第4章
夢小説設定
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用済みになった兵士はボコボコにされ、適当な樽に放り込まれた。放り込んだ犯人たちは何事もなかったかのようにその場をスタスタと立ち去っていく。
「しかしどうする。たとえ陛下が生きておいででも結婚の障害になるとして害される…。」
「あるいはルシタニア国王がアンドラゴラス王の命を引き換えに王妃に結婚を迫っているかもしれん…。」
「もう少し情報が欲しいところだ…。もう一度分かれて“釣り”をするか。」
「あぁ。」
先程と同じ手段でもう一度“釣り”と称して兵士をおびき出す作戦を行うため、ダリューンは今一度ナルサスとその場を分かれた。
一人暗い路地を歩くダリューン。
陛下の身を案じながらも気になるのはここの守りを任されていた他の万騎長達。
「(ここを守っていたガルシャースフ殿はどうなっただろう…。サーム殿の行方もわからぬ…。殿下の味方はどれくらい残っているのか…。)」
なにより、アトロパテネの会戦前に分かれを告げたエレンの行方もつかめない。
おそらく籠城戦で父・サーム殿と共に戦っていただろう。
ダリューンには果敢に戦地に赴く彼女の姿が簡単に想像出来た。
果たして無事なのだろうか…。
――…、
「…ん?なんの音だ…。」
静まり返った夜のエクバターナに聞こえてきた音。
最初こそはなんの音か検討もつかなかったのだが、近づくにつれてそれは剣と剣がぶつかり合う音だと気づいた。
カン、カン――ッ
「(だれか戦っているのか…?)」
ナルサスか、と思ったのだがあいつが向かった先は反対方向だ。ではだれが…。
気になったダリューンはその音の正体を確認するべく足を向かわせた。
その戦っていると思われる者の正体が探していたエレンだったとは予想もしていなかった…。
* * *
『ここまでくれば…。』
昼間のルシタニアの装備を捨て、今度はエクバターナの民に扮装したエレオノール。
城壁はもうすぐそこだ。
このまま夜明け前にエクバターナを脱出出来れば…。
そう思いながら後ろを振り返れば、すでにルシタニアの手に落ちた王宮がまるで敵の本拠地のように鎮座していた。
つい数日前まではあそこにはアルスラーン殿下もヴァフリーズ様も父上もいたのだ。…そしてダリューン様も…。
もはやそんな記憶など遠い昔のよう。
悔しさのあまりエレオノールは両手をぐっと握りしめたのだった。
――…。
『…ッ!?』
突然現れた気配にばっと背後を振り返る。
「逃げたかと思えば未だこのようなところにいたとはな…。」
『銀、仮面卿…。』
夜の空に浮かぶ月を背後にこちらを見下ろす不気味な男・銀仮面卿。一歩ずつこちらに近づいてくる彼にエレオノールはじわじわと剣の柄に手を伸ばした。
「やめておけ。貴様ではこの俺には敵わぬ。」
『そっちこそわかっていない。』
「なに?」
『今貴様に力で勝つことが勝利とは限らない。』
「…ではなんとして勝利とする?」
ふっとエレオノールは笑みを溢した。
銀仮面卿はそれが不思議でならなかった。普通は敵を前にして笑うなどありえない。自分と対峙することで恐怖し、震え上がるのが普通の人間だ。
なのにこの娘はなにか違う…。なぜいつも笑う?
敵を前にして、しかもこの俺を前にして震えるどころか、むしろ…。
『今この場を逃げ切ることこそが私の勝利だ。貴様を倒すのはまた後日でいい。』
「ほう…。面白い。では逃げ切ってみせよこの俺から、な!!」
『―っ!!』
剣が一閃。
エレオノールはそれをしゃがんで回避した。
攻撃を仕掛けてくるのは明白だったため最初の一太刀は容易に交わすことが出来た。
屈んだ体制で反撃するべく剣を抜きその勢いのままやつの胴を真っ二つにしてやろうと横薙ぎに払った。
しかしの一太刀は届くことなく銀仮面卿は身体を後退させてその一撃を回避させた。
『(ダリューン様と同じくらいの図体のくせして、今のを避けるなんて…)』
ダリューン様なら今の一撃はかわさず、剣で受け止めたはずだ。
それだけのパワーとスタミナがある人ゆえなのだが。
お互い一撃を繰り出し避けたことによって再び距離ができ、すっと剣をもう一度構えた。
ふと感じた違和感。
『(なにかしら…、)』
「(あの構えは…、)」
同じ/似ている…。
二人の脳裏にはとある人物がよぎったことをお互い知る由もなく。
その邪念を振り払うかのように一斉に一歩踏み出した。ガン!と剣同士が激しくぶつかりあう。
今度は互いの攻撃をかわすことなく、剣で受け止める。
ギギ…ッ!と火花が散った。
ガン…ッ!ガンガン…ッ!
「どうした!王宮で見せた気迫を見せてみろ!」
『く…っ、』
銀仮面卿の攻撃を時には受け、時には流し、しかし時間の経過が徐々にエレオノールを追い詰めていった。
『(目がかすんで…、)』
背中の傷が開いてきたのだ。
止まっていた出血に傷が熱を持ち、エレオノールの身体がふらつき始めた。
感覚を失った手のひらから簡単に剣が弾き飛ばされ、宙を舞った剣ははるか遠くへカラン…と地面に転がり落ちる。
弾かれた衝撃でエレオノールは右手首を左手で抑えた。
「跪け。」
『……。』
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