第5章
夢小説設定
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「少し気になることがある。」
「気になること…?」
ファランギースの言葉を繰り返し聞くダリューンに先程の手当した際の様子を語った。
「背中の斬り傷…、倒れた原因はそれで間違いなかろう。だが、その下にさらに火傷のような痕があっての。」
「火傷…?」
考えこむ仕草をするナルサス。
エレオノールの背中には火傷の古傷があり、その上をさらに剣で斬られたという。
「見たところ、かなり古いもののようじゃ。その火傷を負った時まともに手当てせなんだのだろう。おそらく一生消えぬ傷跡じゃろう…。」
「一生…。」
「ダリューンよ、お主なにか知っておるか?」
「いや…。エレンと初めて会ったときはすでに14か15になっていたかと…。それ以前のことはなにも。たしかサーム殿の娘とは言うが血の繋がりはなく養子だそうだ。」
「養子?」
あぁ。とダリューンは首を縦に振る。
初めて会ったのは王宮でサーム殿に連れられてきていた。まだ子供の面影が残る控えめな少女だった。
次に会った時は父親のサームと派手に喧嘩をした時だっただろうか。
顔を合わせれば声を掛け合うほどの仲ではあるが、案外あの娘について何も知らぬのだな、と思うダリューンであった。
ファランギースはほかにも感じたことがあった。
あの娘の周りに精霊が集まっており、あの者の存在を喜んでいるかのようだった、と。
「まるであの娘が神の御使いか、生まれ変わりかのように…。」
「あるいは神の愛娘、か。」
「ナルサス、それはなんだ?」
聞き慣れぬ単語にアルスラーンが聞いた。
「神が特別に愛しておられるゆえ、幸運の持ち主と称されるもののことです。」
「幸運、か…。」
エレオノールが幸運であるかどうか。アルスラーンには思い当たるふしがなくもなかった。
彼女がアルスラーンの元へ来たことも果たして幸運か、それとも…。
* * *
翌朝。
『う…、』
小鳥の鳴き声と、背中に走った鈍い痛みで目を覚ます。
ぼーっとする視界がとらえたのた古ぼけた床の板。そして所々穴が空いた天井。そこから清々しいほどの朝日が差し込んできた。
えーっと。私はいったいどうなったんだっけ。
たしか…、王宮でルシタニアと戦って…。あ、負けたんだ…。それでエクバターナを脱出しようとして逃げたけど銀仮面の男に見つかって、殺されそうになったところをダリューン様が助けてくれたんだっけ…。
それで一緒に…、
『――!!』
――っ!!
声にならない悲鳴が朝食の準備をしていたアルスラーン一行のもとにも届いた。
「な、なんだ今のは?」
「おそらくエレンかと。」
「様子を見て参りましょう。」
驚いたアルスラーンに対し、冷静に返すのはナルサスとファランギース。
言葉通り、エレオノールの様子を見に行ったファランギースに目に映ったのは、急に動いたせいで激痛を味わったであろう彼女の姿。
痛みにうずくまり、目には少し涙が溜まっていた。
やれやれ、と思いながら近づくファランギースにエレオノールはゆっくりを顔上げた。
この絶世の美女はいったい誰だろう、と思いながら。
『あ、あなた、は…?』
「急に動くでない。私はミスラ神殿に仕える女神官(カーヒーナ)、ファランギースという。」
『女神官様、』
「気分はどうじゃ。熱は下がったようじゃの。」
『ありがとうございます。たいぶ楽になりました。』
どうやらさっきの悲鳴は急激に身体を動かしたために激痛が走ったようで、ゆっくり動かすのにはなんてないようだ。
「動いても平気か?」
『もう大丈夫です、女神官様。』
「ファランギースでよい。」
見た目によらず喋り方がすこし変わってる彼女を名で呼ぶのにはいささか抵抗があった。
エレオノール自身も信仰心のある身ゆえ、神殿にお仕えしているファランギースを名で呼ぶのにはまだまだぎこちなく、勇気を振り絞ってなんとかファ、ファランギース、様…、と小さく囁くように呼べば、様、もいらぬと難題を押し付けてくるものだから今はこれで精一杯だから勘弁して欲しい、と嘆くのであった。
『アルスラーン殿下!』
「!エレン!!」
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