第6章
夢小説設定
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真夜中。
見張り番をエラムがしていた時だった。
焚き火を囲むようにアルスラーンとナルサスとエレオノールが眠っており、すこし離れた場所でファランギースとギーヴ。その反対に位置する場所にダリューンが木にもたれるようにして眠っていた。
エラムがこそこそと明日の朝食の支度をしているとアルスラーンが目を覚ます。
「エラム?何をしているのだ?」
「あっ。火の番のついでに朝食の下ごしらえをしておりました。みんながすぐに食べて出発出来るようにしておきますので殿下はお休みに…、って殿下!?」
「よいしょ。」
驚くエラムを気にもせず、しれっと彼の隣に腰掛け火に当たるアルスラーン。まさか起きてくるとは、と普段冷静な彼とは思えない声をあげた。
「冷えるな。」
「冬はすぐそこまで来ていますからね。」
「いつ見てもうまいものだなぁ。」
「慣れておりますから。」
もはや寝る気配のない王子に諦めたのか、朝食の下ごしらえの続きをしているエラムの手元を興味津々に見るアルスラーン。
「奴隷仲間の内で交替でやっているうちに身についたものです。」
「それで上達してナルサスの食事を作るようになったのか?」
「奴隷小屋で暮らしていた頃、たまたま食事時にナルサス様がいらして…、」
エラムは奴隷であった頃の話をアルスラーンに話してみせた。
狩りから帰ったナルサスが腹が減ったとたまたま通りかかった奴隷小屋でエラムが作った食事を食べ、あまりの旨さに大層褒めてくれたそうだ。
あの時の嬉しさは一生忘れないだろう。
なにより彼が自分の名前を覚えていてくれたことも同じくらいに嬉しかった。
「ナルサス様に褒められたのがとても嬉しくて腕を磨きました。おかげで自由民になった後もこうして自分のやりたいことで生活出来ています。」
エラムは仕込んだものを焚き火の火に当て、焼き目をつけていく。その様子をじっと見るアルスラーン。彼の脳裏にあるのは奴隷開放。その文字だけ。
「技術があれば奴隷から開放されても生きていける…か。」
「本気で全国の奴隷開放をお考えで?」
「だめか?」
驚くエラム。
アルスラーンは諦めてはいなかった。
あんなめにあったというのにだ。
なかなかにして諦めの悪い王子である。
それが果たして吉と出るか凶と出るか。
まさかこの二人の会話をその場にいる大人達全員が聞いてるとは露程も思わないだろう。
「エラム、もっと話を聞かせてくれ。お主と話していると希望が湧いてくる。」
「で、殿下…っ、」
「技術を持つことと、それを支える社会制度…どうしたらよいだろうか?」
「私にはナルサス様のように難しいことはわかりませんよ殿下!」
「何か案があれば言ってくれ」
「もう寝てください殿下!夜食あげますから!」
『――ふっ、』
「「――っ!」」
一国の王子を相手に食べ物で説き伏せようするとは。
さすがナルサス様の元で勉学を励んでいるだけのことはある。
それよりもだ。
二人の会話がおもしろすぎて声が我慢出来なかったエレオノール。
むくりと起き上がって目尻に浮かんだ笑い涙を拭った。
『申し訳ございません殿下。お二人の邪魔をせぬように黙っていたのですが…。』
「エレン様…、」
エラムが助けを求めるような顔をした。
「エレン、起こしてしまったか?」
『いえ、お気になさらず。』
「エレン様からも殿下にお休みいただくよう仰ってください。」
エラムのその表情はまるで寝付けない子供を諌める親のようだ。
『あらいいじゃないエラム。たまには息抜きだって必要だもの。殿下にとっての息抜きがエラムと話すことなら、なおさら必要なことよ?』
「エレン…、ありがとう。」
『いいえ。』
「エレン様…、」
エラムはなにかに負けたような気分になった。
なにか、と聞かれるとわからないが。
そしてなぜかこのお二人がどこか似ていると少しだけ思った。
『ですが、さすがにこれ以上の夜ふかしは明日に障ります。殿下、眠れないのでしたら寝物語でもお聞かせいたしましょうか?』
「そうだな…。わかった、頼む。」
エレオノールに促され、ようやく寝床についたアルスラーンにエラムは開放されたことによる安堵のため息をつくのだった。
こうして彼女は静かに語り始める。
その声はとても優しく、玲瓏で、耳に心地よく響いた。
『では、天上に輝くこの季節の星々のお話をいたしましょう。以前、王立図書館の司書様から教えていただいたお話でございます。』
アルスラーンは夜空を見上げながらエレンの話に耳を傾けたる。語られる話を聞きながら気づけば瞼がうとうとし始めて、やがて心地よい眠りについたのだった。
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