chapitre.3
夢小説設定
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「いい気になりおってー!」
男が叫ぶ。
それと同時に空から天が渦巻いて降りてくる。
竜巻だ。
間に合うか。
空を見上げる小狼の元へ駆け、セイは錬丹術の陣を大きく描く。
竜巻が小狼とセイを直撃する寸前、陣が発動し光を放って竜巻から二人を守った。
『く…っ、』
「セイさんっ!」
『防御の陣から出ないで!』
振り返る小狼に制止を指示。
竜巻から守ってくれているとわかると、セイの言う通り彼はその場から体制を低くし身構える。
すごい力だ。
いくら相手の力を利用する錬丹術といえど、力の変換が間に合わなければ意味がない。
その時だった。
防御の陣を成していたクナイの一つが竜巻の威力で外れてしまった。
そのため防御の陣が力を無くし、防いでいた竜巻が二人を襲う。
「小狼君!セイさん!」
「思い知ったか!」
サクラと春香が二人に駆け寄り、ボロボロになった二人の姿を見て、男は嬉しそうに悦に浸る。
「これが領主の秘術だ!」
「息子のケンカに親が出てくるのか!本当に最低親子だな!おまえ達は!」
「うるさい!悔しかったら親父を倒してみたらどうだ春香!まぁお前では触れることも出来ないだろうがな!」
悔しさのあまり春香は手を握りしめ身体を震わす。
実際男の言葉が本当の事で、反論出来ないからだ。
「…吠えてろ。アメンオサが来ればお前達の悪事はすべて裁かれることになるんだからな!」
「…来るもんか。」
『――。』
あの男…、なにか知っているな。
セイは男の意味深い言葉に目を細めた。
男は去り際、先ほどの店の主人たちに税金を滞納した罪で増税を言いつけ、高らかに笑い声を上げながら城へと戻っていった。
その後ろ姿を春香はだた黙って見ているしか出来ず…。
悔しさ、怒り、己の無力さに春香は心の底から叫ぶ。小狼、サクラ、セイはじっとその姿を見守る。
ただ、セイは今の春香を見て昔の自分の姿と重なった。
皇女でありながらどうすることも出来なくて、無力な自分に何度も嘆いては叫んだ。
『(昔の私と一緒だ…、)』
壊された店と店の主人たちの怪我の手当てをしてから、セイ達も春香の家へと帰宅した。
その帰路の途中、ずっと春香は落ち込んだまま一言も喋ることはなく。
小狼達も気が気でなかった。行くときはあんなにも楽しそうにしていたのに…。
セイ達が帰って来たと気づいたファイがこちらを見ておかえりーと声をかける。
しかし買い出し組の雰囲気を悟ったのか、笑顔から一転、顔をしかめる。
「――何か、あったみたいだね…。」
元気のない春香、
ボロボロの小狼とセイ、
それを心配そうに見つめるサクラ。
買い出しは楽しい、だけでは終わらなかったようだ――。
* * *
事の顛末をかいつまんでファイと黒鋼に話した。
怪我を錬丹術で応急処置した後、傷口を綺麗にしてもらう為、小狼はサクラが、セイはファイから包帯を巻いて貰っていた。
「そっかー。また領主の“風”とやらにヤラレたんだー。」
「でもセイさんが守ってくれましたし。」
『私の術でもあれは防ぎきれなかった…。ごめんね小狼、結局怪我させちゃった。』
小狼は首を振る。
「いえ。セイさんが守ってくれなければもっと大怪我していたはずですから。」
謝らないでください。と小狼が言う。
怪我も治してくださいましたし、と。
『私のはあくまで応急処置、だからね。』
そこは勘違いしないでほしい、とセイは口酸っぱく主張する。
「しかし、そこまでやられてなんで今の領主をやっちまわねぇんだ」
黙って聞いていた黒鋼に、俯いていた春香は噛み付く。
「やっつけようとした!何度も、何度も!でも領主には指一本触れられないんだ!領主が住んでいる城には秘術が施してあって誰も近寄れない!」
『それがモコナが感じた不思議な力かな?』
「不思議な力がいっぱいで羽根の波動良くわからないのー。」
「あの息子のほうはどうなの?人質にとっちゃうとかさー」
さらっとファイが言う。
突然の爆弾発言に、一同は言葉を苦笑いを浮かべた。
「…おまえ、今、さらっと黒いこと言ったな。」
「んー?」
『かなり黒かった…。』
言った本人眩しいくらいの光輝く笑顔を振りまいていたが。
しかしそれを黒鋼は見逃さなかった。
「だめだ!秘術で領主は町中を見張っている!息子に何かしたら…!」
「昨日とか、今日の小狼君とセイちゃんみたいに、秘術で攻撃されちゃうかー」
あえなくバカ息子誘拐案は春香によって却下された。…ファイさんちょっと残念そう…?
「一年前、急に強くなったって言ってたねその領主。…サクラちゃんの羽根に関係ないかなぁ?」
「――!」
ファイの言葉に小狼の顔つきが変化する。
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