chapitre.7
夢小説設定
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「で、『ワンココンビ』に何の御用でしょう?」
青年から闘気を感じる。
明らかにケーキを食べに着ましたという雰囲気ではない。
対するファイだが、彼は足を痛めている。まだ完治していないはずだ。それにファイは戦闘になっても魔力は使わないだろう。
ファイの問いに、青年は背後から黒い影を出した。それはゆっくり大きくなり、やがて大きな鬼児になった。
『(鬼児…!?)』
「消えてもらおうと思って。」
先ほどと変わらぬ笑みを浮かべながら、青年はそう言った。
「あー、貴方ひょっとして星史郎さん?小狼君に戦い方を教えてくれたっていうー。」
鬼児に囲まれているというのに、ファイは至って気にしていない風に会話を続けた。鬼児は星史郎に制御されているのか、ファイを襲う気配はない。
鬼児の姿にモコナは##NAME1##にしがみ付く。##NAME1##はモコナを安心させるように撫でながら、視線は一瞬たりとも星史郎から外さない。
「小狼をご存じなんですか?」
「はい。一緒に旅をしてますからー」
「異なる世界を渡る旅ですか?」
「……。」
星史郎の問いに、ファイはただ笑っているだけ。
しかし彼にはなにか確信があるようでファイの答えをさらに求めることはなかった。
「小狼に世界移動の力はなかった。ということは“次元の魔女”に対価を渡したのかな。」
「貴方もですかー?貴方は凄い「力」の持ち主のようだけれどー、世界を渡る魔力はその右目の魔法具によるものでしょう?」
「さすがですね。これを得る為に、対価として本物の右目は魔女に渡したので。」
「けれど、その目の魔力は「回数限定」ですよねぇ。渡れる世界の数が限られてる。」
「ええ。だから、少しでも可能性があるなら、無駄にはしたくないんです。」
まるで探り合いのような会話。
淡々と笑みを浮かべながら話していたが、星史郎はその笑みに影を落とした。
闘気…殺意という方がしっくりくる。その気配に鋭さが増す。
「僕が探している二人に会う為に。」
『ファイさん逃げて!』
彼の殺気を感じ取った##NAME1##が叫ぶと同時に、これまで何も仕掛けてこなかった鬼児が、ファイに襲い掛かった。
「ファイ!!」
ファイは鬼児の攻撃を右足で高く飛び上がり、ひらりと躱す。
「サクラちゃんの側を離れないで!!」
そう言いながら、次の攻撃も躱す。しかし、着地したのは左足。―そう。先日黒鋼と“白詰草”へ向かっていた時、鬼児との戦闘で痛めていたところだ。ずきんと鈍い痛みが走り、一瞬顔を歪めた。それを星史郎が見逃すはずもなく。
「足を痛めているんですね。魔法を使えばもっと楽に逃げられるでしょう。」
「でも、魔力は使わないって決めてるんでー。」
「じゃあ、仕方ありませんね。」
星史郎は変わらぬ声色で言葉をつづけた。
『やめて!』
「##NAME1##ちゃんダメだ!」
ただじっと見ていることも出来ず、ファイを襲う鬼児の攻撃を長棍で防いだ。
予想していなかった者の介入に星史郎はすこし驚いた様子を見せる。
おそらくここに居る鬼児は全部“イの段階”だろう。一太刀食らわすだけではきっと再生するはず。
「これは意外でしたね。あなたにも鬼児狩りとしての素質がおありのようだ。」
『小狼の先生だがなんだか知らないけど、傷付けるなら…許さない!』
はぁあ!と棍を二振り。吹き飛んだ鬼児が壁を突き破り、そして消える。
それをみた星史郎がさらに鬼児を出現させた。
『(なんて数…っ、)』
もはや店内は鬼児で埋め尽くされている。
星史郎の合図で一斉に##NAME1##に飛び掛かってくる。
それでも鬼児を倒そうと長棍を振りかざす。しかしそれをファイがさえぎり、彼女を突き飛ばした。
「##NAME1##ちゃん!!」
『ファイさん!?わ…っ!』
突き飛ばされ、カウンターへとぶつかる。
一瞬痛みに目を瞑るがすぐさま開いてファイの姿を追った。
『ファイさん!…ファイさん!!』
「…彼は、死にました。」
『―!?なん、で…、』
鬼児が消えた後、ファイがいたはずの場所には、彼の付けていた蝶ネクタイが落ちているだけだった。
あの一瞬で、ファイはどうしたというのだろうか。まさか、何のモーションもなく、鬼児の中に取り込まれてしまったとでもいうのか。
私を、かばった…?
ドクン、とひとつ心臓が鳴る。
震える唇で何度も彼の名を呼ぶ。
しかし返事がない。…姿もない。
頭の中でガンガンとなにかが鳴り響いた。
いけない…。なにかが、溢れそうだ…。
ドクン…――。
『どうして、ファイさんを…』
彼女の問いに、星史郎はにっこりと笑いながら答えた。
「僕が捜している二人、双子の吸血鬼に会うために、邪魔だったので」
『双子の…吸血鬼。』
ゆっくりと立ち上がる。
目には見えないオーラが彼女から発せられる。
とてつもない気迫だ。
「魔力とは違う…。その力は一体なんですか?」
『…皇族に受け継がれる龍脈の力…。』
普段の彼女の瞳の色は茶色だ。…だが今は、血のように真っ赤な色をしている。激しく燃える炎のよう。
その力は凄まじく、たった一振りで鬼児を2、3体沈めてしまうほど。
これにはさすがの星史郎も張り付けていた笑みを消した。
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