chapitre.7
夢小説設定
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黒鋼に覚えがあるのか、ただ開店が待ちきれない客とは違うと感じたオーナーこと織葉さん。
「今日のお連れさんは随分と可愛らしい方ね。」
『こ、こんにちは…。』
ふふ、と笑う顔まで妖艶だ。
女性なのについ顔が赤くなってしまいそう。
その隣で話す黒鋼と彼女が並ぶと違和感がないくらい大人同士、という感じがして。
##NAME1##はすこしだけ寂しくなった。
『(黒鋼さんからみたら私も小狼やサクラと同じ子供…なんだろうな。)』
離れたところから二人が話す会話を聞いていた。
「それで?わざわざお店が開く前に来てまで聞きたいことって?」
「前に言ってただろう。新種の鬼児は美しい人だったと、」
「えぇ、そうよ。それがどうしたの?」
「――なぜそいつが鬼児だとわかった。人の姿をしていたんだろう。」
『あ――。』
彼の聞きたいことがようやくわかった。
その質問に織葉は少しだけ目を開くとすぐ、くすっと笑って見せた。
「この国ではね、ケンカ以上の争い事はご法度なのよ。いままでそんな人達、見たことないでしょう?」
『言われてみれば…。』
シン国では、特に都となるとそのようなことは日常茶飯事だ。なのにこの国ではそれが一切ないのだ。ある意味気味が悪いくらい。
なにか裏があるのだろうか…。
「けれど、その人は鬼児を使って鬼児狩りを襲ったのよ…。」
「鬼児の仲間は、鬼児ってことか…。なるほどな。」
「わかっていただけたかしら?」
「あぁ。邪魔したな。行くぞ。」
『えぇ!?もう!?』
聞きたいことだけ聞くとあっさり帰ろうとする黒鋼。滞在時間なんてほんの数分だ。
彼女もわかっているのか小さく手を振りながら「今度は夜、会いにいらしてね。」といって笑っていた。
なんか複雑だ。なんでかわからないけれど。
『(いや、だな…なんて、どうして思うんだろう…。)』
胸の奥が少しだけちくっとした。
* * *
市場へ向かう途中、他愛もない会話(主に##NAME1##が一方的に、だが)をしながら歩いていた。
日が少し傾いてきたようで帰宅する人もちらほら。この道を抜ければ街の大通りに出られる。
そんな時だった。
――…。
『…っ。』
「どうした。」
ふと##NAME1##の足が止まった。つられて黒鋼も止まる。
覗き込んだ彼女の顔がなにか警戒しているような緊張感のある表情をしていた。
『なにかきます。』
「…。鬼児か。」
ザァアアァア――。
二人の前に現れたのは予想通り、鬼児。
しかし何か妙だ。どこか見覚えのある姿…。
『あ!前に龍王達と倒した鬼児とそっくりだ。…ということはあれは“イの四段階”の鬼児…。』
だが小狼の話では、同じ姿の鬼児は存在せず、似通った姿の鬼児ならいるらしいが、ここまでそっくりなのは明らかにおかしい…。
「“イの四段階”か…。初めて会うやつだな。」
『黒鋼さん気を付けてください。あれは“イの四段階”ですが恐らく形態を変えます。』
「なに?」
刀を抜く黒鋼。##NAME1##も同じように長棍を手に構えた。
『本来なら形態を変えない段階の鬼児だそうですが…、それにすこしの攻撃であれば再生します。』
「ってことは一撃で仕留める必要があるってことか。」
『はい。』
刀を手にしたまま黒鋼は##NAME1##に問うた。
「お前はいいのか。」
『え?』
「戦えんのかよ。」
『…はい。大丈夫です。だから一緒に戦わせてください。』
「ふん。勝手にしろ。」
『はい。』
鬼児はニタァと笑みを浮かべながら、鎌のよう両腕で二人を狙って振り下ろす。
「来るぞ!」
『…っ!』
振り下ろされた鎌を黒鋼は横へと身体を交わし、##NAME1##は鬼児を飛び越えるように交わして背後にまわる。
『はぁあ!!』
長棍で鬼児の身体を突く。一瞬だけ鬼児の身体に空洞が出来て向こう側が見えたがそれもすぐ元通りに。やはり先日の鬼児と同じだ。
すこしの斬撃や打撃では効果が無いのかすぐ元通りになってしまう。
「“イの四段階”の鬼児ってだけのことはあるな。確かに弱くねぇ。だが…っ。」
破魔・竜王陣――!
鋭い斬撃が鬼児を貫いた。
走る斬撃が鬼児の身体を伝い、ドサァと倒れるとそのままサァ…、と消えてしまった。
強力な一撃に##NAME1##も思わずぽかん。
開いた口が塞がらなくてつい呆然と立っていると彼の背後からもう一つの黒い影が。――鬼児だ。
気づいた##NAME1##が駆け出し、長棍を二振り。鬼児の腕をそぎ落とし、すかさず黒鋼が留めの斬撃を食らわす。
二体とも恐らく同じ“イの四段階”なのだろうがこうも簡単に倒してしまうとはさすが黒鋼さんだ。
『この前はもっと苦労したんだけどなぁ。黒鋼さんが倒しちゃうとあんなに弱かったのかと思っちゃうな。』
「大したことねぇな。“イの段階”の鬼児ってのも。」
刀を一振りし納刀する。
呆気なく倒してしまったのは黒鋼と##NAME1##の二人だからと、いっても恐らく気づくことはないだろう。
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