chapitre.5
夢小説設定
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セイが再び眠りについた後、小狼はカイル先生の診察室に訪れていた。
ちょうどカイル先生が往診から帰宅する。
「どうされましたか?」
「すみません。手を怪我してしまって…。薬があればお借りできないかと思って。」
「見せてください。」
さすがお医者さん。
小狼の手の怪我を手際よく消毒し、手当てしてくれた。
「どこかにぶつけましたか?」
「ちょっと転んで…。今日も子供達の往診へ?」
「えぇ。食欲がなかったり、眠れなくなってしまっている子もいて…、」
辛そうな表情を見せる。
「セイさんはまだ目を覚まされてませんか?」
「はい…、まだ。かなり衰弱してしまっていて…」
「小狼さんのお姉さんでしたね。心配ですよね。」
「……。」
今、セイは小狼の姉設定だ。
彼はそれっぽく心配そうな演技をカイル先生にする。
「みなさんは城へ行かれたんですよね。」
「はい。」
「なにかわかりましたか!?」
食いつくようにカイル先生が小狼に問う。
そしてその小狼から語られた衝撃の事実。
「子供達がいなくなったのはエメロード姫のせいではないかもしれません。」
「では誰が!?」
「…グロサムさんを城の近くで見たんです。」
それはセイを見つけ、急いで町へ戻ろうとした時だった。
前回と同じ場所。小狼達から少し離れた木々の向こうでずぶ濡れになったグロサムさんがいたのだ。
まるで…、
「…まるで城の川を渡ったみたいに。」
「でもあの川は流れがはやくて、」
「渡れません。…けれど町をすべて探しても見つからない。外へ出た形跡もないなら後はあの城だけです。」
小狼から語られた言葉にカイル先生は言葉が出て来なくなった。
まさかグロサムさんが子供達を…、と。
「今晩、自警団の人達とグロサムさんを見張ることになりました。」
「…そんな、グロサムさんが…っ」
自分や町の人達と同じくらい、子供達の事を心配してくれている、そう思っていたのに…。
子供達をさらったのがエメロード姫でなくこの町の領主・グロサムさんだなんて…。
カイル先生は頭を抱えて椅子に崩れるように座り込んでしまう。
小狼はそんな彼を見、そのあとどんよりとした空を見上げた。分厚い雲が空を覆っていた。
「今日も…、雪になりそうですね。」
降った雪で足跡が消えてしまいそうなくらいの。
そう心の中で小狼は呟いた。
* * *
雪が降り始めた夜。
一軒の家から黒い猫のぬいぐるみを抱きかかえ、外套をすっぽりかぶった子供が出てきた。
その足取りはおぼつかなくて。
ふらふらと。まるでなにかに導かれるように向かう先はエメロード姫の城。
その後を気配を消して追う、一人の影。
後を付けられているなど、気づくこともなく子供はその小さな足で城の手前の激しく流れる川の手前まで来た。
その時強い風が子供をあおった。
その風に耐え切れず子供はふらっと倒れてしまう。その様子に影から見ていた人物が慌てて身を隠していた木から姿を現す。
「どうしましたかカイル先生?」
「―!?」
振り返ると木の傍にたたずむ小狼の姿。
子供の後を追っていたのはカイル先生、その人だった。小狼に呼び止められ慌てて振り返るとそこには自警団の人達。
カイル先生はなおも演技を続ける。
「私はあの子を心配して後を付いて来て…、みなさんがグロサムさんを見張るというので…っ。だから…!」
「――私が、どうした?」
「グロサムさん!?どうしてここに!?」
小狼の背後の木から姿を見せたのはグロサムさんその人。見張ると言われていた人がなぜここにいるのだろう。それは小狼が答えてくれた。
「グロサムさんは犯人じゃありません。ずぶ濡れになっていたことがその証拠です。」
「…あれほど探して見つからないなら、やはり城ではないかと何度も来てみたんだ。…だが川の流れに阻まれて渡れない。」
何か手立てはないかとやってみたが、川に落ちてしまった、ということだ。
犯人はグロサムさんではない。むしろ消えた子供達の事を誰よりも心配し、危険をかえりみず探し続けてくれていたのだ。
「犯人ならもっと楽に渡る方法を知っています。」
「……。」
『――いい加減、観念してはいかがですか?カイル先生…いえ、このやぶ医者っ。』
「あ、あなたは!?」
グロサムさんの背後から姿を見せたの人物にカイル先生は瞠目する。動揺が隠し切れない。
『殺したはず、でしたか?』
「――…っ。」
「一晩も雪の中にいてよく生きていられたものだ。」
カイル先生の前に出てきたのはセイ。
昨晩ここで彼に襲われ、森の中へ隠され人知れず凍死という形で殺されそうになったのだ。
小狼達に発見されるのがあと数分でも遅ければきっと今頃本当に死んでいたかもしれない。
姿を隠してくれていたグロサムさんが心配するようにセイを見下ろした。
隠してくれていた彼にセイは微笑んでペコリと会釈する。
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