chapitre.5
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三人はサクラ達の部屋に入った。
小狼が窓から枝に向かって伸びている毛布を引き寄せる。
「この窓から出ちゃったのかなぁ、二人とも。」
「伝説みたいに金の髪の姫とやらにさらわれたのか、それとも子供達をつれていった誰かを見たか。」
黒鋼が窓の外を眺める。
「小狼君は本当に三百年前の伝説のお姫様が子供をさらったと思ってるのー?」
「まだどちらとも言えません。」
冷静に努めようとする小狼。
きっと本心はサクラが心配でたまらないのだろう。##NAME1##さんも無事だといいのだが、と願うばかりだ。
「けどカイル先生に聞いたんですがこの国には“魔法”や“秘術”を使える人間は認知されていないようです。」
「ここには魔力みたいなものを使える人間は公然とは存在していない?」
「この歴史書を見ていても三百年前のエメロード姫のこと以外、それらしい不思議な現象も記されていません。もし本当にエメロード姫が何らかの方法で蘇って起こしている事件なら、この窓から視認できるくらいの距離に金の髪の姫が来てモコナが何も感じないというのは…。」
「モコナこの世界に来てから何も感じない。」
モコナは手を横に振る。
「寝てただろうおまえは!!」
ぐーぐーと俺の腹の上で!と付け足す黒鋼。
昨夜、モコナは男性陣の部屋で寝ていたのだ。
「凄く強い力だったら目が覚めるもん!」
ぷりぷりと怒るモコナ。
黒鋼はよっぽどお腹の上で寝られたのが嫌だったのだろう、それでもどけないところに彼の優しさが垣間見える。
「家の鍵も壊されていない。子供達が騒いだ様子もない。それに不思議な力じゃないならサクラちゃんが見たっていうお姫様は?」
「………。」
小狼は心当たりがあるようだったが、今は何も答えなかった。
「おい、あれ見ろ。」
窓の外を見ていた黒鋼がなにかに気づいたようだ。
「なにかありましたか?」
「なになに~?」
うながす視線の先にはひらひらと風になびく服の切れ端。あの色には見覚えがある。##NAME1##の着ていたドレスの色だ。
「どうやら子供達をさらった“なにか”をみて後を追ったようだな。」
「金の髪の姫にさらわれた、のではなく…」
「自らの意志で部屋を出たってことかなー?」
明らかに##NAME1##が小狼達にわかるようにつけたものだろう。
拐われたのなら、あのような目印を作る間などないはずだ。
まだ残された手掛かりが他にあるかもしれない、と思った小狼達は外へ出ることにした。
階段を降りたところで診察バッグを手に持ったカイル先生と鉢合わせする。
小狼達を見たカイル先生が申し訳なさそうな表情を見せた。
「本当にすみません。町の人達が失礼を…。」
「いいえー。みんないなくなった子供達が心配なんでしょう。」
「でもサクラさんと##NAME1##さんもいなくなってしまって…。」
「…診察ですか?」
「残った子供達の様子を見てこようと思って。」
それだけを言い残してカイル先生は足早に診療所をあとにする。
小狼達も外へ出ようとキィ…、と扉を開けるそこにいたのは先程のリーダーが待ち構えていた。
目を離すもんかとばかりに「どこへ行く!」
と食って掛かる。
先ほど黒鋼に一捻りされたこと、根に持ってるのだろうか。
「いなくなった子供達とオレの妹と助手の姉の手掛かりを探しにー。」
「一緒に行くぞ!!」
正義感の強い彼はずいぶん仕事熱心な人の様だ。側にいるというのに彼の声は良く通る。
だが悪く言えば彼の耳に通る声はやかましく、短気な人はイライラするであろう、…そう黒鋼のように。
「おまえ達だけで行動させたら何しでかすか分からないからな!」
「聞きたいことがあるんです。…ここ数年凶作だと町長に伺いました。」
「ああ。自分達が食うので精一杯だ!」
「この町の土地って殆どグロサムさんのものなんですってー?」
「借りた土地代はどうしてんだよ。」
「待ってもらってる!」
リーダーはギッと歯を噛みしめた。
「カイル先生がグロサムさんに掛け合ってくれたんだ!先生が言ってくれなかったら、今頃俺達はこの町を出なきゃならなかったかもしれないんだ!」
「へー。ってことはグロサムさんはここ数年あんまり収入的にイイ感じじゃないと。」
「………。」
ファイは納得した表情を浮かべ、小狼はさらに考え込む仕草をする。
歩き続けた小狼達は町から森へと入っていく。
やはり一番怪しいのはあの金の髪の姫が住んでいたという古城だろうか。
「おまえ達馬を持っていただろう。何で乗らないんだ!?」
先程から城へと向かっているが、何故か徒歩である。馬を持っているのなら、そっちが速いだろうに。
「馬からだと見逃しちゃうでしょうー。」
リーダーはファイの言葉にはっとなる。
「だめだな。」
腰を下げて雪道に目を凝らす黒鋼。
昨夜もずいぶん雪が降ったので小さい子供の足跡はとっくに消されてしまったようだ。
「夜通し降った雪で足跡は消えてる。」
「町の周辺は既に探されてますよね。」
「当たり前だ!!」
「城の方はどうですか?」
「城の手前までは探した!けどあの川があるから向こうへは渡れない!!」
小狼が城の方向を指差す。リーダーは悔しそうに手を握りしめた。
激しく流れる川が行く手を塞いでいるので、どうしても渡ることが出来ないのだ。
なおも冷静に捜索を続ける三人。
リーダーから見ればまったく焦りも感じられない。あまりにも淡々としていて、本当に心配して探しているのだろうか、と疑ってしまう。
「おまえらなんでこんなに冷静なんだ?旅の仲間がいなくなったんだろ?」
「…少なくともあのガキに関してそう見えるんならお前の目は節穴だな。」
黒鋼の目にはそうは見えていないらしい。
声に出さずとも彼には小狼がとても冷静には見えなくて、むしろ焦る気持ちが駄々洩れ、だそうだ。