第24章
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「報告します!!」
「『――っ!?』」
一人のパルス兵の伝令が慌てたように駆けてくる。
和やかな雰囲気から一変した。
「アルスラーン殿下の狩猟隊が偶然ルシタニア軍と遭遇。戦闘になりました!」
『殿下はご無事ですか!?』
「ナルサス殿とダリューン殿が向かいました!ナルサス殿よりエレオノール殿はこのまま聖マヌエル城への道を封鎖するようにとの伝令です!」
その内容にエレンはナルサスがこのまま聖マヌエル城を攻め落とす腹なのだと瞬時に理解する。
ヴァナディールの手綱を取り、すばやく乗るとエレンはザラーヴァント、イスファーン、トゥースの三人に伝えた。
『このまま聖マヌエル城を攻めます!御三方は部隊を整えて来てください!私は先に駆けます!――動ける者は私に続けっ!』
「はっ!」
瞬時に下された命令に呆気に取られるザラーヴァント、イスファーン、トゥースだったが迅速に命令に従う兵士達に意識を取り戻し、馬に乗り部隊を整えに走った。
先に駆けるエレンに続いて二十人程の騎兵が彼女を追う。
走り抜ける際、突き立てたパルス軍の白い王旗を手にし味方に分かるよう掲げ走り抜ける。
『見えた!』
「急げー!城へ入れー!」
城の城門が見えてきたとき、退散してきたルシタニア兵がちらほらと見え必死に城の中へと避難しようとしていた。
ここで彼らを足止めする。
手に持つ王旗を近くの兵に投げて渡し、剣を抜く。
襲われているとわかるとルシタニア兵はこちらに立ち向かってくる。
「パルス兵がここにも!?」
「少数だ怯むな!」
「女がいるぞ!」
少数なら勝てると踏んだのか、城内に逃げ込む進路を反転させてパルス軍と乱戦状態に入る。
一人のルシタニア兵の首を斬り裂いて落馬させたエレンは近くで押されている味方を襲う敵に向かって一矢を放つ。
『大丈夫っ?』
「あ、ありがとうございます!」
『慌てないでっ。』
はい、と気を引き締めた兵士に目をやると、次の標的を狙う。
剣を振り上げると、ぐんと三つ編みにした髪を誰かに引かれ、落馬しそうになる。なんだ、と振り返ると髪を掴んでいたのはもちろん敵であるルシタニア兵で。
「女がぁ!!」
『――っ!!』
刃がエレンを捕らえた。
しかし反射的に掴む腕を払い除け、ヴァナディールの鞍に両手をつき左足で思いっきり蹴り上げたのだ。ゴッ!と鈍い音と共に敵は馬から落ちて意識を失った様子を見届けたエレン。そのまま目もくれず再び敵の真ん中へと突っ込んでいく。
後方で追い上げるダリューンとそれに追いついたザラーヴァントら。
見慣れた揺れる三つ編みの髪と青い生地のそれが視界に入るとそれがエレンだと認識する。その髪を敵に捕まれるのを見て一瞬ひやりとしたが、容赦なく蹴り上げ相手をふっとばしたその様子に危うさなど微塵も感じなかった。その蹴り上げたあと再び乗馬の体制を整え、剣を振るう彼女に高揚感が湧き上がる。
いつかあなたと肩を並べて戦いたい――。
ふいにダリューンの脳裏にその言葉が蘇る。
まさに今がその時。
エレンの元へ駆けるダリューン。シャブラングで一駆けし、彼女のもとへ降り立つ。
「エレン!城を攻める!駆けるぞ!」
『――!⋯はいっ!殿下は!?』
突如、現れた黒衣の騎士の一声にエレンの心臓がどくんと跳ね上がる。殿下の安否が気になるエレンにダリューンは大丈夫だとだけ簡潔に伝える。それだけで殿下はご無事なのだと理解したエレンは一人の敵を沈めたタイミングで鞭を打ってヴァナディールを走らせる。
さらにその後方で追いついたナルサス。
エレンがちゃんと己の意図を汲み取って攻め入ってくれたことに満足そうに口元を上げる。
城へと逃げ込むルシタニア兵をパルス兵が追いかける。
まだ門が閉じられていないと踏んだダリューン。
「突入するぞナルサス!エレン!」
「おう!」
『はいっ!』
その声にヴァナディールとシャブラングは主の手綱捌きに従って、逃げ惑うルシタニア兵を飛び越え二人揃って門を潜った。
