chapitre.3
夢小説設定
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「俺様をそんな目で見るな!生意気な“小娘”め!」
ゴォオ!
ドゴッ!
『――!』
突き出した拳をさらりと横にかわしたセイ。
しかしその威力は凄まじく拳圧、というのだろうか。壁が凹んだ。
キッと息子を睨みつける。
『私をその名で呼んでいいのは黒鋼さんだけだ。お前にそんな名で呼ばれる筋合いなどない。――覚えておけ。私はシン国第十一皇女セイ・ランだ。お前如きと口もかわせぬ相手だということをな!』
「な、なにを…―っ!?」
乱打する拳をセイは次々と長棍で流すようにかわす。
『はぁ!!』
「こしゃくな!」
『――ッ!』
飛んで長棍をたたき込もうとしたが意外にも掴んで受け止められる。
そしてそのまま壁へと思いっきり投げ飛ばされた。
受け身を取ろうと体制を整えようとするが、ものすごい速さにバランスを崩し、左肩から壁に激突する。
ゴキン――。
『―……ッ!!』
嫌な音がやけに響き、折れたか、と思った。
ブランと力なく垂れる左腕。
息子はニヤリと笑う。
「腕が折れちまったかー?」
セイも自ら触って確認した。どうやら折れたのではなく脱臼の様だった。
いっそ折れてくれた方が術で治せたんだけどな、なんて思う。
『(…脱臼はさすがに自分じゃどうにもできないか…)』
長棍を右手に持ったまま左腕を抑えながら立ち上がる。
「次は右腕をへし折ってやろう!はっはっ!」
『うるさい。』
「…何ぃ!?」
『うるさいっていったんだこのバカ息子!』
「き、貴様っ!!」
顔を真っ赤にし、セイに殴り掛かる。
しかしセイは冷静にそれをかわしていく。
『かわいそうだなんて思わないよ。自分のしてきたことをあの世で後悔するといいわ。同情なんてしない。』
「秘術によって強くなった俺様に勝てるはずがない!!」
『関係ない。――雷鳴っ(ライメイ)!!』
振りかぶって長棍を突き出す。
バリバリィ!と電撃をまとった突きの一撃が息子に命中した。
「ぐわぁあー!!」
その勢いのまま壁に激突。
意識がこと切れたのか、そのままずるずると滑り落ち床に臥す。
『ぷはぁ!はぁっ、はぁっ…、』
さすがに一日に二度も大技を使うのは消耗が激しいな。
雷の音は下の階で秘妖を無事?撃破した黒鋼達のもとにも届いていた。
―――…、
「――雷?」
「領主とやらか?」
と黒鋼。
「そうではない。…どうやら女の童が派手に暴れたようだ。」
「それってセイちゃんかな?」
「…だがずいぶん弱っているようだな。」
助けに行ってやるといい、と言い残し秘妖は領主にお灸をすえに行くと姿をくらました。
* * *
『うっ…、』
ずるずる身体を引きずって壁際まで移動し、もたれる。
大技を連発し消費した体力もすこし回復してきたが脱臼した肩だけはどうにも出来なくて。
黒鋼さんとファイさん早く来ないかなぁ、なんて思いながら息を付く。
小狼も心配だし。
「うお、こいつはバカ息子じゃねぇか。」
「あーほんとだ。なんか黒コゲだねー」
『――…っ!黒鋼さん、ファイさん!』
「セイちゃん?」
階段を使って上の階に上がってきた二人が目にしたものは丸コゲになって倒れている領主の息子。
そしてその向こうに武器を手にしたまま、壁にもたれるように座るセイ。
二人は慌てて駆け寄った。
「どうした。」
「もしかして腕、折れてる?」
だらんと力ない左腕を見てファイは心配そうにする。
セイはふるふると首を振った。
『脱臼してしまって。…黒鋼さん、はめれますか?』
「…。出来るが、荒っぽいぞ。それでもやるか。」
『かまいません。お願いします。』
「…いい度胸だ。」
覚悟のある目をするセイに黒鋼はふっと笑った。
医者に頼めばまだマシに治せるだろうが、いまはそうも言ってられない。手荒でも一刻も早く治す事を選んだセイに黒鋼は根性あるやつだ、と思った。
セイは武器の長棍をファイに預け、彼もそれを受け取り、そっとセイの背中を支えた。
「行くぞ。歯ぁ食いしばれ。」
『お願いしますっ。』
黒鋼に両肩を抑えられ、ふぅと一息。
このあと来るであろう痛みを覚悟する。
「…っ!」
ゴキン――。
『~~~っ!!』
外れた時と同じような音が鳴った。
だが今は左腕を動かせる。
ちゃんとはめてくれたようだ。
めちゃくちゃ痛かったが。
今のですこし回復した体力がまた一気になくなりそのまま黒鋼さんの方へとセイの身体が傾く。
黒鋼は避けることもせず、ぽすんと受け止めてくれた。
「おい、大丈夫か。」
「セイちゃん?」
『いっ…たぁー。』
痛かったーと零すセイにファイはほっと息を付き、黒鋼もふっと笑う。
大の大人でも脱臼は辛いし、はめるとなれば悲鳴の一つは上げるものだ。
なのに彼女は悲鳴一つ上げず、痛かったー、のコメント一つ。
黒鋼はコツンとセイの頭を小突いて、やるじゃねぇか、といった。
腕の痛みが引いてきたところでようやくセイは立ち上がる。
そこで改めてファイと黒鋼を見て気付いた。
『なんか異様にボロボロじゃありません?二人とも。』
「いやーなかなかのピンチだったんだよー?」
『えー?任せてーって言ってたくせにー』
「これはあの溶ける水の雨にやられたんだよ。俺じゃねぇ。」
『へぇー。』
「てめ、信じてねぇな。」
黒鋼が意地を見せるのでついセイは笑う。
そんなやり取りしながら歩き出す。
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