chapitre.6
夢小説設定
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「たっだいまー」
店内の入口前にある二段ほどの階段でサクラが丁度龍王の手当てを終えた時、敷地の入り口辺りからファイの声が聞こえてきた。
その声に振り返った小狼とサクラと##NAME1##とモコナは黒鋼に担がれているファイに驚きの声を上げて駆け寄る。
『ファイさん!?どうしたんですか!?』
「ちょっと鬼児に遭遇して、ドジっちゃってー」
あははーといつものように笑うが黒鋼に担がれているという事は歩けなくなったということだろうか。
『足怪我したんですか!?すぐに手当て…』
ずるっ。
「わっ!」
彼女の言葉の途中で、黒鋼がファイから手を離してしまった。支えが無くなったファイはそのまま黒鋼の背中を滑り落ちて…、
「わ~~~。」
支えに行った小狼と共に地面とこんにちは。
黒鋼はというと心底驚いた表情をし、やっとのことで声を出した。
「……蘇摩。」
そう呟いた。
突然名前を呼ばれた彼女も驚いた表情を見せる。黒鋼に至ってはファイを落としたことにも気付かないほどに驚愕していた。心なしか冷や汗もかいているような。
「なんでここに!?“知世姫”も一緒なのか!?まさか“天照”も同行してんのか!?」
「知世姫」、「天照」という名を口にしながら辺りを見わたす黒鋼。彼の元いた国の人達のことだろうかと##NAME1##は思う。今まで旅を一緒にしてきた仲間たちが知らないという事はそういうことなのだ。
「あ…あの、」
未だにその二人をきょろきょろ探している黒鋼に蘇摩が遠慮がちに声をかけた。
「確かに私は蘇摩です。でも、貴方とお会いするのは初めてだと思うのですが…。」
ん???
* * *
『足、出してください。あとは包帯巻いて固定するから動かないでくださいね。』
「うん、##NAME1##ちゃんありがとー!あ、三人とも店番お疲れさまー」
「蘇摩さん、本当に黒鋼さんの国にいらっしゃる蘇摩さんと、そっくりなんですね。」
黒鋼の元へお茶を運ぶサクラがそういった。
先ほど会った蘇摩は阪神共和国で小狼が王様と神官様に会った時と同じように、黒鋼の元いた日本国にいた人と同じで違うひと。
根源は同じだから見た目もそっくりで、一瞬では見分けがつかないのだ。
本当にそっくりなのだから驚くのも無理はない。
「びっくりしてファイ落っことしたー」
モコナのからかう声にファイも笑い声をあげると、「うるせぇ!!」と黒鋼の一言が飛ぶ。
「でも、本当に色んな世界にいるんだね。次元の魔女が言ってたように“同じだけど違う人”が。だったら、これからも会うかもしれないねぇ。前いた世界であった人と。」
そう言うファイの顔はいつもと変わらないようだった。でもどこか瞳の奥が揺れているような気がした。
…哀しげに、ゆらりゆらりと。
旅を始めて、一緒に過ごした時間はかなりのものだ。それでも踏み入っていい領域がそれぞれにある。彼が時々見せる今のような瞳はその領域外だ。過去に何があったのかは誰も知らない。もっとも、誰の過去も、誰も知らない。
##NAME1##は、ファイの瞳に彼が作っている壁を感じだ。それが無性に切なくて。人の事など構っている場合ではないというのに気になって仕方ないのだ。どうしてそんな顔をして笑うのだろう…と。
だからといって打ち明けてほしいなんて言えるはずもなく。そんな自分の気持ちに気付かぬふりをして、もうじき終わる包帯を巻く作業を続けた。
ただ、この旅を通してすこしでも彼が幸せであるよう祈るばかりである…。
『はい、出来ました。あまり無理して動かさないでくださいね。』
「有り難う。さすが##NAME1##ちゃん、上手だねぇ」
「酒場のほうはどうでしたか?」
「そうだ!おみやげがあるんだよー」
小狼に言われて思い出したように包みを開ける。良かった割れてないー、と言いながら袋をごそごそするファイはとても楽しそう。
お土産と言われて、小狼とサクラとモコナはなんだかわくわくしている。そしてファイが笑顔でみんなの前に見せたのは。
「酒場で買って来たんだー、これ飲みながら話そうよー」
「「え?」」
『お酒買って来たんですか?』
「まあな。」
「飲もー飲もー!」
飲む前からノリノリな黒鋼とモコナとファイ。
というかモコナお酒飲めるのか。
サクラと小狼は飲んだことが無いよう。黒鋼はそっけない返事だがその手には既にお酒の瓶が。早いな。
モコナも飲む気満々だ。##NAME1##はファイがさっそく瓶を開けだしたのを見て人数分のグラスを取りにキッチンへと向かった。
数分後…。
「えへへ」
「うふふ」
「あはは」
「弱いなら進んで酒なんて買ってくるなっ」
お酒を飲み始めて数分。そうたったの数分だ。
ファイとサクラとモコナは見事に酔っ払って、にゃーんにゃーんと楽しそうだ。彼らの周りに花が飛んでいるように見えるのは幻覚だろうか。
「でねー、酒場には美人の歌姫と可愛いバーテンダーさんがいたのにゃーん♪」
「にゃーん♪」
「色々お話聞いたにゃーん♪」
お酒を飲む前に小狼が言っていたことを思い出してほしい。「酒場の方はどうでしたか?」という質問。メインは酒場であったことの報告であって飲み会ではない。
だがこうも酔ってしまっては話なんてまともにできはしない。大事なことがすっぽり抜けてしまっているのだから。
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