chapitre.3
夢小説設定
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宙に浮いていた羽根を掴み、小狼はサクラを振り返った。
羽根が光りを放ちながら、サクラの中に吸い込まれていく。
意識を失って倒れこむ彼女を受け止めて、小狼はその身体をぎゅっと抱きしめた。
「羽根、もうひとつ……取り戻せた――。」
* * *
「ありがとう。領主をやっつけてくれて。」
お礼の言葉を述べる春香に、小狼が慌てて首を横に振った。
「おれは何もしてないよ」
「あの城の秘術が解けなかったら、ずっと領主には近づけなかった。だから小狼達のおかげだ。」
「こっちこそありがとぉ。春香ちゃんにもらった傷薬良く効いたよー」
『ほんとに!すごいね!もう傷跡もなくなってるもの。』
ファイとセイの言葉に、春香はふんわりと微笑んだ。
「母さんがつくった薬なんだ。私にはまだ無理だけど、でも頑張って母さんに恥じない秘術師になる」
『春香ならなれるよ。絶対に!頑張って!』
ぽんぽんと春香の頭を撫でて、セイはにこりと笑った。
余談だが、春香から貰った傷薬は本当によく効いたのだ。
秘妖の酸の雨によって負った傷をセイが錬丹術で応急処置した後、その傷薬を使ったところあっという間に癒し、今ではもう傷ひとつ残っていない。
傍らに居る黒鋼を一瞥して、セイはふふっと思い出し笑いをした。彼は傷薬を塗ってもらうのを大層嫌がったからだ。
本当のところはセイの応急処置という名の手を繋ぐという行為を、だ。
小狼もファイも素直に応じてくれたのに彼だけが駄々をこねるのでファイに身体を取り押さえて貰い、嫌がる黒鋼の傷口を塞いで、薬を塗ってあげたのはほんの数時間前のこと。
クスクスと笑っていたセイは、ふと視線を感じて顔を上げた。
見れば黒鋼が不機嫌そうな顔をしてこちらを睥睨している。
「……何笑ってんだよ。」
『いえ、別に?』
意味ありげに小さく笑って、セイは彼から視線を逸らした。
図体はでかいくせに薬を嫌がるなんて子どもみたいなんだから、と考えているセイ。
が、黒鋼が薬を塗るのを嫌がった本当の理由が、薬を塗るのが嫌なのではなくセイと手を繋ぐということと、その彼女から薬を塗ってもらうことに抵抗があったからだということをセイは知らない。
モコナが背中から翼を生やし、足元に魔法陣が出現する。
ほんのりとした光がセイたちを包み込んだ。
「あ、そろそろ行く?」
「行く」
モコナを指差して、春香はあんぐりと口を開けた。
「なんだ!?どこ行くんだ!?なんであれ、羽根が生えてるんだ?」
驚く春香や町人をよそに、モコナはがばぁっと大きく吸い込もうとする。
「まだ来たばかりなのに…!」
駆け寄ろうとする春香を振り返り、小狼は言った。
「やらなければならないことが、あるんだ。」
モコナに吸い込まれていく中、セイは春香に向かって一度だけ小さく手を振った。
『春香!あなたがこの町を導いてあげて。あなたのお母様がそうしたように今度は春香が。それと私が言ったこと、忘れないでね。』
「うん、忘れない。約束する。セイありがとう!」
その言葉を最後に、セイたちはその場から姿を消した。
がんばれ春香。
あなたならきっとこの町をすてきな場所に出来るから――…。
高麗国編 Fin。To Be Continued.
2022/03/25
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