chapitre.7
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「どうなってんだこの鬼児達は。」
所変わって桜都国の“猫の目”では、襲い掛かってくる鬼児達を黒鋼が一人で相手をしていた。ぐっすりと眠ってしまっているサクラをそのままにしては危ないので、抱えたまま。少々分が悪い。
「白まんじゅう」
「モコナだもん」
黒鋼の服の中からひょこっと顔を出すモコナ。
モコナは黒鋼の邪魔にならないように服の中に隠れていたらしい。
「変な感じとやらは?」
「もっと強くなってる。何かまわりにいっぱい広がってる」
「またこの姫の羽根が関係しているのか?」
その時、家の天井を突き破って巨大な鬼児が襲って来た。黒鋼はそれを正面から見据えると、もう一度蒼氷を構えた。
「この国の鬼児は気配がなくて面倒くせぇ。」
そして、一瞬の後に一振り。
「天魔・昇龍閃!」
一撃で屋根いっぱいを覆う巨大な鬼児を倒す。もろに喰らった鬼児はそのまま消えていった。
「ふん。確かに悪くねぇ刀だな。」
先日、“白詰草”へ向かう途中で遭遇した鬼児を倒すときも、一つ技を使ったが、その時の刀はその一撃を放った後、衝撃に耐えきれずボロボロと崩れてしまった。
しかし、蒼氷は違い、蒼いオーラを纏いながら一層鋭く光っているようだった。
さすが刀剣屋のじじいが一園もまけなかっただけのことはあるようだ。
そこへ譲刃達が店へと駆け付ける。
「大丈夫ですか!?」
「お店が…、」
「酷えな。」
蘇摩と草薙の言う通り、お店はもうその形を留めてはいない。修理するか建て直すか、どちらが良いかと言ったところだ。
「きゃー!“ちっこいにゃんこ”さんどうしたの!?」
「寝てるだけだ。」
担がれているサクラを見て、譲刃が驚くが、幸いサクラは眠っているだけ。少々担ぎ方が雑な気がするが。
「“ちっこいわんこ”と“お姉さんワンコ”は!?」
「…小狼、##NAME1##…、」
モコナが心配そうに呟いた。
するとずどん。と大きく揺れた。
だんだん地響きが鳴りはじめ、地震のように振動を始める。
一体なにが起きているというのだろうか。
「本格的におかしくなり始めやがったか。」
「どういう意味ですか。」
ゲームがゲームでなくなる。とは、一体何を意味しているのか。
そこにいたのは死んだと思われた小狼と。見覚えのあるブロンドの髪の彼・ファイだ。
問いに、きゅっと眉を寄せて千歳と名乗る女性が口を開いた。
「遊びは安全でなければなりません。たとえ仮想現実世界でどれ程、危険な目にあおうと、現実ではありません。その世界から退去すれば、それは夢の中の出来事と同じこと。
けれど、干渉者が現れました。
干渉者は妖精遊園地がコントロールしている鬼児という敵を、外部からの干渉によって操っています。このままでは夢が…」
千歳が話をしている途中、大きな地響きが聞こえ、強く揺れだした。
「!?」
「現実になってしまったようですね。」
部屋のモニターから見える遊園地。先ほどまで多くの家族連れやカップルで賑わっていたそこは、もうその姿は無く、桜都国にいたはずの鬼児達が暴れていた。夢の、バーチャルの世界が、現実になってしまっていた。遊園地は壊され、その惨状には目を瞑りたくなるくらいだった。
「ここは…妖精遊園地!?」
「何で桜都国の容姿のままこっちに戻ってんだ!?」
桜都国の“猫の目”に居た筈の黒鋼たちは、何故か気付くと妖精遊園地にいた。それも仮想現実の世界、桜都国での恰好のままで。千歳が言うように、ゲームが、現実になってしまったということだ。
背後で大きな音がした。振り返るとそこには、ここには居るはずのない、黒く巨大なもの。
「鬼児!?」
「あれ!」
その鬼児の中で最も大きな鬼児の上、モコナの指さした先には、フードを被った人影が一つ。
「星史郎だ!!」
名を呼ばれたのに気付いたのか、星史郎は黒鋼たちの方を見ると、にこりと笑みを浮かべて見せた。
その目を見た黒鋼がなにかを察した。
「なるほど。ありゃ“殺す者”の目だ。」
その一瞬で、黒鋼は星史郎という人物を読み取った。それは彼の経験によって培われたもので、体験したことが無いと分からない気配。…“殺す者”の気配。
黒鋼は背負っていたサクラを草薙へ、モコナを蘇摩へ預けると、一人すたすたと歩き出した。
「どこ行くの?」
モコナが不安そうにする。
「あいつがあそこにいて、小僧が戻ってない。そろそろ日も変わる。後は、俺の勝手だ。」
「この桜花国には“夢卵”の仮想現実を実体化させるほどのシステムはありません。干渉者がどんな方法でそれを実現しているのか、早くそれを把握して対抗手段を取らないと、この妖精遊園地だけでなく、この国中に桜都国の鬼児が広がってしまいます。」
地響きは止まらずずっと揺れ続け、小狼、ファイ、千歳の三人がいる部屋も安全とは言えなくなってきた。
「サクラ姫達を探します!」
小狼は部屋から出ようと駆け出す。しかし、ファイはそれを止め、部屋に数多くあるモニターを指さす。
「それなら見つけたかもー」
指さすその一つには、サクラを抱く草薙や譲刃たちの姿。
「黒鋼さんは…」
「黒わんはこっちー」
と、そこには星史郎と対峙する黒鋼の姿。
「黒鋼さん!星史郎さん!」
小狼は驚いたように声を上げる。しかしその後、もう一度他のモニターに目を移した。
「##NAME1##さんは!?――いた!」
映し出されているのは、星史郎が乗る巨大な鬼児の手だ。その手が彼女を抱えていた。その姿を見て、ファイは眉間にしわを寄せた。
「##NAME1##ちゃん、どうしたの?」
「ファイさんが鬼児やられた後、星史郎さんに連れて行かれて!星史郎さんの魔法で意識がないままなんですっ。」
「向こうへ急ごうか。」
二人は仲間の姿を確認すると部屋を出て、サクラとモコナの元へ急いだ。
.