第6章
夢小説設定
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『あ。…ダリューン様っ、なにをするのですか。』
エレオノールの皿を横取りしたのは隣に座るダリューンだった。
何故か不機嫌そうなお顔をしている。
すると彼は肉料理を盛った別の皿をエレオノールに差し出したのだ。
「野菜や果物ばかり食べてないで肉もちゃんと食え。それでは治る傷も治らんではないか。」
『えー…。』
これは予想外だった。
というか私ってそんなに野菜しか食べてないのかな…。
えー、といいつつ強引に差し出された肉料理の乗った皿を受け取り見つめるエレオノール。
「騎士は体力が命だ。野菜だけでなくしっかり食え。」
『私も好きなものを食べたいです。』
「だめだ。選り好みするなど十年早い。」
「お主ら、"夫婦喧嘩”はよそでやらぬか。」
「ナルサス!!」『ナルサス様!』
ダリューンの反対隣に座っていたナルサスがまさかのとんだ爆弾発言したのだ。
ダリューンはどう思ったのかわからぬがエレオノールにとっては大ダメージ。顔を真っ赤にして縮こまるしかなかった。
『(ふ、夫婦だなんて…っ、む無理っ!!)』
頭が容量オーバーである。
殿下は殿下でホディールからぜひ自分の娘をお側にお仕えさせていただけたら…、ととんでもないことを言い出す始末。王太子妃にと言われ、口に含んだザクロシャーベットを盛大に吹き出していた。
その様子をギーヴは面白そうに見ていたのだった。
と、まぁ話を戻し。
今後のルシタニアについてのことだ。
「それで…、憎きルシタニア兵に一矢報いるため、どうなさるおつもりですか?」
「…我々は今も苦しんでいる王都の民達を救わなければならない。私は自らの志と真を示し、すこしでも多くの援軍を集めるつもりでいる。」
ホディールは感心したような声をこぼす。
「そのため、いままでパルスの政治で条理に合わぬ悪政を正すつもりだ。まず、奴隷を解放しようと思う。」
『――…。』
アルスラーン殿下…。
その言葉を聞いた時、胸の奥から何かが込み上げてくるような感じがした。
熱い、なにかが。
きっとこの方ならそれをしてくれるのではないかと、初めてお会いした時思っていたのかもしれない。
一拍おいてホディールも感動したような声を上げた。…妙にその間が怪しい。
「…なるほど。それが殿下のお考えですか。さすがですな!」
「あぁ。賛同してもらえるだろうか?」
「もちろんですとも!流石は殿下。革新的なお考えをお持ちだ。」
公的な場ゆえ、ホディールは殿下にあのように返しはしたが、このカシャーン城塞には多くの奴隷がいる。アルスラーン殿下の志に賛同するとういことはその奴隷たちを開放するということ。
はたして彼は本当にそれをよしとするだろうか。
この場ではそれ以上口を出すことも出来ず、小さな宴はお開きになった。
一行は休むべくそれぞれの部屋を案内される。
最初に案内されたのはアルスラーン殿下のお部屋だった。
「では殿下はこちらのお部屋へ。ファランギース殿とエレオノール殿はそちらへ。あとの方はあちらへ。」
アルスラーン殿下一人、女性陣、男性陣と見事に文句の言いようのない組み合わせで部屋割されてしまった。
もちろんそれに意義を唱えるのはもちろんこの男。
「待て。私は殿下のお側を離れるわけにはいかぬ。」
「そうおっしゃられても…、この部屋には夜具が一つしかありません。」
「床で休むこともいとわぬ。」
「ですが…、」
どちらも食い下がらず、平行線のままだったところへナルサスがダリューンをなだめた。
「ダリューン。ここは…、」
「――…。しかたあるまい。殿下、なにかありましたらすぐお知らせください。」
「わかった。」
ダリューンの心配などどこ吹く風。
アルスラーン殿下は一人案内された部屋へと入っていき、それを見届けたダリューンらもそれぞれ与えられた部屋へと入っていったのだった。
それからしばらくして、殿下のお部屋にホディールが訪れていたことをエレオノールは知らない。
入浴を済ませたあと、城内の医務室に訪れ傷薬をもらい、先程の部屋に戻る最中のことだった。
『(城内の雰囲気が物々しい…。)』
幾度となく感じてきた空気は戦の前のそれを同じであった。
剣と甲冑の気配はそう簡単には消せないものだ。
姿こそは見えないが、おそらくはあちこちに兵を配置させているのだろう。
ホディールめ…、殿下の奴隷開放という改革を表向きは賛同する振りをして最初から素直に受け入れる気はなかったということか。
『ま、別に期待はしてなかったけれど。』
そう呟きながら、エレオノールはファランギースがいる部屋へと戻ってきた。そこでは桶に張った水を眺める女神官様の姿。
真剣な表情でなにかを見ているようだった。
『なにをしているのですか?』
「…
『薬を貰いに。』
なるほど。と納得した様子のファランギース。
そんな彼女の前でエレオノールは恥ずかしがる素振りもなく、するすると衣服を脱ぎ始めた。
あらわになった白い肌。その背には似合わない痛々しい斬り傷。
もらった薬を塗ると察したファランギースは彼女の背後にまわり薬を受け取った。
「一人では難しかろう。塗ってやろう。」
『ありがとうございます。ファランギース、様。』
「…。」
いつまでたってもファランギース様と呼ぶエレオノールに少しばかり不機嫌な顔をしてみせたのだった。
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