chapitre.3
夢小説設定
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『――それはあなたが今すべきことではないわ。』
「――っ。」
春香の目線に合わせて膝を付く。
セイの口調がいつもと違った。
困った様子だった小狼とファイ、我関せずな黒鋼も彼女が話す言葉に耳を傾ける。
『春香がすべきことは領主を倒したその後にある。領主は私たちが倒す。…だからここでサクラと待っていて。』
「セイ…。」
『覚えておいて。出来ないことは素直に出来ないと認め誰かに頼るのもまた強さ。適材適所、ていうのよ。春香に出来ないことは私がやる。だから、春香は私に出来ないことをやってほしい。』
自分がそうだったから…。
出来ないなりに、なにかしようするのはいいことだとは思う。だがそれを一人で頑張るのではなく周りの人と手を取り合って前に進んで欲しいとセイは願う。
ただ、自分がそう悟るのに時間が掛かった。
それを教えてくれる者がいなかったから。
でも春香はそうなってほしくない。
そんなことに時間を費やして欲しくない。
この町で誰よりも勇敢で、強くて、心優しい彼女を。
セイの言葉に俯いてしまったが、春香はそっと握りしめていた手をほどいた。
それをみて理解してくれたのだろう、と思いセイは立ち上がり後ろで待つ小狼達の元へ向かった。
その一部始終を見ていた小狼達。
ファイが口を開く。
「やっぱりセイちゃんも皇女様なんだね。」
『ファイさんは私をなんだと思ってるんですか。』
「あははー」
サクラはいかにもお姫様、という雰囲気があるのだがセイはそれがあまりない。というかお転婆すぎ?
だがふと、こういう一面をみると彼女も一族を守り導く王族なんだと改めて思う。
「ありがとうございました。春香の説得。」
『いえいえ。』
「ずいぶんあのガキに肩入れしてるみてぇだったが。」
隣を歩く黒鋼が意外なことに気づく。
驚いて彼を見上げた。
『…同じ、だったから。』
「あぁ?」
『今の春香、まるで昔の私を見ているようで…。』
皇女なのに、
一族を守らなくてはならないのに、
民が困っているのに、
『どうすることも出来なくて、ただ悔しくて泣き叫ぶことしか出来なかった…。春香にはそうなって欲しくないと心から思うよ。』
これ以上彼女が悔し涙を流す日が来ないことを切に願う――…。
「オレ的にはセイちゃんもサクラちゃん達と一緒に残ってて欲しかったんだけどなー」
『どうして?』
「だってほら一応女の子だしー、怪我させたくないしねー。」
『…。ファイさんもときどき黒鋼さんみたいに失礼な事いいますね。』
「えー?」
笑うファイに黒鋼は同じ扱いされたことに一緒にすんじゃねぇ、と噛み付いてきた。
一応ってなによ。一応って。
『私だってあの領主親子を殴ってやりたいんですよ。特にあのバカ息子の方。』
「おめぇも意外と過激だな。」
『え!?』
ボソッと黒鋼に言われ、セイは顔が赤くなるのだった。
* * *
領主の住む城にたどり着いたセイたちは顔を見合わせた。
「ここだよね」
「さっさと入ろうぜ」
城門を開ける黒鋼。
その先はあら不思議。天地が逆になっていた。
「あぁ!?」
『すごーい。』
「だからこの城は秘術で守られてるんだって。黒みん、せっかちさんだねー。この門だけじゃないよ。他の入り口も全部こんな感じでしょー。」
そこで、だ。
小狼は懐からさっきの泥団子のようなものを取り出す。
「どうやってつかうんだよ、それ。」
「投げてー!」
「え?」
モコナが領主の城を指差した。
「出来るだけ遠くへ投げて!あのお城に届くくらい!!」
小狼は球体をポーンと頭上に放り投げる。
そして、体を大きく捻って勢いをつけ、その反動を使って球体を思いきり蹴飛ばした。
『おぉ。相変わらずすごい脚力だよねー。』
ギュルルルと音をたてながら、球体が城に向かって飛んでいく。
城に当たる直前、球体は結界のようなものに衝突してまるでガラスのようにひび割れ、粉砕させた。
激しい音が辺りに響き渡る。
結界破り、成功だ。
小狼達は場内へと足を踏み入れる。
「中に入ったはいいが、いつまで続いてんだよこの回廊はよ。ずっと歩きっぱなしだぞ」
黒鋼が一番最初にしびれを切らす。
扉も窓ない廊下。
いつまでも続く一本の長い廊下を、セイたちは永遠と歩き続けていた。
「真面目に歩いてるんだけど、どこにも着かないねぇ。扉もないし」
目を細めて遠くを眺めるファイを横目に、セイは下を見つめる小狼に視線を向ける。
『どうしたの?』
「元の場所に戻ってます」
小狼は黒石を拾いセイたち全員に見えるように掲げた。
彼が持っていたのは春香の家にあった遊戯道具の碁石だった。
「この回廊の入り口近くに、落としておいたんです」
『ってことは、元に戻ってきちゃったってこと?』
「はい。」
「ひゅー、小狼君すごいー」
なかなかの機転っぷりに関心する。
ふざけた口ぶりのファイに、黒鋼は微かに眉を潜めた。
「今、口で“ひゅー”言っただろ。吹いてなかっただろ」
指摘する黒鋼に、ファイはえへへと笑った。
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