chapitre.5
夢小説設定
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「小狼君が目印つけてくれた場所にあったよー。この川の上流に。隠してあったし凄く古かったけどちゃんと動いたよー。――この川の水を止める装置。」
最近使った痕跡もばっちり、だそうだ。
「先生!違うよな!先生が子供達をさらったなんて、嘘だよな!」
自警団のリーダーがカイル先生に向かって叫ぶ。
まさか町の医療を支えてくれた彼が、誰よりも子供達を心配し、何度も往診して町に尽くしてくれていたカイル先生が。
信じたくなかった。
エメロード姫のせいであってほしかった。
しかしカイル先生の甲高い笑い声がリーダーの信頼を裏切ったと決定づける。
「あははっ!まったくとんだ計算違いだったな。」
物腰優しそうな口調から一変。
それは何か企んでいたような者の口調に変わる。きっとこれが彼の素…もとい本性なのだろう。
「ちょうどよくきた余所者に子供さらいの罪を着せて、さっさと目当てのものを手にしたら、この町から出ていくつもりだったのに…。」
「先生…っ。」
今度はこちらが言葉を発せなくなる。
あまりにも衝撃だったから。
誰もが彼を信じていたのに…。
裏切られた、という事実をグロサムさん達に突きつける。
「本当にあんたの仕業なのか…。」
「あの城の中に欲しい物があったんでね。それがちょっとやっかいな場所にあって、子供じゃないと無理だったんだ。」
『それで子供達を利用したのね…、催眠術をかけて…っ』
「そんなことの為に子供達を!」
「“そんなこと”?あれの力を知らないからそんな馬鹿が言えるんだよっ。」
「――待て!」
追い詰められたカイル先生は背後の川へと飛び降りる。落ちる!と思ったが、なんと彼は川の上を入っているではないか。
よく見ると水面のすぐ下に岩があり、どうやらその上を走っているようだった。
カイル先生が川へ飛び込む間際、子供と思われたものの中からモコナが隠れていて、光る粉をカイル先生の足元へ投げつける。
おかげで走った場所が光り足跡がくっきり。逃げられたがこれで追いかけられる。
倒れた子供に扮していたモコナをファイが外套とともに抱き上げる。
「モコナ大活躍だったねー」
「モコナ108の秘密技のひとつ、超変身なの!」
子供の背丈の竹馬のようなものを##NAME1##が錬成してつくり、外套とぬいぐるみを持たせ、その中をモコナが操っていたのだ。
モコナの覚束ない操作が余計に子供が催眠術によって歩いている雰囲気を醸し出していた。
モコナ様様である。
「あの医者に投げたものはなんだ。」
そう問う黒鋼の服の中にモコナはそそくさと隠れる。
「あれも小狼に頼まれてたの!前の国で手に入れた光る魚のウロコを粉にしたものなんだって!」
『なるほど。だから粉にしてほしいっていってきたのね。』
小狼が錬丹術でこのウロコを粉に出来ないか聞いてきたのだ。
用意周到すぎる小狼に感嘆の声が出る。
それはさておき。
光る足跡が城に伸びていた。
それを見て、小狼は気を引き締める。
おそらくサクラも城にいるはずだ。
「追いましょう。」
「で、やっぱりお前も行くのか。」
と黒鋼が聞いたのはもちろん##NAME1##。
行くと駄々をこねていた時より、心なしか顔が少し火照りが見える。
彼なりに心配してくれてるのだろう。
##NAME1##は笑顔を見せる。
『もちろん。だってまだあのやぶ医者、殴れてませんし。』
「……。」
結局はそこなのだ。
そうしなければ##NAME1##の気が済まないのだろう。
言い出したら聞かないのはどこの姫も同じなのか、と黒鋼は心の中で思うのだった。
「##NAME1##ちゃん辛くなったらいうんだよ。」
『はい。』
四人とグロサムさん、自警団のリーダーはカイル先生の後を追って一度も踏み入れたことのない城へと飛び込んでいく。
川を渡った先、城の門を潜る。
地上に見えた城の部分は見た通り崩れ落ちていたが、地下に降りる階段を見付けた。
カイル先生もそこを降りて行ったのだろう。足跡が続いていた。
降りた地下はほとんど原型をとどめていた。地下だからこそ300年の風化を免れたのかもしれない。
しかし城の中というのに、すこし作りが妙だった。
いくつも部屋があり、牢獄というよりは宿泊できそうな居心地のよさそうなものだ。
それにたくさんの少しサイズの小さいベッドがいくつもある。これは…。
『足跡が無い!』
「気付いて靴を脱いだな。」
通路の端に脱ぎ捨てられた靴があった。靴底がまだ光っていたのでカイル先生のもので間違いなさそうだ。
光る足跡はなくなってしまったが、それとは別の足跡がいくつもあった。
大人とは違うサイズ感。
「子供か!?」
とグロサムさん。
「これ消す暇はさすがになかったかー」
『向こうから気配がします。…それもたくさんっ』
##NAME1##が指し示す先は足跡が続いている方向だ。
カイル先生の消えた足跡の代わりに今度は子供達の足跡を追った。
『はぁっ、はぁっ―!』
息が苦しい…っ。
ちょっと走っただけなのにこんなにも息が上がるなんて。
その様子を黒鋼とファイは心配そうに見ていた。小狼はサクラがすぐ近くにいる気がして##NAME1##の様子の変化に気に留める余裕も無く無我夢中で走り続ける。
「サクラ姫――!」
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