第6章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あれから馬で五ファルサングほど走ったところの森の中でアルスラーン一行は野営をした。
火をおこし、エラムが用意してくれている食事を待つ間、アルスラーンはナルサスと会話し、ダリューンは剣を磨いだり、と各々自由に過ごす中、エレオノールはファランギースと森の中を見回りに行こうとした。もちろん女性二人だけでは心配だと理由をこじつけてギーヴも無理やりついてきたのだが。
見回りから帰ってきた頃、ちょうど食事も出来たようでみなが焚き火を囲むように座って待っていてくれた。
帰還したエレオノール、ファランギース、ギーヴの三人をナルサスが労う。
「見回りご苦労だったな。どうだった?」
「心配ないようじゃ。精霊どもも落ち着いておる。」
「そうか。ちょうどエラムが夕食を作ってくれたところだ。」
「どうぞ。お召し上がりください。」
「いただこう。」
エラムの差し出した器を受け取り焚き火を囲むように腰掛けるファランギースとギーヴ。
二人にならってエレオノールもどこへ腰掛けようとかと思っているとギーヴが自身の隣をぽんぽんと叩いた。ここが空いてますよ、といわんばかりに。
エレオノールは信用しきった表情でギーヴの隣に腰掛けようとして、はた。と止まった。彼の表情がなんとなく意味有りげな顔をしていたからだ。
『…。』
「どうされた?エレン殿。このギーヴの隣が空いておりますぞ?」
『…。やっぱり遠慮しておくわ。私はもう少し離れた場所でいただくわ。』
「おやおや、つれない。“お主”と“俺”との仲ではないか。」
『どんな仲よ!』
そんな親密な仲になった覚えなど一切ない。
ギーヴの言葉に思い出すのは数刻前のカシャーン城塞での事故。…そうあれは事故なのだ。
『(よりによってギーヴに見られるとは…っ。)』
不覚。
珍しく声をあげたエレオノールにアルスラーンやダリューンも物珍しそうな顔をしていた。
「“どんな”と聞かれれば、もちろん“生まれたままの姿”を見せあった仲、ではないか。」
「「――っ!」」
『〜〜〜っ!ギーヴ!』
彼の言葉に男性陣の何人かは吹き出していた。
その横ではエレオノールが顔を真っ赤にしている。
いったい何があったのだろうか。とついよからぬことを想像してしまいそうになる。
『“あれ”は事故よ!事故!私はあなたに生まれたままの姿なんて見せた覚えもないし、見た覚えもない!誤解を招くような発言はやめなさい!』
「ギーヴ。エレンをからかのも大概にせんと明日にはお主の首が胴体から離れてるやもしれんぞ。」
「それは勘弁ですな。」
『〜〜っ。』
見かねたファランギースが間に入ってくれたが確かに彼女の仲裁がなければ本当に今頃ギーヴの首は繋がってなかったかもしれない。
エレオノールはすっと腰の剣から手を引いたのだった。
すっかりエレオノールから警戒されてしまったギーヴ。
そんな彼をエレオノールは一番安全であろうダリューンとその隣に座るファランギースの後ろから睨みを効かせていた。…まるで毛を逆立てた子猫のようだったのでつい笑ってしまうダリューンとファランギースであった。
一悶着はありはしたが、エレオノールがやっとエラムの作ってくれた夕食にありつけたときにはお腹がペコペコであった。
『エラム、すごく美味しい。』
「ありがとうございます。…エレン様もう少し火の傍に寄られてはいかかですか?そこでは寒いでしょう。」
そう言われたエレオノールがいる場所は結局ダリューンとファランギースの後ろでとても火のぬくもりなど当たりそうもない。心配したエラムが気を使ってくれたのだがエレオノールは小さく首を振った。
ダリューンも心配そうに後ろを振り返る。
『ありがとう。でも大丈夫よ私はここで。』
「しかし…、」
なおも気にするエラムにエレオノールはただ穏やかに微笑むだけ。
そしてこう言った。
『…大きい火が苦手なの。』
「「――っ。」」
思わず反応してみせたダリューンとエラム。
二人だけでない。アルスラーンやナルサス、ギーヴもファランギースも意外そうな顔をした。そして結びつくのはエレオノールの背中の古い火傷の跡。
はたして関係があるかどうかははっきりとはわからないのだが。
「そう、だったのか…。初めて聞いたな。」
『私も初めて父以外の方に言いました。』
ダリューンですら初耳だった。
なんかこう…、つい?
口が滑ったというのだろうか。
知っていてもらった方がいいような、そんな気がしたから。
『松明程度なら平気なのですが…、暖炉や焚き火ほどになるとどうしても…。』
身体が無意識に震えてくるのだ。
エクバターナでの籠城戦のおり、王宮に火を放たれた時は戦うのに必死だったので記憶があいまいな部分もある。
少しずつではあるが今まで知ることのなかった彼女の素性が明らかになりつつあるのをナルサスは心中で感じていた。
サーム殿の養子
背中に古い火傷の跡
火が苦手
はたしてこれらの素性が意味するものとは…?
「(はて…。この娘もなにやら“途方も無いこと”を隠しているやもしれんな…。)」
誰にも気づかれぬよう横目でちらっとダリューンと会話をするエレオノールを見ていたナルサスであった。
.