chapitre.3
夢小説設定
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しかし辻褄が合わないだろ、と黒鋼が言う。
「記憶の羽根とやらが飛び散ったのはつい最近の話だろ。」
「次元が違うのだから時間の流れも違うのかも。」
『時間の流れ…。』
考えたことなかった…。
てっきり同じかと思っていたのに…。
考え込む仕草をするセイの隣で小狼が立ち上がる。
「確かめてきます。その領主の元に羽根があるのか。」
「待って!小狼君、怪我してるのにっ。」
ぎゅっと袖を掴むサクラに小狼は笑って見せた。
「平気です。セイさんが治してくれましたから。」
『いや治ってないってば。応急処置だってば。』
無茶したら傷口開くよ?
血出るよ?
そこは勘違いしないで欲しいと願う。
「でも…、」
「大丈夫です。もし羽根があったら取り戻してきます。」
「小狼君…、」
なおも心配そうなサクラ。
小狼にとってサクラは大事な人だから当たり前のことなのだが、“今のサクラ”にとって小狼は見ず知らずの人なのだ。そんな彼が怪我をしてまで自分の記憶を取り戻そうとしてくれている。
そこまでしてくれる理由がわからないのだろう。
そんな小狼をファイが待った、をかけた。
「ん、安心して。止めるわけじゃないからー。でもね、あの領主の秘術、結構すごいものみたいだからねぇ。ただ行っただけじゃ無理でしょう。せめて城の入口にかかってる術だけでも破らないと。」
「おまえなんとか出来るのかよ。」
「無理。」
「っいかにも策ありげな顔で言うな!」
あははーと笑うファイが#dn=1#]の方を見る。
「セイちゃんはどうー?錬丹術ってそういうの出来たりするのかな?」
『結界破りってことですよね?やったことがないのでなんとも言えませんが、正直望み薄…ですね。』
秘術もそうだか魔術や魔法といった力はシン国では認知されていないものだ。結界なんてものも存在しない。
試してみる価値はありそうだが破れるかどうかは正直皆無である。
そもそも領主の“風”も防ぎきれなかったのだ。打ち破るのはほぼ不可能だろう。
そこでモコナがぴょんと飛び出した。
「侑子に聞いてみよう!」
『次元の魔女さん?』
《あらモコナ、どうしたの?》
言うが早いか、モコナの額の宝玉が空間を照らしそこに見覚えのある女性が映しだされた。
「しゃべったー!」
驚いてサクラに抱き着く春香を横目に、セイも開いた口が塞がない状態に。
『…魔法ってすごーい…。』
「便利にも程があるだろ!」
突っ込む黒鋼。
唯一驚いた様子が見られないファイが一通りの事情を侑子に説明する。
魔法使いというのはこういったことは“普通”なのだろうか…。
「なるほど。その秘術とやらを破って城に入りたいと」
「そうなんですー」
「…でも、あたしに頼まなくてもファイは魔法使えるでしょう」
「あなたに魔力の元渡しちゃいましたしー」
「あたしが対価として貰ったイレズミは、“魔力を抑えるための魔法の元”。あなたの魔力そのものではないわ」
「まぁでも、あれがないと魔法は使わないって決めてるんで」
何故かファイは魔法を使わないと決めている。何か理由があるのだろうが、セイはもちろんほかの仲間達もその理由を知らない
。それはきっと彼の過去に深く関係するのだろう。
あくまで笑顔を崩さないファイに侑子はいいわ。と承諾した。
「城の秘術が破れるモノを送りましょう。ただし対価をもらうわよ」
侑子の言葉に、ファイはどこからか杖を取り出してみせた。
「これでどうですかー?魔法具ですけど、使わないし」
「…いいでしょう。モコナに渡して」
大きく開かれたモコナの口の前に、ファイは杖を差し出し、杖はずるずるとモコナの口内に吸い込まれていった。…どうなってるの?え?
ゴクン。と杖を一飲みし一拍おいて、モコナの口から、ぽんっといい音をたてながら何かが吐き出される。
出された不思議な光を放つ泥団子?のようなものを小狼は受け取った。
「これが、秘術を破るもの…」
* * *
「いやだ!私も領主の所へ行く!」
高麗国の衣装に着替え、さあ領主退治へ繰り出そうとした時だった。
声を張り上げる春香にファイは優しくさとそうとするが。
「領主の城には秘術が施してあるしね、危険だよー」
「承知の上だ!一緒に行く!」
「んー、困ったなぁ」
助けを求めるような視線を向けてくるファイに、黒鋼がふいっと視線をそらす。
「俺ぁ、ガキの説得はできねぇからな」
「照れ屋さんだからー?」
「テレ屋さんー」
黒鋼は眉間にしわを寄せた。
「行って領主を倒す!母さんのカタキをとるんだ!」
春香が小狼の服を掴み、すがるように懇願する。
「絶対一緒に行くからな!いいだろ!?小狼!」
掴まれた手をやんわりと振りほどいて、小狼は言った。
「だめです。ここで、サクラ姫と待っていて下さい」
なおも首を振る彼に小狼!と引き下がらない春香が叫ぶ。
そんな二人の間にすっとセイが割って入る。
『春香。』
「セイっ。お願いだっ私も一緒に…っ」
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