第5章
夢小説設定
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エクバターナを脱出したダリューン、ナルサス、エレオノールの三人。
夜通し馬を走らせ、ようやくアルスラーン殿下が待つ隠れ家に帰還する。
「ダリューン!ナルサス!」
「殿下!ただいま戻りました。」
「あぁ。二人共怪我はないか?」
戻った二人にアルスラーンが近づく。
馬から降りたダリューンが軽く頭を下げた。
「問題ございません。殿下、エクバターナでのご報告の前にお伝えしたいことが。」
「なんだ?」
顔を上げたダリューンを見上げるようにして首を傾げるアルスラーン。
ダリューンは馬に乗ったままのナルサスに目配せし、後ろに乗せている者を見せた。
「その者は…、」
「エレンにございます。エレン、アルスラーン殿下だ。」
『……。』
「エレン!?」
驚いたように声を上げたアルスラーン。
しかしその声にも、ダリューンの呼びかけにもエレンは応じる気配がない。
不審に思い、ダリューンが近づいたときふらっ…と彼女の身体が傾いた。ナルサスの身体に強く抱きつくようにして回していた腕が突然力をなくしたように解けていく。
危うく落馬寸前だったエレンを受け止めたダリューン。その時、事の深刻さに気がついた。
身体が異常なほど発熱していたのだ。およそ人の体温とは思えないほど。
「おい、しっかりしろ!」
「ダリューン様、どうされたのですか!?」
慌てた様子のダリューンにナルサスの侍童・エラムが駆け寄る。アルスラーンも心配そうに顔を覗き込んだ。
その時、エレオノールの目がうっすらと開いた。
『アルスラーン、殿下…、』
「あぁ、私だ!しっかりしろエレン!」
うっすらと開いた視界によく映える銀色の髪と澄んだ碧い瞳。間違いない、アルスラーン殿下だ。朦朧とする意識の中、心の中にずっと引っかかっていたなにかが取れたような。そんな気分になった。
『(よかった…、ご無事で…、)』
その声は本人には届くことはなく。しかしその顔はとても穏やかで安心しきったものだった。
エレオノールは今一度、ダリューンの腕の中で意識を飛ばしたのだった。
「酷い熱じゃ。」
そう言ったのはナルサス、エラムがアルスラーン一行に加わったのち、新たに傘下になったファランギースというミスラ神殿の女神官。またの名を絶世の美女、である。
彼女のことをそう呼ぶのは、同じくおまけで傘下?になった旅の楽士・ギーヴと名乗る赤茶色の髪の色男だ。
すこし垂れ目気味の目が隠すことなく色気を放ち、多くの女性を虜にしてきた伝説(自称)を持つ。
「ファランギース殿、すまんが診てやってくれぬか。怪我をしているとナルサスが言うのだが…。」
「ナルサス卿が?わかった、任されよ。」
ダリューンからの頼みに二つ返事で返すファランギース。ついでにエラムにも手伝ってもらうことになりダリューンはエレンを隠れ家の一室の床に横にさせ、あとは女性に任せようとその場を後にする。
任されたファランギースは取り敢えず、目の前に横たわる娘の衣服を脱がせた。
そこで目にしたのはドクドクと赤く膿かけている斬られたであろう斬り傷。
治療は施されたようだが、そこからさらに悪化したようで見るに堪えないものになっていた。
「この傷でようここまで来たものじゃ。」
「ファランギース様、どうですか?」
「エラムよ、薬を塗るので包帯を巻くのを手伝っておくれ。」
「わかりました。…しかし酷い怪我ですね。」
普通なら死んでもおかしくない傷だ。
しかしファランギースにはそれよりも気になることが。
「(火傷…の痕であろうか…。かなり古傷のようじゃが…。)」
斬られた傷の下にあるただれた痕。
薄れてはいるが、間違いない。火傷による傷跡だ。おそらく幼い頃に負ったもの。
エレオノールの上体を起こし、ファランギースが支えながらエラムが包帯を巻く。施した治療のおかげで楽になったのか先程よりは顔色がましになったように思える。
治療を終えたファランギースとエラムは向こうで待つアルスラーンの元へ戻った。
二人に気づいた銀髪の少年は不安そうな顔で戻った二人を交互に見る。
「エレンは?」
「心配ありません殿下。今は安静に、よく眠っております。」
とファランギース。
「背中に斬り傷がございました。幸い出血は少なく。ここまで無理に動いたのが身体に障ったようにございます。」
エラムのその言葉にアルスラーンは緊張がほぐれたようにはぁと息を一つはいた。
「ファランギース殿、感謝する。」
「気になさるな。…しかしお主ほどのものが気に掛けるとは、よほど大事な御仁のようじゃな?」
「あ、いや…、」
まさかの返しに口がどもるダリューン。
隣でくっく、と肩を揺らすナルサスがフォローになっているのかなっていないのかよくわからない説明をする。
「彼女は万騎長サーム殿のご令嬢だ。勇敢なパルスの騎士でもあるゆえ、まぁこやつの後輩?ともいえるか…。」
「ほう…。おなごの身でありながら騎士とは…。変わっておるようじゃの。」
「深層の姫君でありながら騎士でいらっしゃるとはなんとも健気な方よ。」
舞台のセリフっぽくギーヴが言葉を並べるのをファランギースはうんざりした様子で横目で睨んだのだった。
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