chapitre.7
夢小説設定
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緋炎の纏う炎が勢いを増したと同時に、小狼は星史郎に向かって斬りかかった。
しかし、星史郎に戦うつもりはなく、セイと手元にあるその羽根と共に、昴流と神威のいないこの世界を後にしようとしていた。
小狼が剣を振り下ろす。だがそれを星史郎は難なく避けた。
もう一度立ち向かうかと思われた。
だが意外にも彼は右手を伸ばし、掴み取ったその先は。
「セイさん、すみません!」
掴んだ彼女の手を強く引き、はたして小狼の謝罪を聞こえているかはわからないが、そのまま黒鋼達がいる方へ放り投げた。
きっと彼らが受け止めてくれると信じて。
星史郎から離れることは出来たが、彼の魔力は未だ彼女を縛り続けている。
真っ逆さまに落ちていくセイを黒鋼が必死に追う。
未だ意識が戻らない彼女に黒鋼は何度も呼びかける。
「おい!起きろ!目ぇ覚ませ!」
『……。』
ぼんやりする頭の中。
低い、聞き慣れた声が何度も響いてくる。
それでも届かない彼の声。
このままでは本当に地面に叩きつけられるか、星史郎の魔力に引きずられて別世界へ連れていかれるかのどちらかだ。
ち、と舌打ちする。
そうなって欲しくない、と思う自分がいた。
行くな、と。
奥歯を噛みしめ、腹の底から黒鋼が叫んだ。
「いい加減目を覚ませ!セイ!!」
『――…。』
セイ!
初めてだった。
彼が私の名を呼んだのは…。
その声に反応し、ゆっくりと瞼が開いた。
それと同時にセイにまとわりついていた星史郎の魔力がパリンと割れた鏡のように跳ね返される。
『…きゃー!落ちるー!!』
目が覚めて、この状況を叫ばない人はいない。いたらぜひ教えてほしい。
「バカ!手ぇ出せ!」
『!く、黒鋼さん…っ!』
なんだかずいぶん久しぶりに会う気がした。
上から落下するセイと、下で待ち構える黒鋼の高さがちょうど一致した瞬間、彼がセイの手を掴み取りそのままぐぃっと引き寄せる。
『うわっ!』
「…っ!」
想像していたよりずっと弱い衝撃にそっと目を開いた。
『ありがとう黒鋼さんー!』
「…ったく、世話やかすなっ。」
「ナイスキャッチー」
降ってきた声にはっと顔を上げる。
『う…っ。ファイ、さん…』
ポロ…、涙が零れた。
蒼色の優しい瞳が自分を見下ろしていた。
『よ、よかった…、ファイ、さん…、私…、』
「おっと。」
力尽きたのか、そのまま彼にもたれるように気を失ってしまったセイ。だがその手はしっかりとファイの腕を掴んでいて。
「…ありがとう。」
少しだけ微笑んで、ファイはそう呟いたのだった。
一方、小狼は…。
「星史郎さん…!」
小狼が強く緋炎を握った時、星史郎の右眼に魔法陣が浮かんだ。
「!!」
「小狼がこれを探しているなら、きっと、また会うことになるだろう。だから。」
それは、次元を移動する魔法。桜花国から去っていく。消える瞬間も、星史郎は変わらぬ笑みを浮かべたままだった。
「じゃあ、また。小狼。」
桜都国で小狼を突き刺した時と同じ台詞を口にした。
「星史郎さん!」
まだ、まだ。羽根を取り返していない。サクラの、羽根を。
小狼は地面を蹴り、星史郎の持つ羽根へ手を伸ばした。
悔しそうに顔を歪めた。小狼が、着地したのは、数瞬遅かった。星史郎は既に桜花国にはいなかった。
「モコナ?」
不意にモコナが次元移動の態勢に入った。龍王たちが驚く中、構わずモコナは羽根を広げ特有の光を放ちだす。
「星史郎さんが使った魔法具の力に引きずられている。どちらも“次元の魔女”からのもの。力の源は同じだからか。」
ファイは呟くようにそう言うと、黒鋼にセイを預け、サクラを抱いてくれていた草薙から彼女を受けとる。
「おい、どういうことだ。」
「この国を出るみたいー。」
「あぁ!?」
「小狼くーん!もう、この国とお別れかもー」
「え!?」
そう言っている間に、モコナの元に魔法陣が現れる。どうやら本格的に次元を移動するようだ。
「ちょっと待てよ!!」
「お別れってどういうこと!?」
譲刃と龍王が叫ぶ。その時、妖精遊園地にいた鬼児達も次第に消え始め、織葉や龍王たち、小狼たちも元の服装へと戻る。
そしてモコナが大きく口を開き、小狼たちはゆっくりと消えていく。
「ちっこいわんこ!!」
「小狼って言うんだ!本当の名前!!」
「シャオラン!!また会えるよな!」
「分からない、でも。諦めない。強くなる。もっと。」
そう言って小狼は拳を突き出した。強く真っ直ぐな琥珀の瞳。龍王はそんな小狼に一瞬驚いたように目を見開いた。それは、桜の舞う橋の上で、龍王が小狼にむけてやったことと同じだった。
それは、二人で交わした約束――。
強くなる、と。
「おう。」
龍王は別れを惜しむように笑ってみせると、同じように拳を突き出した。
二人の拳は、合わさることは無かった。
しかし共に強くなろうと約束した時よりも、彼らは少しだけ成長したように思う。
あの時と同じように、拳を合わせるように腕を伸ばした。
諦めない。強くなる。――もっと。
桜都国・後編 Fin。To Be Continued.
2022/05/17
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