第20章
夢小説設定
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宣言通り、エレンは軍議が行われるまでの期間に時間をもらい官吏達を黙れせる方法を探っていた。
気づけば一日書庫にこもりっきりであったりしたのでわざわざエラムが心配して食事を運んできてくれるほどに。
「エレン様少し休みませんか?」
『エラム?ありがとう。食事を持ってきてくれたのね。あと少し待って。』
まるでナルサスのように没頭するその姿をエラムはつい重ねて見てしまう。…一人では何も出来なさそうな点も含めて、だが。
放っておけば風呂も食事も疎かにしてしまうところが似てきている気がした。
「(まるでナルサス様がもう一人いらっしゃるみたいだ⋯。)」
区切りがついたのか、書を置きぐっと背伸びをするエレン。
集中力が切れたのか一気に空腹感に襲われる。
『お腹空いたー⋯。』
「どうぞ冷めないうちに。」
用意してくれてシチューとエラムお手製のパンを口に含む。
その美味しさについ感嘆の声が漏れる。
『美味しすぎる⋯。エラムは良いお嫁さんになれるわね。』
「エレン様っ、私は男でございます。」
『あははっ、冗談よ。』
あまりに真面目に返してくるもだから、つい笑ってしまう。
エラムはエレンが書庫にこもりきりの事情を知っている。
「エレン様、どうにかなりそうですか?」
『えぇ。あらかた調べはついたから後は証拠と報告書をまとめてキシュワード様に提出するだけよ。明日の軍議までには間に合うわ。』
「そうですか。それは良かったです。ナルサス様も心配されておりましたから。」
期待している、と口では言っていたが本心では心配だったのだろう。
自分でなんとかすると申し出てきたがナルサス様のことだ。きっと別の対策を考えていたに違いない。
しかしそれに甘えてはならない。これは私が自分で証明しなければならないことだから。殿下や万騎長らの傍らに居られるよう。自身の発言力を強めるためにも。自分の力でアルスラーン殿下の傍にいられるようなると彼と約束したから。
こもりきりだった書庫をようやく出たエレンはそのままナルサスの執務室へと向かう。そこで軍議でどのような事を発言し官吏達を黙らせる方法を伝えた上で、当日は黙って見守ってもらうようお願いをした。
そして夜が明け、軍議が始まる前にエレンはキシュワードを探した。
彼は今練兵場で訓練を行っているところ。久しぶりに現れたエレンに驚きつつ、どうした。と訊ねる。
『お忙しいところ申し訳ございません。後でキシュワード様に目を通していただきたい報告書がございます。』
「報告書?軍議のことか?」
『いえ。私個人の為のものでございます。』
「⋯そうか。ちょうど今訓練が終わったところだ。今目を通しておこう。」
訓練を切り上げたキシュワードはその足で自分の執務室兼自室に戻った。席に着いた彼にとある報告書を渡す。目を通していくうちにだんだんと彼の顔色が険しくなっていった。
「⋯ここに書かれていることはまことか?」
『はい。証拠もございます。あとは本人に灸を据えれば私に対する反感は収まることでしょう。ですので、ナルサス様同様キシュワード様も軍議の際はどうか見守っていてくださませ。』
「⋯わかった。おぬしのやりたいようにしてくれ。この件は後日詳細を問うとしよう。しかしよくこんな証拠を見つけ出せたな。」
『これでもまだ足りないくらいですが、』
まだ納得がいかず不満げに話すエレンに恐ろしいおなごだと、キシュワードは笑った。
昼食を取った後、軍議が行われる。
その場にはアルスラーン殿下もおり、ナルサスは前もって殿下にも黙って見守るようお願いをした。
そしてエレンはファランギースを捕まえて、軍議の間で官吏達をぎゃふんと言わせたいと相談した末、全身黒い衣装を纏い軽く化粧を施してもらい髪型も前髪を真ん中で左右に分け彼女の特徴である碧い瞳を際立たせた。
こうして軍議の時間となり、エレンはあえてナルサスとは入室せず一人遅れて入室する。そうすることでより注目の的になることを計算してのことだ。
コンコンと控えめにノックし入室する。
以前の自分はこの軍議の間に入ることを許されなかった。
こうして自分の力でこの部屋の戸を明けられたことに少し感極まる。
開いた戸の先にアルスラーン殿下とナルサス、ダリューン、キシュワードと名だたる将兵の他に諸侯らがその場にずらっと席に着いてた。
入室してきたのが、女であるエレンだと気づくとざわめきが起こる。
その中でアルスラーンはいつもと変わらず声をかけた。
「エレン、よく来てくれた。おぬしの席はナルサスの横だ。」
『ありがとうございます。遅くなり大変申し訳ございません。』
自身の胸元に手を添え、軽く頭を下げる。
その流れるような所作は見惚れてしまうものがある。
黒い衣装を身に纏い、それがまた彼女を魅力的に仕上げていた。
うっすらと差した口紅がファランギースのような妖艶さを追加させる。
その神がかった容姿につい見惚れる官吏達が数名。
ぼーっと彼女に視線が釘付けだ。
こうして改めて着飾った姿を見ると隠せない気品が溢れ出す。
正体を知るものは彼女が王女であるということを納得せざるを得ない品の良さをひしひしと感じたのだった。
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