第28話
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
エレンが知恵熱を出し、寝込んでいる間にラジェンドラ国王陛下がカーヴェリー河を渡河し、ここペシャワール城へお越しになった事を彼が帰ったあとで聞かされる。
彼からの情報によると、トゥラーン軍はパルス国を撤退しシンドゥラ国領内を行軍していた所を背後から攻め、糧食を根こそぎ奪ってやったのだと意気揚々と自慢する。
そのあと酒宴にも参加せず(愛しのファランギースが不在の為)、颯爽とペシャワール城を出て国に帰っていく彼の姿を城内の窓から眺めるエレンとギーヴ。
彼には以前かなりきつく脅したことがあったため、ラジェンドラはファランギースに会いたがっていたがそこにエレンの名は上がらなかったそうだ。ナルサスがからかってエレオノールならおりますが、というとそれは面白いほど顔を青ざめさせ、う、うむ⋯。と視線を反らすので笑いを堪えるのが大変だったそうだ。
「なんだ。もう帰ったのかあの軽薄王。」
「“麗しのファランギース殿がおらぬので帰る”態度がありありだったぞ。」とナルサス。
そこにはエレンとギーヴ、ナルサスの他にダリューンとクバードもおり。一緒に遠のくシンドゥラ軍の隊列をやれやれと言わんばかりに眺めた。
「さっさと王都に帰って“パルスと共闘し、草原の覇者トゥラーン軍にとどめを刺した強き国王ラジェンドラ”と吹聴してまわりたいのだろう。」
「なんなら“トゥラーン国王を倒したのは俺”くらいのデマも飛ばしそうだな。」
『それは十分、ありえるわね。その結果、収集がつかなくなって足元をすくわれる、というところまでがシナリオね、きっと。』
なんなら困り果た末、アルスラーン殿下の元へ助けを請いにくることになるかもしれない。⋯そこまで想像がついてしまうのは彼のお人柄というものなのだろう。
エレンが考えたシナリオに違いない、とギーヴは笑った。
「未だ国内にくすぶる反ラジェンドラ派を抑えるためだろうが、あやつの名声を上げるために利用されたようで不快極まる。」とダリューン。
「言わせておけばよい。」
嫌悪の態度を示すダリューンにナルサスがなだめる。
「シンドゥラが追い打ちをかけたことでトゥラーンからの怨みの矛先がパルスとシンドゥラに分割されたのだ。こちらにも得はあろうよ。」
そう判断したのは腐っても万騎長のクバードだ。
ほぅ、と失礼ながらも感心した顔で見上げるエレン。
さて、とようやくトゥラーンの件が一息がついたところでナルサスは本題に入る為ギーヴに視線を向けた。
「ギーヴよ、旅の報告があるのだろう?」
「やっとか。――デマヴァント山でヒルメス王子に会った。宝剣ルクナバードをカイ・ホスローの墓から持ち出そうとしていた。」
『――!?そんなっ、まさか!』
「なんだと!?」
「ヒルメス王子が!?」
ギーヴが持ち込んだ情報にエレン、ダリューン、ナルサスも驚きを隠せない。聞き覚えのある名にクバードも俺も会ったぞ、とギーヴに話した。
「俺はザーブル城でボダン討伐でヒルメス王子に手を貸したのだ。」
『ギーヴ、それはいつ頃のこと?』
「ちょうどトゥラーン国王軍がペシャワールへ向かうのを見かけた時期だったので一週間ほど前だったな⋯。」
『ということはクバード様と共にザーブル城を攻略した後⋯。』
「詳しく聞かせてくれ⋯。」
ナルサスの言葉にギーヴは頷いた。
* * *
旅の委細をギーヴから聞いたナルサス。
ギーヴ、クバードと別れた三人は廊下を歩く。
「ヒルメス王子が宝剣ルクナバードを英雄王の墓から掘り出そうとはな。」
「どう思うナルサス。」
「ヒルメス王子は焦っておいでなのだ。事がご自分の考え通りになかなか運ばぬ上、ルシタニア軍もこのところ精彩がない。」
『その一方でアルスラーン殿下の元には将兵が続々と集まり戦果を上げている⋯。』
ついに宝剣の威を借りる気になったのであろう。と呟いたナルサス。
しかし、とダリューンは疑問が浮かぶ。
「サーム殿がついていてそれを許すだろうか?」
「それなのだ。⋯エレンはどう思う?」
ナルサスとダリューンの視線が彼女に向けられる。
エレンは、んー、と考える素振りをし、思うことを正直に語った。
『カイ・ホスローの墓所は父だけでなくパルス国の民ならば手を出してはならないと誰もが知るところのはず⋯。それを王家の血を引くあの人がしようとは正直考えられません。なにか事情があってのことなのでしょうか⋯。』
「覇気ある御人ゆえ、最初から宝剣に頼るとは思えぬし⋯、サーム殿やザンデのようにパルス王家に尽くす者が英雄王カイ・ホスローの墓を開けることを勧めるはずがない⋯。」
『では、パルスの者ではない誰かが⋯?』
一つの推測が浮かび上がる。
ヒルメス王子が先祖であるカイ・ホスローの墓を開け、宝剣を手に入れようとした原因が⋯。
「誰ぞ、ヒルメス王子をそそのかした奴がいるのかもしれんな⋯。」
ヒルメス王子が宝剣ルクナバードを手に入れようとした理由はなんなのか。結局、それ以上のことはわからず。この話はここで終わりを告げた。
そしてまた平穏な日々が過ぎていくのだった――。
.