chapitre.3
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ったく。あれだけ歩いてムダ足かよ。」
「んーこれ以上歩くのはヤだねぇ。」
小狼のおかげで振り出しに戻ったとわかり、これ以上進んでも無駄だと気づいた一行は歩みを止める。
さてどうしたものかと作戦会議。
『どうしますか?このへんの壁片っ端から壊します?』
「やっぱりおめぇやること過激だな。」
『え!?』
「ひゅーセイつよーい!」
また顔が赤くなる。
恥ずかしいんならそういうこと言わなきゃいいだろうが、と黒鋼に言われるセイだった。
ファイも笑っていると、ふと何かを感じたのか、ある壁に手を触れた。
「……ここかなぁ。」
『ファイさん?』
「何かありましたか?」
と小狼。
「この手の魔法はね、一番魔力が強い場所に、術の元があるもんなのー。」
「この向こうに領主がいるのか。」
「わかんないけど、すごく強い力をこの向こうから感じる?かもー。ささっ、黒鋼っち、ストレス発散にぶっ壊して!」
ここ、ここ。とたしたしと壁を叩くファイを、黒鋼が剣呑な目で睨みつけた。
「……魔力は使わねぇんじゃなかったのかよ」
「今のは魔力じゃなくて、カンみたいなもんだから」
にこりと微笑むファイの表情がこれ以上の詮索を許さないかのようで。
誰も寄せ付けないような、笑顔。
納得がいかない顔の黒鋼。小狼も何も言わなかったが何か言いたそうにじっとファイを見ていた。
しかし詮索も出来ないので仕方なくファイの指示通り黒鋼が壁を殴り飛ばす。
ドゴッと派手な音をたてて衝撃で崩れた壁の向こうは空間が。
「あたりー!」
『わぁすごい馬鹿力ー』
「……。」
『――。』
正直すぎるコメントに黒鋼さんから人を殺せそうなくらいの目線を向けられセイは冷汗が流れた。
砂埃が晴れた先。小狼達は部屋の中心部に視線を向けた。
うっすらと人影が見えてくる。
『部屋…?』
「…誰かいます。」
不思議な雰囲気を纏った女が姿を現した。
彼女の口元がニヤリと弧を描く。
人間…ではなさそうな雰囲気の女性だ。
「よう来たな、虫けらども」
「誰だ?てめぇ」
と黒鋼。
「たかだか百年程しか生きられぬ虫けら同然の人間達が口の利き方に気をつけよ、…と言いたいところだが久しぶりの客だ。大目に見てやろう。」
「何、言ってんだ。とりあえず、さっさと領主とかいうのの居所を吐け。面倒くせぇから」
言い方がすでに悪役だ。
単刀直入に聞く黒鋼にファイはニコニコと笑った。
「黒ぷん短気すぎるよぉ。」
物怖じしない二人のやりとりに秘妖が口元を緩める。
「面白い童達だ」
「ほめられちゃったー」
てへっと照れたような仕草をするファイとモコナに、セイと黒鋼は呆れ混じりに嘆息をした。
『…褒められてないから、ファイさん。』
「ガキって言われたんだよ!」
「この城の中に捜し物があるかもしれないんです。領主が何処にいるか教えて頂けませんか」
小狼は真剣な眼差しで丁寧に秘妖に尋ねた。
こういうところが一行の最年少ながら一番しっかりしているといわれる所以なのだろう。
「……良い目をしている。しかし、その問いに答えることはできんな。それに、ここを通すわけにもいかぬ」
「えっとそれはー。オレ達を通さないためには、荒っぽいコトもしちゃおっかなーって感じですかねぇ」
のんびりとした口調で言うファイに、秘妖は微笑んだ。
「その通り」
その言葉がセイ達に届くのと風景が変わったのはほぼ同時だった。
気がついた時には既にセイ達はそれぞれ別の石柱のような物の上に立っていた。
周囲の景色も先ほどの部屋からがらりと変わり、辺りにはいくつもの水玉のような球体が浮かんでいる。
そして下に視線を向ければ、そこには見渡す限り広がる水面。
『――…なにこれ、』
「……幻か。」
「いいや、秘術だ。幻は惑わせるだけだが、私の秘術は……、」
秘妖の合図とともに、球体の一つが小狼目掛けて飛来した。
「ただ美しいだけではないぞ」
球体が小狼の眼前でパンっと音をたてて弾け飛び、水のようなものが降り注ぎ、衣服がジュウジュウと溶けだした。
「…溶けた」
――!!
その様子を見ていたファイ、黒鋼、セイは一気に表情を変える。
瞠目する小狼を面白そうに眺めて、秘妖は口を開いた。
「私の秘術によって出来た傷は、すべて現実のものだ」
「ってことは、大怪我するとー」
「死ぬ」
秘妖の合図で無数の球体が、物凄い速さでセイたち目掛けて放たれる。
下のほうに逃げ込んだ小狼が、踏み外して右足が池に突っ込んだ。
池の水に濡れた小狼の靴が、ジュッと音をたてながら溶けていくのが見えた。
『小狼!』
「――!!」
「この池もこの球と同じもので出来ている。そして、この中の目に見えるものすべてが本物とは限らない」
黒鋼が舌打ちする。
「池に落ちても溶けちまうってことかよ!」
『だったらこの水を吹き飛ばせばいいじゃない!』
ガチン!と袖に隠していた長棍を出し、くるくると大きく回す。
『この国は龍脈の力に溢れているから助かるわ。―風鳴っ(カザナリ)!!』
ゴォオ!!
竜巻が現れ、周囲の水玉を吸収し、一気に吹き飛ばした。
.