第4章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ふん…。飼い犬とへぼ画家か。お似合いだな。」
「―!!貴様ぁ!!」
銀仮面卿の言葉が癇に障ったのか、一直線に攻撃をしかけるナルサス。その一撃はなんなくかわされ、翻した剣先がナルサスを引き裂こうと振り上げられる。しかしそれを受け止めたのはダリューンだ。
二対一と銀仮面卿が不利なのにも関わらず、彼はひるむ様子もなく二人をなんなく相手にする。
なんと恐ろしい男である。
見た感じナルサスという男の剣術もそのへんの俄仕込みとは違う。それに加えてダリューンもいるというのにだ。
しかしこの対決、そう長くは続かなかった。
騒ぎを聞きつけたルシタニア兵が集まり始めたのだ。
気づけば周りはすっかり囲まれていた。
『(まずい…。)』
「ここは一旦引いた方が良さそうだ。」
「…あぁ。」
すんなり剣を収めたダリューンとナルサス。
ルシタニア兵は二人を逃すまいと追いかける。
しかし銀仮面卿はその場から動くことはなく。それが幸いとも言える。逃走を図る二人をその場からただじっと見ていたのだった。
『(私も、逃げないと…っ)』
手すりに掴まりなんとか立ち上がろうとするが、朦朧とする頭に身体は追いつかず。
すぐ膝からくずれ落ちてしまう。
するとそこへダリューンが駆け寄り、少々荒っぽいがエレオノールをひょいと肩に担ぐようにして持ち上げたのだ。
『きゃ…っ』
「すまん、すこしじっとしてくれっ。」
そうダリューンが申し訳無さそうに言いながら追ってくるルシタニア兵から逃げるのであった。
その様子を隣を走るナルサスが始終ニヤニヤしながら見ていたことは気づかぬフリをした。
銀仮面卿と一戦交えた後、これ以上ここにいるのは危険とナルサスが判断し、エレオノールも共に連れ三人はエクバターナを後にしたのだった。
「やつめ、恐ろしく腕が立つ。お前が来なければ危ないところだった。」
愛馬・シャブラングにエレオノールを乗せ走らせるダリューンとナルサス。
「そんなことはどうでもいい!あいつ俺を“ヘボ画家”呼ばわりしたんだぞ!気に食わん!!」
「……。」
親友の命より、“ヘボ画家”呼ばわりされたことの方がたいそうご立腹な様子のナルサスになんとも言えない表情をするダリューン。
その表現はあながち間違ってはいないと、口にしてしまいそうになったが今は言わないでおこうと胸にしまった。
『ぅ…っ、』
「!…ナルサス、ちょっと止まってくれ。」
「どうした。」
エクバターナから逃げる際、ついに意識を飛ばしたエレオノール。
ダリューンにもたれるように預けていた身体が小さく身じろいだのだ。どうやら目を覚ましたらしい。
小川のほとりで馬を止め、近くにあった木に彼女を座らせる。ナルサスが小川の水で濡らした手ぬぐいで顔に滲む汗を吹いてあげた。
思いがけないひんやりとした感覚にエレオノールの意識も徐々に覚醒する。
『…っ、あ、あなた様は…、』
ぼんやりした視界が徐々にクリアになった時、真っ先に目に映ったのが手ぬぐいを持ったナルサスだった。
この人はたしかさっき銀仮面卿と戦っていた…、
「ナルサスだ。」
『ナルサス様…?』
ふわりと微笑むその眉目秀麗な顔はいったい幾人の女性を虜にしてきただろう、なんてぼんやり思った。
「心配するな。ダリューンとは旧知の友だ。」
あのダリューンがわざわざ助けるほどの相手だ。ダリューンとエレオノールの間になにかしらの交流があると考えたナルサスがそのように言えば私が安心すると思ったのだろう。
しかし私の頭はある言葉で一気に覚醒する。
ダリューン、と。
はっと視線を目の前の眉目秀麗なナルサスから立ったままでこちらを心配そうに見ていた黒衣の騎士へと移した。
『あ…、』
言葉にならない声が小さくこぼれた。
「大丈夫か?エレン。」
『ダリューン、様…、』
ずっと、聞きたかった声…。
夢じゃなかった。
生きておられた…。
思わず立ち上がり、ダリューンの元へ寄るエレオノール。おぼつかない足取りで、つまづいたその身体をダリューンは両手で支えた。
差し出されたその手にエレオノールはすがりつく。
『ダリューン様、ダリューン様…っ』
「お、おい…っ」
何度も名前を呼んだ。
夢ではない、と確信したくて。
差し出された両手をぎゅっと握りしめる。
泣いて、いたのだ。ぽろぽろと溢れる涙。
普段の彼女とは思えない取り乱しようにさすがにダリューンも戸惑いを隠せない。
『も、申し訳、ございませんっ。私…っ、エクバターナをお守りする、とダリューン様に…っ。』
「落ち着け。お主のせいではない。今回の戦はもうどうしようもなかったのだ。お主一人の責任ではない。」
『うぅ…っ、ヴァフリーズ様も、あのような…っ』
「ヴァフリーズ殿がどうしたのだ?」
落ち着かせるように彼女の肩に手を添えるナルサス。エレンは両手で顔覆い隠しながら言った。
『ルシタニア軍がヴァフリーズ様の御首を城外に…、』
「「――!?」」
その言葉にダリューンとナルサスは一瞬身体を強張らせた。
敗走し戦死した者の末路、その姿を想像してしまったからだ。
『ヴァフリーズ様だけではありません。万騎長マヌーチュルフ様や、ハイル様、他数名の万騎長の方々の御首までもが…っ』
「おのれルシタニアめ…。」
その悪逆非道っぷりに冷静沈着なナルサスも怒りをあらわにしたのだった。
.