己の願いが一つ叶った瞬間だった――。
ダリューンと共に肩を並べて戦場で戦うという、一つの願い。
ふいに彼と目が合い、ふっと笑い合う。それはダリューンも覚えていてくれた証だ。
歓喜に震える間もなく切り替えて、エレンは剣を振るう。
敵に侵入されたことに動揺するルシタニア兵。どうもここのルシタニア兵は戦いに不慣れな感情が感じ取れた。しかし敵は敵。頭に過った思いを振るって消し、一斉に味方を引き入れた。
門を閉じよ、という城主の命令が出されるも何故か門は閉じることなく次々にパルス兵が押し寄せてくる。
それから決着はあっという間につき、戦いは一瞬にして終わった――。
あっけない戦いであった――。
「王太子殿下の御意である!降伏するものは助けよ!武器なき者は殺すな!命令に反する者は自らの生命をもって償うことになるぞ!」
「無駄に殺すな!我々は文明国であるパルスの民だ!」
略奪もならぬ、と固く命じる二人の万騎長。
戦いは終わったのだと告げる。
それに従い次々に剣を収めるパルス兵。喧騒は次第に静まり、辺りにはルシタニア兵の亡骸で埋め尽くされていた。
しかし恐ろしいのは敵の信仰心だ。
殺さぬから城主の居場所を教えろ、と尋ねても舌を噛んで自決するその意思の固さ。敵から慈悲など受けぬという意気込みはある意味恐ろしさも感じざるを得ない。
これでは降伏する者などいないかもしれぬ、とキシュワードは呟いた。
一方で、エレンは城の塔に立て籠もるルシタニア兵の親族がいると聞きつけその扉の前に立った。
斧を使って扉を破ろうとしているが中々に頑丈で。
その向こうで今まさに、敵に辱めを受けたくないと願う者たちが、その塔から身を投げ出しているとは露知らず。
しかし、塔の外から次第に聞こえてきた何かが潰れる音と誰かの泣き叫ぶ声。
その緊迫した悲鳴になにが起きているのか理解したエレンは、扉を破る手を止めさせてその前に手を添え、語りかけた。
『【ここを開けてください。】』
それはルシタニア語だった――。
目の前で敵国の言葉を話す女性に思わず顔を見合わせる兵士ら。
『【あなた方を決して害さないと、必ずお国まで無事に送り届けると約束します。どうかここを開けてください。どうかその尊い生命を消さないで⋯。】』
どうか⋯、扉越しでも分かる男性のものではないその声はどこか辛そうで。けれど嘘をついてるようにも感じず。
それから音はしなくなり、少ししてギィ⋯と頑丈な扉がゆっくりと開いたのだ。
そこにはまだ数人の兵士の妻子であろう者たちが不安そうにこちらを見ていた。
開け放たれた扉からそっと中に入るエレン。
彼女らを刺激しないように、そっと膝を折って目線を低くする。
『【ありがとう⋯。生きていてくれて⋯。】』
エレンの言葉に緊張や不安がほぐれたのか、張り詰めていた気が緩んだのか静かに涙を流した女性たち。しかしそこには城主なる者の姿はなかった。
尋ねると部屋の奥の階段を指さしたのでまさか、と駆け上がるとその先は塔の屋上。そこから下を除くと眼下にルシタニアの軍服を身に纏った中年の男性の姿が。自ら城主の責任を取って飛び降りたのだろう。事切れた男性の傍で泣きわめくルシタニアの軍服を纏う女の子?の姿とそれを辛そうに見守るアルスラーン殿下の姿。かと思えば激情したかのように剣を振り回す女の子にアルスラーンは冷静にその剣を弾いてその身柄をキシュワードが抑えた。
そのあとの一悶着があったことをエレンはあとから聞かされた。
どうやら私を拷問しろだとか騒いだらしい。
拷問しろとは?
無傷で帰っては謀反を疑われる、とか無傷では帰ってやらぬと意地を張って聞かなかったそうだ。、とファランギースが少し呆れたようにエレンに話す。
『⋯それでその子は?』
その子は?と言った理由だがどう見ても子供の年齢に値する少女のためエレンはその子と尋ねた。アルスラーン殿下と同じくらいに見える。暴れてしょうがない彼女は一人地下牢に入れられたという。
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