chapitre.7
夢小説設定
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ファイとの会話を終わらせ、各々彼が用意してくれた夕食を取り、各自部屋へと入った。
夜の静寂が店全体を包む。
今夜も美しい満月が夜空に浮かび上がる。
サクラはもちろんとうに夢の中だが、今日は小狼も早くに就寝しているようだった。黒鋼さんとの稽古がかなり堪えたのだろう。それに明日もそれは続く。鬼児狩りと並行しての特訓だ。いくら若い彼にも限界はある。
店からあまり動けない自分に代わって不老不死の法を探してもらっている身としては申し訳なくなる。
カウンターにランプを置いて明かりを確保しあちこちに本を広げているセイは今夜も錬丹術の勉強だ。部屋ではサクラが目を覚ましかねない(まずないと思うが)ので一応気を使って誰もいない一階の店のカウンターを使っていた。
セイが夜な夜な勉強している時同じく、桜が美しく咲く街の歩道では鬼児が民間人を襲っていたなどつゆ知らず。
だが、その瞬間明らかに不穏な雰囲気をセイは感じ取っていた。
『――…っ。』
なに、いまの―?
気になって長棍を片手に店の玄関から外に出た。辺りを警戒するが周辺では怪しいものは見当たらず。鬼児でも出たのかと思ったのだがどうやら気のせいか、と完結する。
「何してる。」
『―!』
ばっと後ろを振り返る。
そこにはいつの間にか黒鋼さんがいた。少しだけ眠そうに、頭をぽりぽりとかきながら。
『黒鋼さん…、どうしたんです?こんな夜中に。』
「喉乾いたから水飲みに来ただけだ。お前こそこんな時間まで何してる。」
『私はー…、勉強?』
勉強だぁ?と黒鋼はしかめっ面をする。
その言葉と行動があってないからだ。
長棍片手に外に出てきてなにが勉強だろうか。
『妙な気配がして鬼児がまた出たのかと思って外に出てきたのだけれど…。』
「妙な気配…。」
セイのカンは鋭い。
彼女がそういうので黒鋼も気配を探ったが特に目立った気配の乱れは感じられず。
『気のせい、だったみたいですね。』
そういって構えていた長棍を下ろす。
特に何もないとわかると黒鋼もまた踵を返すように店の中に戻ろうとする。
「お前も早く寝ろ。」
『あ、黒鋼さん…。』
「なんだ。」
去ろうとする姿をつい引き留めてしまう。
無意識にしたことなので特に理由が思い当たらなくてまごまごしてしまうのだが。
『あの…、その…、』
黒様に言えばいいのに――。
不意に先ほどのファイの言葉が頭をよぎる。
黒様ならきっと答えてくれるよー、と。
『私…、私も黒鋼さんに…、』
「……。」
うまく言葉が出てこないセイを黒鋼は急かす事なく黙って聞いてくれる。
下げた長棍を両手で抱えるように握りしめた。
血と汗で汚れた、使い込まれた長棍が黒鋼の目に入る。一目見ただけで彼女がどれほどの努力を重ねて来たかが伺える。
『稽古…、つけてほしい、です…。』
い、言ってしまったー。
言うつもりなんてなかったのに。
言って後悔。今心のなかで悶絶している自分がいる。今のは無しで、と言いたい。
まっすぐに黒鋼を見ることが出来ず顔を俯かせる。彼から何の反応もなくてますます気まずい。
すると頭上からはぁとため息が。
びくっとなるセイに黒鋼は彼女の頭に手を乗せた。
「そうならそうとさっさと言え。」
『う…。』
見られている、とは最初から気づいていた。
だが見られていた視線の理由が彼には分らなかった。だからたまにこちらも視線を返すと合う前にセイはすぐ目を反らすのだ。
だから黒鋼は余計に理解できないでいた。
あの魔術師(ファイ)も自分がセイに見られていることには気づいているだろう。だがあいつからは何も言ってくることはなかった。
そのうち本人から話すだろうと思って。
ため息の理由がそれだ。
「…だがお前はあとだ。」
『黒鋼さん?』
聞き間違いだろうか。
今彼は稽古つけてくれる、と言ってくれたのか?
頭に手を乗せられたまま彼を見上げるとカチリとまた視線が合う。今度は反らすことなくじっと見上げてくる期待の籠もった視線に黒鋼は思わずたじろいでしまう。
「稽古をつける前にお前はまず体力をつけろ。」
『――っ!』
目を見開くセイ。
まさかそんなことを言われるとは想像してなくて。
でもちゃんと自分のことも見ていてくれたんだと思うと嬉しさがあとから込み上げてくる。
「小僧と違ってお前は戦いの経験もあるし、動き方もちゃんと理解しているが体力のなさが目立つ。」
『……。』
「技を二回使っただけでへばるようじゃ意味がねぇ。だからまずは体力をつけろ。…話はそれからだ。」
『黒鋼さん…。』
それ以上はなにも言わず今度こそ黒鋼は店の中へと入っていった。その後ろではセイが長棍を握りしめながら、その顔はいままで見たことのないやる気に満ちた表情をしていた。
その姿を視線だけ振り向いて見ていた黒鋼は人知れずふっと笑みをこぼしたのだった。
『体力か…。考えたことなかった…。』
基礎体力はつけようと鍛錬を積んだが必要以上にそこまでこだわらなかった。
均等に技や身体の動かし方、柔軟性など自分なりに経験を積んでは来たつもりだがやはり第三者からの言葉というのは気づかされるものがある。
『(言ってよかったな…。)』
心の中でファイに感謝する。
明日言えたことと、お礼を言おうと決めたセイでした。
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