chapitre.5
夢小説設定
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「変わった衣装だな、旅の人だろ?」
「はい。探しものがあって旅を続けています」
「行く先は決まってるのかい?」
「いえ、まだ」
小狼がそういうとおじさんの顔から笑顔が消えた。
「…だったら悪いことは言わん。北へ行くのはやめたほうがいい。」
「なんでかなぁ?」
とファイ。
「北の町には恐ろしい伝説があるんだよ。」
「どんな伝説ですか?」
“伝説”という単語に小狼が食いつく。
半分サクラの羽根を探す為、もう半分は小狼の性分といったところか。
おじさんは静かに語り始めた…。
―――昔、北の町のはずれにある城に、金の髪のそれは美しいお姫様がいました。
ある日、姫の所に鳥が一羽飛んできて輝く羽根を一枚渡してこう言いました。
「この羽根は“力”です。貴方に不思議な“力”をあげましょう」
姫は羽根を受け取った。
すると王様とお后様がいきなり亡くなり、姫がその城の主になった。
そしてその羽根にひかれるように次々と城下町から子供達が消えていって、二度と帰って来なかったそうだ――。
「――という物さ。」
『それはおとぎ話というやつですか?』
「いいや、実話だよ。」
「実際に北の町にその城があるんですね。」
「もう三百年以上前の話だからほとんど崩れちまってるがな。」
肩をすくめる仕草をするおじさん。
『三百年以上も昔のお城、か…。興味深いですね。』
おとぎ話に登場した“輝く羽根”にももちろん興味をそそられるが古城なるものも聞くと身体がうずうずしてくる。
「で、そんなこわい話があるから北の町には行っちゃいけないのー?」
「いや――、」
伝説と同じようにまた、子供達が消え始めたそうな――…。
『――“力をくれる輝く羽根”か。』
聞くからにサクラの羽根っぽい。
おそらく全員がそう思っているだろう。
この国の衣装に着替えた五人とモコナ。
サクラが稼いでくれたお金で馬も三頭調達し、目指すは北の町。
小狼はサクラを、ファイはモコナと一緒に、セイもドレス姿(本人は不満たらたらだが)なので黒鋼が乗る馬に乗せてもらって雪道を進んでいた。
『ありがとうございます。』
「あぁ?」
『馬、一緒に乗せてくれて。』
黒鋼はぶっきらぼうに、おう、とだけ返す。
「モコナ、まだ強い力は感じない。」
「でも羽根がないとは言い切れないよねぇ。」
『何か特殊な状況下にあるのかもしれないね。』
「昔の伝説って言ってたけど、春香ちゃんのとこでもそうだったしね。」
「―で、行くのか。」
「はい」
黒鋼の問いに小狼はまっすぐなその瞳で答えた。羽根がある可能性が少しでもあるなら彼が行かないわけがない。
「北の町へ」
* * *
「冷えてきたな」
「雪降りそうだもんね」
さきほどの町とは一変。
すいぶん寂れた雰囲気が漂う。
道の脇には未だに溶けていない雪が積もっていた。
北の町というのだからきっとさっきの町よりさらに冷え込みが激しい場所なのだろう。
「サクラ姫、大丈夫ですか?」
「平気です。この服暖かいから」
気遣う小狼にサクラは優しく微笑み返す。
「サクラちゃんの国は砂漠の真ん中にあるんだったよねー。」
「はい。でも砂漠も夜になると冷えるから」
『寒暖差が激しいのかな?砂漠って私行ったことないなー。やっぱり大変?』
「そうでもないよ。」
少ないけれど水も食べ物もちゃんとあるから、
と砂漠未経験のセイにサクラが解説する。
「セイちゃんは寒いの平気ー?」
『大丈夫ですよ。私が暮らしてた場所は都から北に位置するので北国でしたし、それに…』
「それに?」
続く言葉をファイが尋ねる。
セイは後ろで馬の手綱を操る黒鋼をちらりを見る。
カチリと目が合う。
ふふっとセイは笑い返した。
『黒鋼さん、子供みたいに体温が高いから暖かいんですっ。』
「誰が子供だ!」
「きゃー黒たんがおこったー。」
「黒鋼子供ーっ。」
「うるせー!」
ふざける大人達とモコナに小狼とサクラはたじたじ。
「黒るんとこはー?」
黒鋼子供説から離れファイは彼にも尋ねた。
黒るん言うな、と突っ込みながらきちんと返す黒鋼。自分の国に興味を持ってくれのはやっぱり少し嬉しい気がする。
「日本国には四季があるからな。冬になりゃ寒いし、夏になりゃ暑い」
「すごいねー。」
「ファイのところはどうだったの?」
ファイの服の中に入っていたモコナが彼を見上げた。
「寒いよー。オレのとこもセイちゃんと一緒で北の国だったからね。ここより寒いかな―?」
『ファイさんの元居た国の衣装も北国使用でしたもんね。』
「そうだね。あったかいんだーあれ。セイちゃんの外套もそうだよね。」
セイが身に着けていた元居た国の服で黒い外套はかなり分厚く重い。まさに防寒服だ。
「小狼君は?」
と今度はサクラが彼にも聞く。
「俺は父さんと色んな国を旅してたので。」
「寒い国も暑い国も知ってるのね。」
彼女の素直な感想に小狼は少し頬を染めたのだった。
しばらく進んでいると道の先に看板を見つけた。
モコナの指した先には“SPIRIT”の文字。
そう書いてはあるが実際は全く読めない。
「なんて書いてあるのかなぁ」
「…“スピリット”って読むんだと思います。前に父さんに習った言葉と同じ読みなら、」
『へぇ~、』
「読めるんだーっ」
「すごいね。」
セイとファイとサクラからの称賛にまたまた小狼の顔がほんのり染まる。
が、そう呑気にピクニック気分ではいられないようだ。
その雰囲気を感じ取ったのは黒鋼。
「はしゃいでる場合じゃあねぇみたいだぞ。」
『――…。』
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