chapitre.5
夢小説設定
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ダメもとで城の手前までやってきた小狼達。
相変わらず城の手前の川は今日も激流だ。
これでは城に行けない。
なら子供たちは一体どこへ…?
そう考えながら小狼はいろんな可能性を考える。
ふと黒鋼が一歩足を踏み出した。
そのときコツンと何かを蹴ったような感覚がした。
それはとても雪、の感触ではなくて。
気になり蹴った“何か”の辺りの雪をかき分けてみる。
そこから出てきたのは…。
「こいつは…、」
「黒鋼さん、どうかしましたか?」
黒鋼は手にしたものをファイと小狼にも見えるよう、持ち上げて見せる。
「それって、もしかしてセイちゃんの、靴?」
明らかに女性物の靴。
ココアブラウンのショートブーツだ。確かここへ来る前の町で購入したもの。
黒鋼が手にしたそれは、その片割れだ。
果たしてこれも手がかり、のつもりなのか。
それともう一つ見つけたものがあった。
靴が落ちていた近くの木だ。
木の肌に黒いシミのようなものが付着している。
よく知る者にはそれがなんなのかすぐにわかった。
「血…、だな。」
「まさか二人の身になにかあったんじゃ…っ」
「この色からすると随分時間が経ってるね。」
「おい、お前達あそこなにかあるぞ。」
三人から離れた場所で一人立ち尽くすリーダーが道から外れた森の中を指さした。
その場所だけ異様に雪が山のように積もっているのだ。
良く目をこらして見なければ気が付かない。
確かに不自然な雪の積もり方だ。気になって道を踏み外して森の中へ入る。
その積もった雪の正体に小狼達は一瞬言葉を失った。
「セイさん!?」
「セイちゃん!」
「――っ!!」
うっすらと積もった雪の下から見覚えのあるドレス。雪を払い黒鋼が急いで抱き起す。
抱えた身体は信じられないくらい冷え切ってしまっていた。すぐさま息があるか確認する為、口元に手を当て手首の脈をとった。
トクン、トクン…
「まだ息があるっ。」
と黒鋼。
「まさか一晩中雪の中に…っ」
「とにかく急いで診療所へ戻ってカイル先生に見てもらいましょう!」
おそらく木に付着していた血痕も彼女のものだろう。額に打撲傷がある。
とっくに出血は止まっていたが、あきらかに“誰か”に殴られ気を失い、人目のつかない森の中へ隠され、人知れず凍死させるつもりだったのかもしれない。
凍死寸前のセイを黒鋼が抱え、小狼達は急いで宿泊施設兼診療所へと戻ることに。
自警団のリーダーはカイル先生を呼んでくる、といって一足先に町へ駆けて行ってくれた。
消えた女性の一人が見つかった、という話はすでに町中に流れ、町の人達は軽く興奮気味だった。
話を聞いたカイル先生も慌てて診療所へ駆けつけてくれて、すぐさまセイの容態を診てくれた。
黒鋼に抱えられたセイを見たカイル先生はかなり驚いた様子だった。セイの顔が真っ青で手と、なぜか裸足だった指先が凍傷で危険な状態だったからだ。
一晩中、身を貫くような寒さのなか放置されていたのだから身体も氷のように冷たい。
「とにかく安静に。暖かくして休ませて上げてください。」
「ありがとうございます。」
退室するカイル先生に軽く頭を下げる小狼。
ベッドの傍では黒鋼とファイが彼女を見守っていた。
カイル先生が部屋から出ると、小狼もセイの方を振り返る。
身体はまだ冷え切っているのに熱が上がってきたのだろう。頬が赤く染まっていた。
「明らかに“誰か”に襲われたようだな」
「だね。けどどうしてセイちゃんだけ…。それにサクラちゃんはどこへ…」
『ぅ…っ、』
「――!セイさんっ!」
小さくうめき声をあげセイの意識が戻る。
小狼が何度も声をかけた。
うっすらを目が開く。
『しゃお…らん…、?』
「はい!大丈夫ですか!?おれカイル先生を呼んできます!」
小狼は急いで部屋のドアを開けて出て行こうとする。しかしそれをセイは今出せる精一杯の声を張り上げて引き留める。
『待って、小狼…、待って…、』
「小僧、待て。」
「小狼君っ」
「―!」
ドアノブに手が触れたところで小狼が止まる。
セイの息遣いが荒い。
だんだん熱が上がってきているのだろう。うまく声が出せない。
それでもセイはなにか伝えようと口を動かす。
かすれて聞き取れないほどの声に黒鋼が耳を寄せて聞いた。
『あの…やぶ医者…、気を付けて…』
「―っ!」
『子供達を…さらったのは…、』
カイル先生――。
それだけを伝えるとセイは気を失うように眠りについた。その言葉を聞いた小狼の顔が確信めいたものになる。
まだ昼過ぎの時刻だが冷え込みが激しい。外はまた雪が降ってきそうな天気だった――。
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