chapitre.5
夢小説設定
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どんよりとした寒空。それは雨を降らすものとは違う。
ふわふわ、と懐かしいものが空から舞い落ちた。
そっと手のひらに落ちたそれをじっと見つめるセイ。それは手のひらの熱ですっと溶けて水になった。
『雪、か…、』
シン国の北に位置するラン家の領地は文字通り雪国だ。土地も年の半分は雪に覆われている。
そんな雪国出身の彼女が空から舞い落ちるそれを見るのはずいぶん久しぶりのような気がした。
新たに訪れた世界の衣装に着替え一足先に外に出て雪を眺めているとふと上からバサ、と外套を頭からかけられた。ん?と振り返るとそこには同じくこの世界の衣装に着替えた黒鋼が。
「着てろ。風邪ひくぞ。」
『ありがとうございます。』
「雪がそんなに珍しいか。」
寒い中外に出て、わざわざ手を出してまで雪を見ていたセイの様子にそう思ったのだろう。
『いえ、そうではなくて。…ただ懐かしいな、と思って。国を出てそんなに経ってないはずなのに…。』
「……。」
「サクラちゃんは砂漠の国出身だから雪は初めてかもしれないねー」
黒鋼のあとからファイ、そして小狼とセイと同じようにドレスに着替えたサクラがやってきた。
これからここより北に位置する町へ向かうところだ。伝説の金の髪のお姫様のおとぎ話が伝わる町へ…。
事をさかのぼること。数時間前――。
<じろじろ/strong>
<じろじろ/strong>
視線が痛い。
非常に。
そう思うのは自分だけだろうか。
痛い視線をびしびしと浴びながらなおも食事を続けるこの場所は、新たにやってきた世界のご飯屋さん。腹が減ったとモコナと黒鋼が言うのでじゃあここ入ろうよーと物怖じせずファイが店の扉を開いたのがこの場所。
えーっ、と子供組+セイは大人たちの自由さにたじたじ。大人しくついて行くしかない。
「なんか注目されてるねーあははー」
いや、いまに始まったことではないのだが。ずいぶん、いや店に入った時点から注目されまくりだ。
「やっぱりこの格好がいけないんでしょうか?」
『この国の人達とは全然違うもんね。』
「そーそー特に黒たんとセイちゃんがー」
『え、私も?』
おっと。それは気が付かなかった。
確かにみんな怪しいが、ひと際怪しいのはやはり漢字圏出身の黒鋼とセイ。
ファイと小狼とサクラはまだこの国の人達に馴染める服装…だと思う。
それよりも、と小狼がファイに詰め寄る。
「あの、大丈夫なんでしょうか?この食事」
「んん?」
「この国のお金ないんですけど!」
なかなか衝撃的な話なのだがファイはあははーと軽く受ける。その視線の先にはサクラ。
絶対なにかさせる気だ。
「大丈夫だよー、ねっ?サクラちゃん」
「え?」
へにゃっと笑いかけられた少女は目を丸くした。
――。
「えっと…こうなりましたけど。」
違うテーブルの上に散らばる“トランプ”なるもの。セイは初めて見る札だ。
そういってサクラが不安げに差し出したカードは全て同じ王冠の絵柄。
なんかよくわからないが、最強の手札というやつのようだ。
店の雰囲気がどよめくのが感じられる。
「何度やっても負けないなんて!どうなってるんだ一体!?」
「イカサマじゃないのか!?」
そんな暴言を気にも止めず、作戦成功とばかりにジャラジャラと勝ち取った賞金を袋に入れていくファイ。
イカサマじゃなのにあの顔はイカサマ師のようだ。
「イカサマしてるヒマなんかなかったでしょー。文句あるならあの黒い人達が聞くけどー?」
と言ってこちらに振るファイ。
タイミングよくモコナにお肉を取られて不機嫌マックスな黒鋼と機転を利かせたセイが、
「<あぁ?/strong>」
『なにか?』
「い、いや…っ」
「う、疑って悪かった…っ」
さっきの威勢はどこへやら。
二人の鋭い視線に反論出来ず、対戦相手はそそくさと自分のテーブルへ戻っていく。
「はいサクラちゃんお疲れ様ー」
『サクラ強ーい!』
ファイにエスコートされながらセイと黒鋼が座るテーブルに戻ってきたサクラ。
「これで軍資金ばっちりだよー」
『食い逃げしなくても済むね。』
そもそも食い逃げという、という言葉が出てくるのもどうかと思うのだが。とにかく小狼が一番気にしていた食い逃げをせずに済んだのだから良しとしよう。
「この国の服も十分買えるしねー」
ファイは前に行った国・高麗国でのサクラの荒稼ぎ(本人そのつもりない)のことを覚えていたのだろう。
おそらくサクラの幸運にはこの先でも度々お世話になるかもしれない、とセイは思うのだった。
そこへ店の店員であるおじさんがドリンクを運んできた。サクラの荒稼ぎっぷりをみていたのだろう。すごかった、と感想を述べた。
「ルールとか分かってなかったんですけど、あれで良かったんでしょうか?」
「面白い冗談だな!」
はっはっ!と声を出して笑うおじさんにサクラもたじたじ。冗談じゃないんだけどな…、と呟くサクラにセイはこっそり、いいんだよ、と耳打ちする。
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