chapitre.6
夢小説設定
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「んでねー、オレも喫茶店やってるって言ったら、お店の名前教えてって言われたんだけどにゃー」
「まだ決めてないにゃー」
「あ!あのねー!侑子がお店の名前“キャッツ・アイ”にしにゃさいってー♪」
「いいねぇ猫の目だ、にゃーん♪」
「にゃーん♪」
「……。」
話の本題に触れたのは一瞬でいつの間にやらお店の名前の話に流れていく。無事に決まったようだが、この酔っぱらっている三人(二人と1モコナ)が明日、この話を覚えているのかどうかは甚だ疑問である。
にゃーんにゃーんと再び乾杯する彼らを横目に黒鋼はひとり溜息をついた。
「おまえも酔ったのかよ」
黒鋼は、隣で先ほどから無言で飲んでいる小狼を見る。
「黒鋼さん」
「あぁ?」
「ここでは、ある段階以上の鬼児は武器でないと倒せないそうです。」
「らしいな。」
「おれに、剣を教えて貰えませんか。」
「…それはおまえが生きるためか。」
「生きて、やると決めたことをやるためです。」
黒鋼は小狼の目をじっと見た。
揺らぐことの無い目。初めて会った時にも、何度か見たそれ。
人が何か決意した時に見せるその目を黒鋼はよく知っていた。
ほんの数秒だったが彼の決心を受け取った黒鋼は視線を元に戻す。
「面倒くせぇが、おまえが強くなりゃそれだけ早く次の世界に行けるか。俺ぁ人にものを教えたことなんざねぇから知らねぇぞ。」
言い方こそぶっきらぼうなものの、これは黒鋼なりの優しさ。なんだかんだで彼は面倒見がいいのだ。そんな黒鋼の返事に小狼は顔を輝かせて深々と頭を下げた。
「有り難う御座います!」
…そう。モコナに。
「おまえもきっちり酔ってんじゃねぇかよ!!」
勿論黒鋼のツッコミが炸裂する。
そのモコナと猫二人は完全に出来上がっていて…、
「「「にゃ~ん、しゃ~ん、にゃ~ん♪」」」
「おまえらそれ以上一滴たりとも飲むな!」
振り向いて猫三匹に突っ込んでいる間に、小狼がキッチンからお玉を持ち出してくる。
「じゃあさっそく」
「だからそれでどうしようってんだよ!!」
今度は小狼に突っ込む黒鋼さん。
忙しい人だ。
「構えはこれでいいんですか?黒鋼さんっ!あ、もっとこうですか?」
「にゃ!」
「にゃ?」
「にゃにゃー」
「にゃあにゃ!」
「にゃにゃにゃーん」
「――…、」
目の前の無法地帯?にプチンと何かが切れたような音がした。
「だからもうおまえら全員寝ちまえー!!」
二度とこいつらに酒は飲ませない、と誓う黒鋼でした。
逃げ回る猫三匹とおたまで剣の練習を始めた小狼を何とかそれぞれの部屋へと運んで(放り込み)疲れ果ててリビングへ戻った頃、##NAME1##がいないことに気付く黒鋼。
『あれ、みんなは?』
居ないな、と思った矢先本人から姿を現す。
何かの料理を乗せたお盆を持ったまま黒鋼一人だけなのを不思議に思い、辺りを見渡すが誰も居らず。
「にゃーにゃーうるせぇから部屋に放り込んだんだ。ったく酒弱ぇなら進んで飲むなっての。」
『変わった酔い方をする人達ですね。』
よほど苦労したのだろう。黒鋼の顔に疲れが見え、もう二度とこりごりだという表情が伺えた。
##NAME1##は思わずくすっ、と笑みが零れる。
「その持ってるのはなんだ。」
いい匂いがしたのか##NAME1##の持つお盆に興味が沸く。
彼に見えるように高さを下げてみせた。
『お酒のおつまみにと、みんなで食べようと思って作ったんですけど…。寝ちゃったのかぁ、残念。』
でも酔っちゃったのなら仕方ないですね、と##NAME1##は残念そうにする。
「酒のあて、か。よこせ俺が食う。」
『黒鋼さん食べてくれるんですか?』
おう、といつものように返事をする。
その視線はお盆に乗せられた料理に興味津々だ。
##NAME1##は月明りが降り注ぐ玄関先で飲みなおす黒鋼の横へお盆を置いた。
その上には三種類の料理。どれも黒鋼がいた国では見たことのないものだ。
「なんだこれは。」
『これは私がいた国のものと似ている豆で、塩茹でしたものです。こっちが辛い香辛料を使った…お漬物?って伝わるのかな…。こっちが小麦粉と野菜を混ぜて焼いたものです。この辛いタレを付けて食べるんです。』
「どれも日本国にはないものだな。」
『シン国では庶民の味ですよ。お口に合うといいんですが…』
自信なさげな彼女だったがここまで自炊出来ることに黒鋼は意外だった。
『黒鋼さんはまだ起きてるんですか?』
「まだ酒が残ってる。お前も寝るなら部屋に行け。」
また酔っぱらってにゃーにゃー騒がれても面倒だ、と早く寝るように促す黒鋼。
さきほどの苦労がにじみ出ているようだ。
『そうですか…、それじゃ…』
「おう。」
それだけを言い残し##NAME1##は二階への階段を上がっていった。
いつもなら、おやすみの一言は言うのだがまぁそれも気に留めず黒鋼は置き土産の酒と彼女が作った酒のあてを堪能することに決めたのだった。
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