第6章
夢小説設定
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初めてその傷を目にしたときより少し治りかけているそこに優しく傷薬を塗る。
ファランギースは気になっていたことを口にする。
「これは火傷の跡か?」
『はい?』
「ずいぶん古いもののようじゃが。」
『…。幼いころについたものです。火事で…、もう十六年も昔のことです。』
「そうか…。」
その時ファランギースはなんの疑問にも思わなかった。
十六年前の火事で負った火傷の跡。
ただそれだけだと。
はたしてそれが彼女の何を示しているのか…。
『精霊はなにか申しておりましたか?』
「ざわついておったわ。なにか事が起きそうじゃな。」
『やっぱり…、』
「なにか知っておるのか?」
『城内の雰囲気が物々しい様子でした。それと剣と甲冑の気配が。おそらくなにか良からぬことを企んでいるのでしょうね。あのホディール卿は…。』
やはりな、と言わんばかりにファランギースはため息をついた。それはいつもため息をつかれるギーヴに対するものよりさらに深く、長い。
ふと二人は窓の外に気配を感じ、立とうとしたエレオノールをファランギースが手で静止させる。
ギィ…と開いた窓の外にいたのは…、
「ふっふ。」
「…。」
ギーヴだった。
ここ一番の決め顔をファランギースに向けていたのだが、視界に入った人物につい目を見開いた。
「おやおやこれは。幸運の女神アシがご加護をたれたもうたか。」
『はい?』
「お主…、」
一体ギーヴがなんのことをいっているのかさっぱりわからなかった。
「精霊が窓から足を出せ、とささやいておる。」
「待て待て待てファランギース殿!」
ぎちぎちとファランギースのお御足がギーヴの顔面を捉え、突き落とそうとしていた。さすがのギーヴもこの高さから落ちてはひとたまりもない。
「いい加減お主も服を着らぬか。いつまでその格好でおるのじゃ。」
『――っ!!』
声にならない悲鳴を上げたエレオノール。
ギーヴの反応の理由がようやくわかったのだ。
エレオノールはファランギースに背中の傷に薬を塗ってもらっていたため、上半身になにも衣をまとっていない状態だった。前はかろうじて布切れで隠していたがそれ意外は丸見えだった。
父にすら見せたことが無いというのに。
あったらそれはそれで問題かもしれないが。
『(よりによってギーヴに…!!)』
まさかギーヴに裸を見られるとは!!
裸といっても背中や肩だけなのだが。
顔を真っ赤に染めながらすばやく衣服を着、甲冑もまで着用したエレオノールはそのまま剣を抜き、ものすごい剣幕でギーヴに向けたのでさすがの彼も冷や汗が流れたのだった。
「で、一体なんのようじゃ。」
「軍師殿から伝言だ。」
『なら窓からではなく入り口扉から入って来なさいよ。』
「窓から色男が入って来たほうが趣があるだろう?それに“良いもの”も見れたしな。」
『〜〜っ。次に同じことしたらただじゃおかないから。』
「こわいこわい。」
「お主、エレンをからかうのもたいがいにせぬと首が危ないぞ。…で軍師殿の伝言とやらは、どうやらエレンが先程申した事と精霊が騒いでおるのと関係あるようじゃな…。」
ファランギースの目線の先は城門の方で集まり出したパルス兵の姿。
こんな時間に兵を動かそうとは…。
「わかりやすいねぇ、ホディール殿。」
『ナルサス様の伝言はいつでもこのカシャーン城塞を出られるように、でしょう?ギーヴ。』
「あぁ。殿下がお声をかけるそうだ。それ合図にここを出ると。」
「承知した。」
ギーヴは再びダリューンらがいる部屋へバルコニーを渡って戻っていった。ちなみにアルスラーン殿下もそうやってダリューン達がいる部屋にいったと聞いた。…意外にやんちゃなことをされる王子様なのね。きっとダリューン様を驚かせに違いない。
* * *
「世話になった。いずれ今日の食事の礼はさせてもらう。…だがもうお主に味方になってほしいとは思わない!」
「で、殿下お待ちを!」
ギーヴの言う通り、廊下が騒がしくなってきた。
アルスラーン殿下とホディールの慌てた声がする。
「ダリューン!ナルサス!ギーヴ!エレン!ファランギース!エラム!起きてくれ!すぐにここを出る!」
「―ご命令をお待ちしておりました。」
待ってましたと言わんばかりにダリューン達がそれぞれの部屋から出発の出来る装いに見を包み、現れる。
『すぐに鞍の用意をいたしましょう。』
「このような場所に長居は無用と存じます。」
「いい女もあんまりいないしね。」
さっさと城を出ていこうとするアルスラーン一行をホディールは慌てて追いかけた。
「お待ちくだされ殿下!話を聞いてくだされ!」
「ホディール。」
「その者共は忠義面して殿下を邪な道に誘い込もうとしておるのですぞ!許しがたい悪人共でござる!」
『ホディール卿、人聞きの悪いぞ。』
「それはお主の方だろう、ホディール。」
ダリューンの鋭い眼光がホディールを見下す。
「殿下を傀儡にしそこねたからといって八つ当たりするのはやめてほしいものだな。」
「〜〜っ!!」
考えが図星だったのか、これでもかというくらい頭に血を上らせ、顔が真っ赤に染まるホディール。それでもなんとかこらえ、ぎこちない笑顔をつくる。
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