第6章
夢小説設定
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「…。無用の疑いを招いたことは我が身の不徳…。もはやお止めはいたしません。せめて殿下のご乗馬のくつわを我が部下に取らせましょう。」
そういってホディール直属の部下二人が殿下に近づこうとした。
しかしその懐にキラリと光るものをエレオノールは見逃しはしなかった。
『――っ!』
ザン、と剣を二振り。
斬られた部下の手からカラン、と短剣が滑り落ちた。
「ぐわぁ!」
「い゛っ…!」
カラカラと転がってきた短剣を踏みつける。
そして惜しげもなくその気迫をホディールに向けて放った。
『王太子殿下に近づくに短剣を隠し持つとは何事ですか!それとも、ここではそれが王侯に対する礼儀というのですか!?ホディール!』
「――っ!」
後退りするホディールを守ろうとパルス兵が前に出てカシャーン城主を守ろうとする。そんな彼に向かってダリューンはすら、と剣を抜いて見せた。
「おとなしく出て行かせた方がお主のためだぞ、ホディール。」
「…っ。」
戦士の中の戦士、と異名をもつ黒衣の騎士を前にして戦いを挑もうとするものはいるはずもなく。
ホディールもまともに戦って太刀打ち出来る相手ではないと知っているので、忍ばせていた弓兵に合図する。
しかし矢が放たれることはなかった。
弓兵が弦を引き絞った途端次々に弦が切れたのだ。これでは矢は打つことは出来ない。
「言われた通り、詰め所にあった弓の弦はすべて切っておきました。」
「よくやったエラム。」
「……っ、」
ここまでの周到さにホディールも空いた口が塞がらない。
「〜〜っ。ナルサスー!この狡猾な狐めがあぁ!」
「なんの。お主の足元にもおよばんよ。」
『ふふっ。』
たしかにその通りだと思った。
激昂するホディール。小癪な、と叫ぶ彼にナルサスがお主ほどではない、なんて言うものだから思わず笑ってしまった。
『(ナルサス様って面白い人ね。)』
ちょっと好きかも?
…異性としてではなく一人の人間として、だけど。
…一体だれに言い訳してるのやら。
「さて。カシャーンのご城主。こちらには数は少ないが弓矢もあれば射手もいる。賢明なお主のことだ。城門を開いて我らを送り出すという考えにご賛同いただけると思うが…、」
「……っ、」
追い詰められたホディール。
いまここでやつらを城外に出してしまえば命は助かるが、後に反逆者と言われるかもしれない。彼の脳裏にはそればかりがぐるぐると巡っているのだ。
彼はふと背後にいた兵士に目配せをした。
するとふっと明かりが突然消える。
『松明を消したかっ。殿下!』
「王太子を捕えろ!」
「我らが主をお助けするのだ!」
「いいぞ!王子を狙え!この闇に乗じて押し包め!」
暗闇に乗じてアルスラーン殿下を狙うホディールとその兵達。しかしこれくらいの暗闇で動揺するほど彼の黒衣の騎士は軟弱ではない。
アルスラーン殿下を捕らえるべく向かったであろう兵士の断末魔がホディールの耳に届いたのだ。
次々とやられていく兵士。
追い打ちをかけるダリューンからホディールは死にものぐるいで逃げるが足がもつれ、その巨体を地面に転がしてしまう。
後ろを振り返れば、迫るは黒衣がはためく無双の騎士。これまでか、とホディールは悪あがきで剣を抜きダリューンに向けて振った。
しかし常に前線で生き抜いてきた彼に城主の生温い剣術など通用するはずもなく。
「この期におよんで命乞いしないのはさすが諸侯というべきか…。」
「えぇい!」
ホディールの渾身の一撃もたやすく跳ね返される。跳ね避けられた剣の持ち手が尋常じゃなく痺れた。
「だが、お主は裏切ってはならぬものをすべて裏切った。」
ダリューンの鋭い眼光がホディールを捉え、一撃。
その首は彼の槍で高々と掲げられた。
もうこれ以上の戦いは不要であると城内のパルス兵に知らしめるため。
「お前たちの主は死んだ!これ以上死者のために戦うというのか!?」
城内にダリューンの声がよく響いた。
先程まで騒がしかったこの場所も、シンと静まり返り戦意喪失する兵士達。
どうやらここまでか、と悟ったのか振りかざしていた剣を次々に下ろしていく。
エレオノールも静かに剣を収めた。
「城門を開けてくれ。」
「…はい。」
あれほど頑なだった城門がすんなりと開門する。
城から出る間際、アルスラーン殿下は一人の兵士になにかを訪ねていた。
近くにいたナルサスが気づく。
「殿下どちらへ?」
「せっかくここまで来たのだ。ホディールの奴隷達を開放してやろう。今、奴隷小屋の場所を聞いた。」
「……。」
兵士に案内され、やってきたのは城下のはずれの廃れた小屋の集落だった。その間もナルサスは一言も言葉を発さなかった。
エレオノールはそれを不思議に思った。
『(アルスラーン殿下の奴隷開放はナルサス様自身も賛同しておられたはずなのに…。)』
どうしてこうも顔色が暗いのだろうか。
エラムも始終、主人であるナルサスの顔色を伺っていた。
奴隷小屋についた時、アルスラーン殿下はダリューンだけを伴い小屋に入っていく。殿下の馬の手綱を預かりながらその様子を遠くからエレオノールは見ていた。
すると急に騒がしい雰囲気を感じたと思えば、ダリューンがシャブラングに乗ったまま殿下を左脇に抱えてこちらに走ってきたではないか。
さらにその後ろを奴隷達が鍬やら、棒切れやらを振り回しながら追いかけてくる様子が見えたのだ。
『一体何が…っ、ダリューン様!』
「エレン!このまま城を出よう!」
結局城壁の門近くまで奴隷達に追い回されることになった。
後ろを振り返ると彼らが、逃げるな!殺してやる!などと殿下に向けて暴言を吐いていた。
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