第6章
夢小説設定
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朝食をすませた一行は隠れ家を後にした。
馬を東へ走らせていた昼下がり。
城下の商人に頼んでおいたエレオノールの馬と荷物を受け取り、カシャーン城塞を目指し移動する。
久しぶりの甲冑と愛馬・ヴァナディールについ感激するもつかの間、後方からルシタニア兵が追いかけて来るのが見えた。
まだ追いつかれるほどではないがそれも時間の問題だ。ナルサスの提案で馬の足が早いダリューンとエレオノールにカシャーン城塞へ先行してもらいパルス兵を連れてくるよう指示を出した。
『ファランギース様、私の矢をお使いください。』
「あぁ。すまんな。」
『いいえ、ではまた後ほど!』
「ダリューン、エレオノール頼んだぞ。」
「あぁ!行くぞエレオノール!」
『はい!』
殿下をナルサス達に任せ、ダリューンとエレオノールの二人は先駆けてカシャーン城塞を目指した。
カシャーン城塞は自然の要塞である。高い城壁の周りをさらに崖がぐるりと城の周りを一周するようにして囲んでいる。
城への出入り口は崖に出来た亀裂の隙間のみ。
荷馬車は平気で通れるがそこさえ守りきれれば、難攻不落の城である。
そのカシャーン城塞へ辿りついたダリューンとエレオノールは城主・ホディールに謁見後、兵を動かす許可を得た。
百人ほどの弓兵を借り崖の上へと待機させる。
その指揮を取るのはエレオノール。
「俺は殿下をこちらへ避難させ、ルシタニアを誘導してくる。ここは任せてよいか?」
『わかりました。なるべく太陽を目指して向かってください。』
「太陽?」
『はい。もうまもなく日が沈みます。夕日というのは敵の目を眩ませやすいのです。私達に有利になります。』
「なるほど。わかった。」
『お願いします。ダリューン様、お気をつけて』
あぁ、とだけ言い残しダリューンは主の元へ馬を走らせていった。
その間にエレオノールは預かった弓兵と共に配置に付きに指示を下す。
『敵はあのルシタニアだ。だが全滅させる必要は無い。追い返すことが出来ればそれでいい。無理に矢を当てずともよい。今は追い風だから距離を見誤るな。』
「はっ!」
『よし。みな位置につけ。私が合図を出す。』
その時はすぐにやってくる。
ドドド…、と大地が揺れだした。
ルシタニアの軍勢がここカシャーン城塞に向かってきているのだ。
それはだんだん強く激しく大地を踏みしめる。
その軍勢を視界に捉えた時、先頭をダリューン、そしてアルスラーン殿下達が必死に追いつかれまいと馬を走らせていた。
そのすぐ後ろをルシタニア兵が追う。
エレオノールは隠していた身をすっと立ち上がらせる。夕日を背にルシタニア兵を見下ろした。
「エレンー!」
凛々しいその姿は敵ですら目を惹きつけてしまう。
その姿を見たアルスラーンが嬉しそうに叫ぶ。
『弓兵、構え!!』
エレオノールが右手を挙げる。
その合図で同じく身を隠していたパルス兵が一斉に姿を表した。鳴り響くパルス軍の角笛がルシタニア兵を動揺させる。
『王太子殿下を守り参らせよ!放てー!!』
ひゅんひゅんと無数の矢の雨がルシタニア兵に降り注がれる。
突然の矢の雨に馬が足踏みする。
反撃しようにも夕日で目は眩み、向かい風によってこちらの矢は跳ね返され、これ以上の深追いは危険と判断したルシタニアは脱兎の如く引き返していった。
「「おぉーー!!」」
勝利を収めたパルス兵が雄叫びを上げる。エレオノールは崖下にいるアルスラーン殿下に手を振った。怪我もなく無事なようで彼も手を振り返してくれる。
『殿下ー!』
「エレンー!」
無事ルシタニア兵を追い払ったアルスラーン一行はカシャーン城塞へ入城。事なきを得るのであった。
しかし入城を果たしたはいいのだがそこで待ち受けていたのは媚びへつらう城主・ホディールの接待であった。
「アルスラーン殿下。よくぞおもいお越してくださいました。このホディール感謝に耐えません。」
ホディールのふくよかな体型がこのカシャーン城塞での羽振りのよさを感じさせた。
加えて裏のありそうなその笑顔。
しかし殿下もまだ幼い。彼の腹の中など想像もつかぬだろう。
「お礼を言わなければならないのは私のほうだ。先程の援軍、感謝する。」
「もったいのうございます殿下。私といたしましては、アトロパテネでの敗北を知り国王陛下と王太子殿下のご安否を気遣っておりました。ですが私一人の力をもってしてはルシタニアの大軍に復讐戦を挑むすべもなくただ心を痛めるだけでごさいました。」
つらつらと言葉を並べるホディールにそろそろ飽きてきたなーと思い始めるエレオノール。
ホディールの弁解は続き、ダリューン様とエレオノール殿が…うんぬんかんぬん。
『(よくもまぁ、すらすらとそんな言葉が出てくるものね…、)』
明らかに殿下のご機嫌を取ろうとしている言葉が息をつく暇もなく立て流すカシャーン城主。
呆れながらエレオノールは用意してくれていた食事にそっと手を出した。
向かいの席でもギーヴがファランギースに耳打ちしているところを見ると同じことを思ったに違いない。
「ファランギース殿、あの男のことどう思う…?」
「…よく喋る男じゃ。舌に油でも塗っているのであろう。…しかもあまり質の良くない油のようじゃ。」
「まったく…。語るに落ちるとはよく言ったものだ。」
「誰かのようにな。」
「…。」
今日も今日とてギーヴへのファランギースの毒舌が炸裂するのであった。
ホディールの止まらぬ世間話に苦笑いしつつ、受け答えするアルスラーン殿下。交われるものならかわって差し上げたいが、実際あのホディールという男の相手をするのもぜひ辞退したものである。
そんなことを考えながらエレンは皿に色とりどりの野菜や果物に手を出した。
美味しそう、と思っているすっと横から手が伸びてきてその皿を奪ってしまう。
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