chapitre.6
夢小説設定
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「そういえば、お聞きになりましたか、あの噂」
「ああ、“情報屋”の絵里衣からな」
「鬼児の新種が出たってやつだろ!?」
『新種の鬼児…?』
最初にこの国に来た時にまず訪れた情報屋。
その主の絵里衣からその話を聞いていた小狼は無意識に眉に力を入れていた。
新種の鬼児。
そもそも鬼児というものが何なのかはっきりと分からない。新種、とはいったい何なのだろうか。##NAME1##は龍王の分の紅茶を淹れながら、話に耳を傾けていた。
小狼――…。
桜の舞う夜。##NAME1##たちのカフェでわいわいと団欒(だんらん)してる時、そのカフェを見下ろすようにして、電柱の上に人影があった。
長いコートを靡かせ、フードを深くかぶったその人は、そのシルエットからは女性なのか男性なのか分からない。――だた、明かりの灯るカフェを見下ろし、静かに小狼の名を呟いた。
パッと##NAME1##は窓の外に目をやった。
正確には空の方へ。何かの気配がしたのだ。
しかしそこには、ただ桜が舞っているだけ。
思い過ごしかと人知れず息を吐く。そしてもう一度、気配を感じたところを見上げた。やはり人影などなく気配もない。
今夜も美しい満月が夜の空に舞う桜を照らしていた。
「お二人とも鬼児狩りなんですね」
小狼が尋ねる。
「おう!“イの五段階”の鬼児までは倒したぞ!」
漸く店内の片づけが終わり、ケーキにありついた龍王に小狼が紅茶を出す。話をしながらも龍王の手は止まらず、テンポよくフォークが口に運ばれている。よほどお腹がすいていたのか、店のケーキが美味しいのか。多分両方かな。
「凄いですね。」
「草薙んとこは“イの四段階”倒したんだよな」
「ああ。しかしおまえでも倒せる。後は遭遇するかどうか、運だけだ。」
「ん~~♪ケーキも美味しいけど、このスコーンも最高ー!」
草薙の横で、譲刃がスコーンに感嘆の溜息を洩らした。そんな彼女のリアクションに##NAME1##は嬉しそうに笑う。
『ありがとう。そんなに美味しそうに食べてもらえると嬉しいっ。』
「本当に美味しいんだもの!」
「俺もそれくれ!」
「はい」
二人の会話を聞いてか、龍王も小狼にスコーンを頼む。
1つお皿に乗せる小狼だが、1つじゃ足りない、もっとくれと口をとんがらせて言う龍王に楽しそうに笑いながらもう一個と追加していく。
そんな楽しそうな二人を見て、サクラも嬉しくなってつい頬が緩んでしまった。
「仲良しになったみたいだね、あの二人」
「はい」
譲刃と二人でもう一度小狼たちを見ると、龍王のお皿には既に6つ7つのスコーンがお皿から溢れそうになっていた。そんな二人を見て、譲刃はサクラへと視線を移す。
「私も友達になりたいな。貴方と。だめ?」
とびきりの笑顔でそういう譲刃に、サクラは顔を真っ赤にして首を振った。そして、彼女もまた、とびきりの笑顔で答えるのだ。
「うれしい!」
花が咲き誇る笑顔で笑い合う二人を、##NAME1##は目を細め穏やかで優しい表情を浮かべて見ていた。
こういう出会いも旅の醍醐味かなと感じ、なんだかほっこりと胸の奥に暖かさを感じて、##NAME1##は楽しそうに笑う小狼と龍王、サクラと譲刃を無意識のうちに優しい微笑みを浮かべた。
「あんたも強いよな?!」
『――!?』
突然正面から声がした。
##NAME1##は驚いて思わず身体を後ろに反らす。
自分が立つ正面のカウンターにはいつの間に移動したのか、先ほどまで小狼と話をしていた龍王が座っていた。
「さっきの武器!あれで俺の技を止めたんだよな!」
『ま、まぁ…。』
「やっぱり!」
そう言うと龍王は嬉しそうに笑った。
まさか自分の大技が長棍の一撃だけで止めてしまうのだから。
しかも自分とそんなに歳の差もないようのな女の子が、だ。
それだけで龍王の目がキラキラと輝く。
「鬼児狩りはしねぇのか?」
『私はこっち(カフェ)の方がやりたいのよ。鬼狩りは外の仲間に任せてるの。』
本当に楽しいのか、笑顔を見せる##NAME1##に龍王は残念そうにカウンターから身を引いた。
「じゃあさ、今度手合わせしてくれよ!」
諦めきれない彼に##NAME1##も観念する。
了承の意味を込めて頷いた。
『機会があればね。そのかわり…』
「なんだ?」
不適の笑みを龍王に見せる。
『私は、強いわよ?』
その言葉に彼は嬉しそうに笑うと、また小狼のところへ戻っていった。そんな機会が来ることは無いだろうな、と思いながら##NAME1##も小さく笑うのであった。
「うまかったー!」
満足げな顔の龍王。四人とも見事に完食。いい食べっぷりであったと小狼、サクラ、##NAME1##、モコナはやり切った顔をする。
「じゃ、ここは龍王のおごりで」
「なんでだよ!!」
「だって龍王、お姉さんわんこさんが止めてなかったら今頃このお店のもの全部壊しちゃってたでしょ?それ弁償するのに比べたら」
「安いだろう」
「うっ」
ツッコむ龍王だったが彼女の言葉もごもっとも。続きを草薙が繋ぐ。
二人の言葉はすぱっといい切れ味だ。桜の札を差し出す蘇摩に草薙は、「悪いな」と声をかけるが、蘇摩は「いえ、こちらこそご迷惑をおかけしました。」と改めて謝罪する。
「龍王、強さを求め戦うのも良いですが、状況を見極め、無用な戦いを避けるのも、またひとつの強さですよ。」
「分かってる。」
彼はいつもこんな感じなのだろう。
彼に振り回されるのは毎度の事のようだ。
困ったような蘇摩に、龍王は背中に背負っている大きな剣の柄を握りながら答える。
「けどな、俺は自分がどのくらい強いのか試してみたんだよ。世界の広さを知らずに、自惚れないように。強い奴と出会えることが、俺のしあわせだからな。」
少年の瞳は真っ直ぐで橙色の炎が宿っていた。そんな彼を小狼は頼もしそうに見つめるのだった。