chapitre.3
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「ひゅー、セイちゃんやるー。」
「へぇ。」
「す、すごい…っ」
いきなりの大技に驚く三人。
しかし水を吹き飛ばされたのに秘妖は、ニヤリと妖しく笑うだけ。
「なかなかやる童だ。…だが、」
ピィンと何か指で弾く仕草をした秘妖。
いったい何をしたのかセイにはわからなかった。
それにいち早く気づいたのは黒鋼だった。
「――上だっ!避けろ!」
『――!?』
バシャーン!
一段と大きい水玉が頭上に現れたのだ。
セイは立っていた石柱から飛び降り、隣の高い石柱へ長棍を突き立てぶら下がる形で難を回避した。
先ほどセイが立っていた石柱は水で溶け、丸みを帯びた形へと変形していた。
今のをかぶっていたら骨まで溶けてなくなっていただろう。
『あ、危なかった…っ。』
ぞっとする。
黒鋼に感謝だ。あと一瞬反応が遅かったらと思うとその先は想像したくない。
「ほう…。仕留め損ねたか…。」
秘妖の攻撃はさらに続く。
せっかくセイが吹き飛ばした水もまた現れる。
「黒みん、これ壊してー」
「ああ!?なんでだ!!」
「素手じゃいつまでも避けるしか出来ないでしょー?」
「自分でヤレ!」
文句を言いつつも黒鋼はファイの言う通り、街燈の柱を殴って壊し、折れた棒を武器にして水の珠を弾き返した。
「これで触らずに珠を壊せるよー」
武器があれば鬼に金棒。
黒鋼に刀、だ。
次々と珠を壊す黒鋼はやっぱりさすがというべきか。
『ひゅー、黒鋼さんすてきー。』
「だからお前までやめろそれ!」
てめぇのせいで余計なのまで真似しだしたじゃねぇか、とファイに黒鋼が怒る。
スパパっと自分の武器でも珠を壊すセイ。
「さて、ここでずっと珠遊びしてても仕方ないよねー。小狼君ー、セイちゃんー。」
「『はい。』」
ファイに呼ばれて振り向く二人。
「二人はモコナと一緒に先に進んでー。」
『えっ、でも…、』
「まだ決着が付いていません。」
「うん。でも人数いっぱいでかかってもあんまり効果なさそうだしー、小狼君の足が動かせるうちに先に進むべきでしょう。」
「…ファイさん、」
「小狼君にはやるべきことがあるんだから。」
ただ一緒に旅をしている仲間であるファイもこうして背中を押してくれることが小狼にはとてもありがたいと思った。
感謝してもしきれない。
「セイちゃんもあのバカ息子を殴りにきたんでしょう?」
『…はい。』
「大丈夫。ここは黒ぴーがなんとかするからー」
「また俺かよ!てめぇがなんとかしろよ!」
『ふふっ。わかりました。黒鋼さんよろしくお願いしますね。』
「…ちっ。さっさと行け。」
「……有り難うございます。」
二人に向かって小狼はぺこりと頭を下げる。
「あの上の方が魔力が薄い。セイちゃん、錬丹術で上まで上がれるかな?」
『あそこの石柱からならなんとか届くと思います。でも術の発動中は無防備になるから…』
「それも大丈夫だよー。あのねー…、」
すっかり放置してしまっていた秘妖がしびれを切らす。
「何の相談かは知らないが、私をあまり退屈させてくれるな童達。」
「すみませーん。すぐ終わりますからー」
敵にちょっと待っててなんて言うのはきっとファイさんくらいだ。
なんて思いながらセイと小狼はひと際高い石柱に向かって飛び、そこで錬丹術の陣を描く。
『行くよ小狼!』
「はい、お願いします!」
バチィ!と錬成反応の光が走る。
セイと小狼が乗る石柱が錬丹術によって変形し、ぐんぐん伸びていく。
その柱を狙ってまた珠が襲うがそれを黒鋼が弾き、上に上がろうとする二人を守った。
そして上に上がる勢いを使って小狼が天井を蹴りで突き破り、その後をセイが飛んで抜ける。
脱出成功だ。
二人を乗せるためギリギリまで錬成していた石柱は限界を超え、ガラガラ…と崩壊する。
「三人ともカッコいいー!ひゅー!」
「だからそれやめろっ。」
「…二人逃がしてしまったのだな。…仕方ない。残った童達に少々お灸をすえるとするか――。」
さっきとは比べ物にならない大きさの珠が周りを浮遊する。
そしてそれは頭上高くで弾け、雨となってファイと黒鋼に降り注ぐ。
まるで酸性雨のようだ。
当たった場所からしゅうぅ…と溶けていくのが目に見える。
なのに二人は平気で笑っていた。
「なかなかマジなピンチだねぇ。」
「……ふん。」
一方、脱出した小狼・セイのチーム。
『小狼、足平気?』
「痛そうだよ。」
と小狼の肩に乗るモコナも心配する。
「大丈夫です。」
「だったら――、二度と立ち上がれないようにしてやる!」
――!!
『お前…っ!』
現れたのは領主の息子だった。
だがなんだか以前と様子が違うような気がした。
なにか力を感じる…。
「今度はこの手で葬ってくれる!!」
前と比べてずいぶん体格が大きくなっていた。
「あの人から不思議な感じがすごく強くする。」
「秘術、か。」
「そうだ!この体には高麗国、蓮姫の領主である親父の秘術が施されている!」
『また卑怯な…っ。小狼、モコナと一緒に先に行っててくれる?』
「えっ、危険すぎますセイさん。おれも一緒に戦います。」
『ありがとう小狼。でもあいつは…、あいつだけは私が倒す。お願い。』
「……。」
セイが真剣な表情で小狼を見つめる。
数秒して彼は目を閉じた。
彼女の覚悟をひしひしを感じたから。
「…わかりました。でも本当に気を付けてください。無理だったらファイさんと黒鋼さんもきっとすぐ来てくれますから二人に助けを求めてください。」
『うん、わかった。モコナ、小狼と行って。』
「セイ…怪我しないでね。」
心配そうな顔をするモコナにセイは優しく頭を撫でた。そして小狼は一足先に領主のいる最上階へと向かう。
セイは目の前にいる息子に視線を向ける。
まるで虫けらでも見るような視線で。
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