chapitre.2
夢小説設定
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生きて…
自由になりなさい――…。
懐かしい夢を見た…。
優しいあなたの声…。
もう聞くことは出来ない…。
* * *
パチリ。と目が開く。
敷かれた布団の上で横になっていたセイはその視線の先に居た人と目が合った。
魔女がいたところで私の左側にいた黒い服の男性だ。ギロリと効果音が付きそうな視線で睨まれた、?
するとかわいらしい、あー!という声が聞こえたかと思うと視界が一気に真っ白に染まる。
頬にはなんとも表現しがたい感触がふにふに当たる。
これは…あれだ。
赤ん坊のほっぺが顔に当たったときの感触に似ている。
「おきたー!」
『…??』
「おきたー?」
至近距離ではしゃぐ何かを誰かがひょいと抱き上げる。
その人はさっきのところでセイの右隣にいた金髪の男性だ。
『えっと…、ここは…、』
起き上がり正座をして辺りを見渡した。だれかの部屋のようだ。
畳8畳ほどの和風な部屋。外はすでに暗く夜の時刻を告げていている。
そこに先ほどのみんなもいて。
セイの隣で少年と、相変わらず少女は眠ったままだ。
「オレたちもこの世界についてすぐ案内されたからよくわからないんだー。でも害はなさそうな人達だったから、雨にも濡れたしね。…君の名前聞いてもいいかな?」
『あ、はい。セイ・ランといいます。セイと呼んでください。』
「セイちゃんね。オレはファイ。そっちは…」
「…黒鋼だ。」
「モコナはモコナ!」
『はい。よろしくねモコナ。』
「「……。」」
『…?』
なぜか大人二人にじっと見つめられるセイ。
いたたまれないので何ですか、と問うた。
「ごめんねぇ、なんか店にいた時とずいぶん雰囲気が違う気がして。」
『あれは…外交用?営業?』
「なんだそりゃ。」
黒い服を身に纏う男性こと黒鋼が静かにツッコむ。
『一応私も皇女なので。初対面の人にはそれなりの態度で挑まなくてはいけませんから。』
そういうの苦手なんですが、それなりに頑張ったんです。と彼女が言う。
「じゃあ今のセイちゃんが素ってことかな?」
『はい。普段はこんな感じです。』
「そーなんだー。」
『そーなの。』
セイの掌にポンと乗ってきたモコナと笑い合う。
不老不死の法なんてものを欲しがる子だから気難しい子なのかと思ったら案外そうでもなく。
どこにでもいるごく普通の女の子で馴染みやすそうだったのでファイはすこしほっとした。
すると隣で眠っていた少年がガバッと起き上がる。
「さくら!」
「ぷう!―みたいな?」
『……。』
「さ…くら…、」
セイのときと同じようにきっと今、少年の視界は真っ白になっていると思う。
「ツっこんでくれないー…。」
「…??」
意味を理解出来ていないと顔をする少年に張り付くモコナをファイがまた優しく抱き上げた。
「目覚めたみたいだねぇ」
ファイに話しかけられた刹那、少女の存在に少年は一気に覚醒する。
「さくら!」
『大丈夫。ここにいるよ。』
「……。」
その言葉通り少年はずっと少女を抱きしめたまま。少年はほっと息をつく。
「寝ながらでもその子の事、絶対離さなかったんだよ。君――、えっと…」
「小狼です。」
「小狼君ね。こっちは名前長いんだー。ファイでいいよー。でそっちの女の子がー」
『セイ・ランです。セイって呼んでね。』
「はい。」
「んでそっちの黒いのがー」
「黒いのじゃねぇ!黒鋼だ!」
騒ぐ大人たちをよそに小狼は少女こと・さくらを抱きしめる力を籠める。身体があまりにも冷たすぎるから。
気になったセイが遠慮がちにさくらの左手首に触れた。
『脈が弱すぎる…、それに身体も冷たい。』
「どうすれば…!」
ずぼっ。
「『――!?』」
突然、セイと小狼の間を割り込むようにファイが小狼の着ていたマントに手を突っ込んでごそごそあさり出した。
思いがけない彼の行動にセイも飛び退いてしまい、なにしてんだてめぇ。と黒鋼も呆れる。
「あったよー。これ記憶のカケラだねぇその子の。」
『羽根…?』
「え!?」
ファイが手にしていたもの。
それは白色のピンクの模様が入った綺麗な羽根だった。
どこか暖かい気持ちにさせてくれるような。そんなちからを感じる羽根。
「君にひっかかってたんだよ、ひとつだけ。」
「これがさくらの記憶のカケラ…、」
羽根はすぅ…と消えるようにサクラに吸収されていく。すると顔が苦しそうな寝顔から安らかなものへと変わった。セイがもう一度左手首に触れるとさっきとは変わって脈も体温も取り戻していた。
「身体が…暖かくなった…。」
『もう安心して大丈夫。』
「ありがとうございます。」
素直に感謝を述べる小狼にやっぱり誠実な子だな、と思うセイだった。
『どういたしまして。あとはゆっくり寝かせてあげようね。』
「はい。」
「今の羽根がなかったらちょっと危なかったねー。」
「おれの服に偶然ひっかかってたから…」
「この世に偶然なんてない。」
ふいにファイの口調が一瞬変わった。
『ファイさん?』
「―ってあの魔女さんが言ってたでしょう―。だからね、この羽根も君がきっと無意識に捕まえたんだよ。―その子を助ける為に。」
『…。』
「…なんてねー。よくわかんないんだけどね~っ。」
「…。」
さっきの真面目な雰囲気はどこへやら。
ふにゃふにゃするファイにガクッと肩の力が抜ける気がした。
「けどこれからどうやって探そうかねー、羽根。」
『不思議な力を感じたけれど見た目も小さいですし、見つけるのはむずかしいですね。』
「はいはーい!モコナわかる!」
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