第4章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
スラ…と剣の切っ先がエレオノールを捕らえた。
戦う術をなくしたエレオノールはその言葉に抗うことなく、しかしその目は決して屈した者の目ではなかった。
力でねじ伏せても、その心までは支配されないという彼女なりの小さな抵抗であった。
「命乞いをしろ。さすれば捨て駒にくらいはしてやろう。光栄に思うがいい。この正当なるパルスの王の繁栄の礎になれるのだからな。」
『断る。…貴様がパルスの正当な王ですって…?寝言は寝て言うことね。』
「――!!」
ザン!
容赦なく剣が振り下ろされる。
ひらひらと何かが宙を舞った。それが自分の髪だと気づくのが遅れた。左肩に流れていた栗毛色の髪が首あたりでばっさりと切り落とされたのだ。
「次は耳を切り落としてやろうか。それともひと思いに首を斬られるほうがよいか。」
『……。』
にらみ合いが数秒、続いたときだった。
キラリとなにかが銀仮面卿めがけて飛んできたのだ。
「――っ!?」
異常なほどの持ち前の反射神経で銀仮面卿はそれをかわす。キラリと光ったそれは剣先だった。
その持ち主を視線で辿ると…、
『ぇ…、』
「無事か!」
ダリューンだった。
暗くても、その声だけで誰だかわかる。
私は夢を見ているのだろうか。
声も、姿もダリューンその人。焦がれた人が今自分に背を向けた状態で目の前にいた。
『ダリューン、様…?』
「あぁ。遅れてすまなかった。怪我はないか?」
『はい…。問題、ありません…。』
「よし。…あの男は何者だ?」
たんたんと受け答えするもどこか上の空。
一体なにがどうなってここにダリューン様がいらっしゃるのだろうか。
質問に対して答えはしたが、ちゃんと答えられているのか、なんと返答したのか記憶が消え去るほどの驚きだ。
『あの男は、エクバターナにルシタニア兵を手引したものです…。』
「なに!?」
「…なに事か探っている者がいると聞いたが…、どうやらお前のようだな、」
「――!!」
刹那。一瞬でダリューンとの間合いを詰めた銀仮面卿。その勢いは凄まじく。
その一撃をなんなく受け止めたダリューンだったがその衝撃は背後にいたエレオノールにも伝わった。
『…っ!』
「く…、そこにいろ!」
『は、はい…っ!』
少しづつ離れていく二人を私はかろうじて意識を保ち、見ていた。
あの男、やはり手加減をしていたようだった。
くやしいが私なんかが相手に出来る者ではなかったのだ。
その様子がダリューンとの戦いでまざまざと見せつけられる。
ガンガンと剣と剣がぶつかり合う。
しかしエレオノールの耳にはその音が徐々にぼやけ、遠くになりつつあった。
これ以上はほんとうにまずい。
意識が飛びそうだ。
その視線の先では銀仮面卿がダリューンに向かってなにか言葉を発していた。それを聞いたダリューンは激変し、その怒りが剣先に現れていた。
ダリューンが放つ一太刀が銀仮面卿を真っ二つに切り裂いたのだ。…正確には彼の銀仮面を。
紙一重で攻撃をかわした代わりにカラン!…、と切り捨てられた仮面。
その下は己の手では隠しきれないおぞましい火傷の痕が残されていた。
「火傷…?」
「お、おのれ…ぇ、ダリューン!!」
「――!!」
さらされた火傷の痕に、銀仮面卿は怒り狂ったように剣撃をダリューンに放つ。一方で隠されていた火傷の痕を見て冷静さを取り戻したダリューンは襲いかかる猛攻を冷静にかわす。
「うおぉ!!」
「―っ!!」
――っ!
ダリューンに向けて強い一撃を食らわそうとしたときだった。
銀仮面卿の視界に鋭い切っ先が走る。
「…っ!?」
新手の登場にすぐさまダリューンから距離を取る銀仮面卿。
その視線の先にいたのはダリューンと共にこちらに剣を向ける男。
流れるブロンドの髪を右肩に流すようにそれを一つに結んだ眉目秀麗な男だった。
『(誰…?ダリューン様、の味方…?)』
ダリューンと肩を並べて銀仮面卿に剣を向ける男性をエレオノールはじっと見た。
するとふとその男がこちらに視線を向けたのでパチっと目が合ってしまう。ドキっと驚いた顔していたらふっと目がくらむような笑みを返してくるものだから、類は友を呼ぶ、という言葉が咄嗟に浮かんだのだった。
『(男前の友人は男前ってことかしら…)』
いやまだ友人とは確定してないのだが。
この人が一体どこの誰なのか私は知らない。
「おいおい、名前も聞いてはくれないのか?こちらから名乗るのは気恥ずかしいではないか。」
突如現れた男の少々芝居がかった言い方だったが銀仮面卿はめんどくさそうに誰だ、と尋ねた。
「では、改めて。我が名はナルサス!次のパルス王の世に宮廷画家を務める身だ!」
『……。』
「……。」
一瞬、間があった。
え、なんだって?
ここに来て宮廷画家になる身だなんて言われて、そうですかってなりません。
「…宮廷画家だと?」
「芸術に無縁なお主は知るまいが、画聖マニの再来と人は呼ぶ。」
「誰が呼ぶか!」
思わずダリューンも横から突っ込む。
その姿がいつも戦場や王宮で見かける彼とは違い、エレオノールはすこし新鮮だった。
.