第24章
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第二陣 一万騎 ダリューン
「第一陣が見えなくなっていまいました。」
「先走るにもほどがござる。」
そうぼやくダリューン配下の兵士たち。
先鋒を進んでいた第一陣が先走って地平線の向こうへと消えてしまったのだ。
呼び戻しますか?と尋ねる兵士にダリューンは首を横に振った。
これもナルサスの思惑通り。
その頃、素通りされたチャスーム城では。
「異教徒共め。我が城を無視して西へ進むか。日頃の準備が役に立つというものだ。出るぞ、先回りして公路でパルス軍を迎え撃つ。」
「ははっ!」
城主クレマンスはチャスーム城を無視されたことが癇に障ったのか、出撃を決める。この判断が重大なミスとなることを彼らは知る由もない。
ペシャワールを出発してから六日後。
五月十六日
午後 大陸公路上
ついに王太子軍第一陣はルシタニア軍と出会った
大陸公路上に土を盛った土のうを作り上げていたルシタニア軍。それを盾に兵士が待ち構えていたのだ。
「待っていたぞこの時を!チャスーム城を素通りさせられた鬱憤を晴らさせてもらう!俺に続けぇ!」
「ついにこの時が来た!パルスの神々よ!兄上よ!ご照覧あれ!我に力を!」
ドドド⋯っと押し寄せるパルス兵。
それを迎え撃つルシタニア軍は積み上げた土壁を盾に一斉に矢を浴びせた。
狙い撃ちされるのを避けるためイスファーンは左右に転回して土壁を避けるように指示を出す。
ザラーヴァントの部隊と二手に分かれて左右に別れた二人は足元に仕掛けられた縄を見つけ、罠だと理解するとそれを断ち切った。
すると公路の茂みから大量の投石車が姿を現し、一斉に石が投げ込まれる。
混乱するパルス軍。
「それ!異教徒共を逃がすな!」
「「(一度引いて立て直すか⋯)」」
イスファーンとザラーヴァント、二人の脳裏に退却の二文字が浮かぶ。
すると二人の部隊を支えるようにしてトゥース卿の部隊が追いついた。
凄まじい剣技と見慣れぬ武器を振り回し、ルシタニア兵を一度に四、五人打ち取っていく。
トゥースが見せる武器は珍しいパルスの遥か南方⋯ナバタイ国に伝わる鉄鎖術なるもので、鎖に繋がれた奴隷が編み出した技だそう。
彼が持つ鎖は獅子を繋ぎ止める鎖くらい頑丈なものだった。
しかしトゥースの力量をもってしてもルシタニア勢の勢いは抑えきれない。これ以上は無理か、と判断したトゥースはエレンに言われた通り退却を指示する。
「エレオノール殿の指示だ。ザラーヴァント卿、イスファーン卿。一度退くぞ。」
「な、なに⋯っ?」
「おっ⋯おう!」
退け退けー!と馬を走らせるパルス兵。
その様子を見ていたエレン。
『第二陣部隊と合流するまで下がりなさい!何人かは私に続け!隊の後方を守ります!』
「はっ!」
逆方向に馬を走らせるエレン。トゥース卿とすれ違い様、目が合うと合図を送った。
追撃するルシタニア兵をこれ以上追わせないよう引き付ける。
いわゆる殿というやつである。
『はぁ!』
「ぐぁあ!」
「うわあぁ!」
左右に剣を振って敵を仕留める。
エレンに向けて剣を振る敵に、馬に乗った状態で身体を屈んでかわし、その足で敵の馬の腹を蹴って落馬させる。
エレンが敵を数十人倒したところで、なにやらルシタニア側に緊張感が走る。
追撃していた兵はその足を反転させ慌てて帰っていく。
なんとか追撃は免れたと安堵する。
その理由はチャスーム城がパルス軍の本隊に攻撃されていたからだと後で知る。
チャスーム城へ帰還するルシタニア軍だったが潜んでいた第二陣部隊のダリューンらに全滅させられ、主を無くしたチャスーム城は城門を固く閉ざすしか生き残る道はなくなってしまった。
これらすべてナルサスの策である。
増援など無いに等しい状況のなか、これで後顧の憂いなくエクバターナに向けて先へ進めるというもの。
全滅したクレマンス将軍率いる部隊の唯一の生き残りであるルシタニア兵はアルスラーン殿下と対峙する。
「おぬしの名は?」
「⋯カステリオ。⋯さっさと殺せ!喜んで神の元へ行ってやる!」
「カステリオ。おぬしは生きてエクバターナへ戻りルシタニア国王へと伝えよ。近い日、必ずパルス流の礼節をもってアルスラーンがお目にかかるであろう⋯とな。」
「――⋯っ。」
幼くも鋭さをもつその目にカステリオは息を飲んだ。
言葉通りアルスラーンはカステリオに馬を与え、手当てを施し彼を釈放した。夕暮れ時、小さくなるその姿を見送ったパルス軍。
その道中はルシタニア兵の亡骸で埋め尽くされていた。
「ナルサスよ。こうなることがわかっていて、チャスーム城を無視したのか?」とキシュワード。
「ルシタニア軍は今回何があっても城に籠もっているべきでした。」
チャスーム城の兵力ではどう考えても今のパルス軍の数に太刀打ちなどできるはずもない。
それなのに素通りされたことで冷静な判断を下せず、先走りまんまとこちらの策にかかってくれた。
「まんまと釣られてくれたというわけか。うちの若い奴らにもいい勉強になったな。」
「これでチャスーム城にいるのは僅かな残党のみ。ほぼ無力化しましたので二千ほどの兵に包囲させ、我々本隊は先に進みましょう。」
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