chapitre.1
夢小説設定
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「あなたの対価はそのイレズミ。」
「――!」
常に、にこにこしてた彼だったが魔女が求める対価を耳にするとその顔がこわばった。
手持ちの杖ではダメかと聞くが、案の定すっぱり断られる。
「言ったでしょう。対価はもっとも価値のあるものをと…。」
「…仕方ないですねぇ。」
そういって彼もまた観念したのか悲しそうに笑うと背中から大きなイレズミが浮かび上がると魔女の元へと離れていく。
一体どういう原理なのだろうか。
魔法や魔術とは無縁の世界だった為、セイには彼の持つイレズミの価値などまったく理解できなかった。
「“あなた達”はどう?自分の一番大切なものをあたしに差し出して異世界に行く方法を手に入れる?」
魔女は私と少年に問うた。
しかし聞かれるまでもなく。
「『はい。』」
二人の声が重なる。
二人とも覚悟と信念を秘めた声だった。
「あなた達の対価が何かまだ言ってないのに?」
「『はい。』」
「…。あたしが出来るのは異世界に行く手助けだけ。その子の記憶のカケラを探すのも、不老不死の法を見つけるのもあなた達が自分の力でやらなきゃいけないのよ。」
「…はい。」
『もとよりそのつもりです。』
二人の揺るがない想いにいい覚悟ね、と魔女はふっと笑みをうかべた。
店の奥からもう一人の少年が走ってくる。
両腕に何か白いのと黒いのを抱えているようだ。
それを魔女が受け取る。
「この子の名前はモコナ=モドキ。モコナがあなた達を異世界へ連れていくわ。」
しゅたっと短い手を上げて挨拶する謎のかわいい生き物。うさぎ?たぬき?
「モコナはあなた達を異世界へ連れていくけれどそこがどんな世界なのかまではコントロールできないわ。だから、いつ、あなた達の願いが叶うのかは運次第。」
けれど…、
世の中に偶然はない。
あるのは必然だけ。
「あなた達が出会ったのもまた必然。」
『必然…、』
意味深な言葉を紡ぐ魔女。
まるで私がここにくることを前から知っているかのような口ぶりだ。
「小狼、セイ…、あなた達の対価は関係性。」
「『――!』」
「小狼にとって一番大切なものはその子との関係…そしてセイ、あなたにとって一番大切な人は誰?」
『私の…一番大切な人は…、お母様です…。』
魔女の言葉にセイは故郷に居る母を思い浮かべる。優しいお母様…。誰よりも守りたい人。
「そう。…モコナを受け取るならその二人からあなた達の記憶が消える。会えてもまったくの赤の他人になる。…もう同じ関係には戻れない。」
「『――。』」
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