリード!これからよろしくね!あと、エレン、だっけ?よろしく!」
「…あぁ、よろしく…。」
『よろしく。』
ついさっき殺されそうになったというのに、この娘はずいぶんタフな性格なのだなとナルサスとエレンはため息とともにその思いを吐き出すのだった。
夕暮れが近づいて来た時、三人は村らしき場所を見つけた。
『私先に行って見てきます。ナルサス様とアルフリードは後からゆっくり来てください。どこか休める場所がないか探して来ますね。』
「あぁ、すまんな。頼む。」
「気をつけてね」
二人を乗せ、疲れた様子のナルサス様の馬を気遣ってエレンが愛馬・ヴァナディールを走らせる。
「真面目な人だね、エレンって。」
「そうだな、思いやりのある優しい娘だ。」
「あの人ってもしかしてナルサスの“いい人”?」
「―!?」
さすがのナルサスもその問いには平常心を保てなかった。と言っても少し驚いて目を開いただけなのだが。
「まさか。まだ知り合って間もないよ。それにおそらくあの娘の胸の内におるのはきっと“別の誰か”であろうな。」
そういった彼の脳裏には、かの黒衣の騎士の姿を思い出していた。
「ふ〜ん、そっか。じゃあ大丈夫だね!」
「…?」
何に対して大丈夫かはこのときのナルサスには想像もしてなかった。
一方で、先行して村へ向かったエレン。
近づくにつれて村の様子に違和感を感じ始めた。
不審に思い、村の入口の手前で馬を降りて慎重に歩みを進める。
『おかしい…。』
心臓がどくどくと脈打つ。
嫌な予感がするときいつもこうなる。
アルスラーン殿下に対してのものではない。
これは目の前の村に対して感じる嫌な予感だ。
すると遅れてやってきたナルサスとアルフリード。
馬を降りて、入り口で立ち尽くすエレンを見つけ、なにかに気づいたのか同じように馬から降りる。
「どうした。」
『ナルサス様…、なにかおかしいのです。村が…、村から炊煙が一つも上がっていないのです…。もう夕餉の支度をし始めてもおかしくないのに…。』
「…。…炊煙どころか灯りの一つも灯っていない…。」
「……、」
ナルサスとエレンの言葉が何を意味するのか。理解したアルフリードは二人から離れぬよう警戒して側に寄った。
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